02:聖女の害になるから追放だってよ
◇◇◇
名前:サク・マナベ
年齢:22歳
ギフト:パーソナルエリア、言語理解
魔法:生活魔法
魔力:小
◇◇◇
「こちらもギフト持ちか……しかし、ぱーそなるえりあとは?」
「はて、文献には記載のないギフトですな……」
「魔力は小、とな。下級貴族ていどであるか……」
「魔法は『生活』か。平民ですら使う者が多いぞ」
「22歳? 既婚者か?」
「いや、召喚できるのは魔法陣の誓約で、未婚の女性のみであったはずだぞ」
「ならば嫁き遅れか」
観衆? の声がざわざわと聞こえる。
おい誰が嫁き遅れだ!?
この世界だと結婚が早いんですね! プチ知識を得たのはいいけど……いや良くないわ!
22歳は充分若いですぅ〜、やんぐですぅ〜!
亡き婆ちゃんの影響をちょびっと受けてるから時々古い言葉も使うけどツッコミ無しですぅ〜!
「ヒメナ。ぱーそなるえりあという能力を知っているか?」
王太子がヒメナさんに顔を近付け訊いた。なんで本人じゃなくてそっちに訊くのか、それはまぁ良い。
「うーん? えっと、よく知らないけど、他人に近付いて欲しくない? 感じだと思います」
ヒメナさんはわざとか無意識か定かでないがそう答えた。
大きく違わないだろうけど、その説明じゃ誤解を招かない?
「だから、えーと、マナベさん? は、皆さんとは仲良くしたくないのかも?」
恐る恐る、というように。けどあたしに向ける細められた目元には、嬲る者独特の悪意が滲んでいる。
……前言撤回。わざとか。
えぇ……凄く可愛いのに性格がヤバイ系なの? 勿体ねえ……。
しかしなるほど。彼女は同じ日本人で召喚されたあたしが邪魔で、排除したいらしい。こちとら、多分巻き込まれただけなんですけどね?
そしておめでとう、あんたの目論見は成功だよ。王太子を始め周りを囲むことごとくが、不快げに顔を顰めている。
「確かギフトは、その者の望みに相応しい力を神が与えると教典にあるな」
「なんだと? ではあの者は、我々との交流すら拒みたいという事か?」
いやいや。全く未知の土地で現地人との交流まで拒むって、情報が何も入って来なくなるじゃん。それはお望みじゃないよ。
あたしは口を開き、そう釈明しようとしたんだけれど。
「なんと身勝手な! 今やこの世界は瘴気が蔓延し、国と国の垣根を越え人々が手を携えて対処しなければならない。だというのに、交流を拒むギフトだと? 貴様の本質が透けて見えるようだ!」
と、王太子が声高に言い放った為にあたしは釈明を止めた。
「聖女でなくとも最低限の生活は保障してやろうかと考えていたが、そのような醜い性根の者には不要だろう。――ヒメナよ。この世界の為に瘴気の浄化を頼みたい。力を貸して貰えないか」
「勿論です! 突然、別の国に来ちゃって驚いたんですけど……皆さんが困ってるなら何かしてあげるのは当然ですし! 頑張ります!」
「それでこそ真なる聖女だ。そなたさえいれば、我が国は安泰であるな」
王太子は『真なる聖女』ヒメナさんと見つめ合い、もう一度あたしギロリと鋭い目を向けた。
「いつまでのうのうと居座る気だ? 即刻、王宮から去るが良い!」
「……あたしは召喚に巻き込まれたって事ですよね? 元の世界に戻して貰えませんか?」
ここで初めて、あたしは声を発した。無駄かと思ったけど、一縷の望みをかけて。
まぁ、すぐにそれは砕かれたけど。
「召喚した者を返す術は無い。不満があるのか?」
あるわ!
寧ろ不満も何もない訳ある?
こちとら聖女でも何でもないのに巻き込まれた一般人よ??
それをこのまま追放ってか?
「王太子さま。あの人、わたしの巻き添えになっちゃったから、恨んでると思います……。王宮から出しても、街とかで暮らすってことですか? 少し、怖いです……」
ヒェ!?
嘘でしょ『真なる聖女』、火に油注いだよ!?
コイツ、本っっ気であたしを排除する気?
異世界で、法も何もない土地で、それをするとどうなるか、ちゃんと考えてやってる?
あたしが驚いて凝視していると、「きゃっ、睨まれた……」と王太子に縋りつく。王太子も鵜呑みにして、彼女を守るように抱きしめ、あたしへの眼光を射殺さんばかりに強めた。
落ち着け、と心の中で呟く。
王太子だけでなく、広間中の人々があたしにヘイトを向けているのを感じる。
こいつらにはもう、言い訳なんて無駄だ。あたしの存在は聖女と秤にかけるものでさえ無い。
悔しいが、だからと言って暴れる訳にもいかない。強そうな騎士っぽいのも大勢いる。返り討ちという言葉が胸を占めた。
でも身一つで放り出されるなんて、御免こうむる!
なのであたしはちょっとごねた。要約すると、出て行くのは構わないが先立つものがない、路銀くらい寄越せという事を。
「ハッ! 物乞いのようだな」
王太子には吐き捨てられ、ヒメナ聖女だけでなくその場の全員に嗤われた。
チャリっと音がする小さな麻袋を投げ捨てられ、それを拾ってスゴスゴ王宮を後にする。
その場で斬り捨てられる、という事はなかった。命はある。
どれくらいの額かは知らないけど、この国のお金も貰った。牢に入れられるとかもなかった。
脳内を駆け巡る『嫌な予感』の中ではマシな出だしだろう。
でも……でも。
心の中でくらい、言っても良いよね?
ざけんな、クソが!!




