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「ジャナイ方」の異世界見聞記  作者: 那内(元ちみーば)


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19/24

19:竜人だそうな


 有翼の人とあたしは睨み合う。


 睨み合うというか、あちらは珍獣を見るような目を向けてきていて、あたしは困ってるだけなんだが。


 この人(?)、パーソナルエリアの内側に入って来ちゃったよ。

 あたし達を助けようとしてくれた、という心情があるから、雷攻撃はともかく当人自身は指定外になったんだろうか。


 だからと言って、全面的に味方とは限らない。


 あたしはチラと視線をやり、駆けた時に置いて来てしまったコロポックルたちとノームたちにスッと手を振った。

 彼らにもきっちりバリアを張ってたよ。当然。


 そのドーム型バリアを球体に変え、コロポックルとノームたちを包んだ。

 浮かせてこちらへと引き寄せ――改めてトレントを含む全員をバリア内に置く。

 これで良しっと。


 見れば、有翼の人はまたも信じられないとばかりに瞠目していた。


 ただ、警戒心に満ち満ちたあたしの行動に、思うところがあったのかもしれない。

 微妙な表情で朱金の頭をガリガリと掻き、ふーと溜め息を吐いて……『降参』のポーズみたいに軽く両手を上げた。


「……あー……、驚かせて悪かった。さっきの魔法は、不可抗力だ。制御に失敗しちまった。お前さんを攻撃する気はねぇ。てか、妖精を従えてるヤツに何かするつもりはねぇよ」


 低く張りのある声なのに、やたら軽い口調で語る。


「改めて自己紹介だ。俺の名は『ジオグラッド』。見ての通り竜人だ。ジオでもグラッドでも好きに呼んでくれ。お前さんは?」


 何? 竜人……てのは薄っすら予想通りだとして。

 別に従えてませんよ。この子たちは可愛いウチの子です。


 てか、名乗られた。そしたらこっちも名乗らないといけないじゃん……。


「……サク、です」


「サク、ね。ちょおーっと、訊きたい事があんだけども。答えて貰えるかい?」


「スルーして頂けたら嬉しいです。お帰り頂いたらもっと嬉しいです」


 思わず本音が出たが、有翼の人――ジオグラッドさんは少し苦笑しただけで怒らなかった。


「あー、警戒するのは分かるがな。ヒト族が亜人に良い感情を持ってないのも知ってる。しかし事情があるもんで、このまま帰る訳にゃいかねぇんだわ」


 え、そういう事ではないんだけど。


 ……うーん、どうしよう? 竜人て言うと最強系だからプライドが高くて、乱暴者っぽいイメージなんだけどこの人は違うのかな。

 少なくとも、さっきあたし達を助けようとしてくれたり、今もこうして穏やかに『会話』を試みてくれてるのは確かだ。


「訊きたい事ってなんです?」


「お、いいの? んじゃ――お前さんは何者? 聖女……ではなさそうだが、浄化の力があるのか?」


「……そんなの聞いてどうするんです?」


「俺んとこの国に来て欲しい」


「お断りです」


 断固拒否だ。その国で何をさせる気だよ。


「いやいや待って。事情があるんだってば。聞いて?」


「あたし、聖女でも聖人でも無いんで、事情とやらを聞いてもお役には立てないと思いますよ」


「『あたし』? ああやっぱり女か。野郎の匂いじゃあ無いからそうかなとは思ったが」


 匂いで性別が分かるってのも人外あるあるだね。

 ってちょっと? 匂いで分からなかったら、男に見えるとでも??


 確かに今のあたし、ざんばら髪を後ろに纏めただけで、服装も体型も性別不明な感じですが……。


「悪い、失言。スンゴイカワイイ女の子ダー会エテウレシイナー」


「棒読み!!」


 失礼な奴だー! 無視決定!


 コロポックルやノームたちを促し、スタスタ歩き出す。

 するとトレントものっそり歩き出した。

 一緒に来るの? いいよー、ここにいたら危ないしね、おいでおいで。


「ちょっとちょっと、待て」


 ジオグラッドさんとやらは慌てたように追って来た。

 見ればあたしの肩に手を伸ばし、透明な膜に阻まれてまたも驚いている。


「おいおい、バリア張らんでも……」


「話は伺いましたーお帰り下さーい」


「話して無い! なーんにも! まだ序の口の『じ』のとこ!」


「聖女に用があるんでしょ? 浄化の力を持つ本物がバランドルの王宮にいますよ。そっちに頼んだらいかがですか」


「あー……。頼んだけど断わられちまったんだわ」


「…………」


 あたしは足を止める。

 頭一つ半は高い位置の顔を仰ぐと、彼は困ったようにも皮肉げにも見える笑みを刻んでいた。


「……俺の姉貴が『瘴気症』に侵された。瘴気や瘴気症を浄化し治せるのは聖女だけだ。だから聖女召喚に成功したって噂を頼みに、海を越えてはるばるバランドルまで来たんだけどよ」


「…………」


「先触れの書状なんかも出したぜ? でもほら、ヒト族は俺らみたいな亜人を嫌ってるもんで。門前払いされたワケよ。この大陸の殆どの国とウチの国、協定結んでたはずなんだけどねー。当然バランドルともねー……」


 うわぁ……。


 王都では人間しか目にしなかったな、ここに来ていきなり竜人かよと思ったら、そういう理由(・・・・・・)かー。

 つまりこの世界には人間……『ヒト族』と竜人などの『亜人』が存在するけど、その双方は仲が良くない、と。


 他の国は知らないが、バランドルの王太子その他をちょっと知る身としては納得だわー。

 なんかあいつら、選民思想とか差別とか凄そう。完全に偏見かもしれないけど、そう見られる言動をしてたのは事実。


 ともあれ、これだけは弁解しておこう。


「あたし、貴方が竜人だから警戒してるんじゃないです。普通に、初対面の人だから怪しんでるだけ。勘違いしないで下さい」


 言った後に後悔した。どこのツンデレだ。


 しかし、ジオグラッドは。


 金の瞳をぱちくりとさせ、ややして。

 豪快に笑ったのだった。


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― 新着の感想 ―
 新キャラは竜人だったのですね。さっぱりした気質の方とお見受けいたします。何と、そのような事情が。……確かに、あの王子と聖女は性格が最悪なので、そういう不義理なことをしそうですね。  ワクワクしながら…
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