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「ジャナイ方」の異世界見聞記  作者: 那内(元ちみーば)


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16/22

16:担当やらテイマーやら

虫が出て来ます。


 いつまでも充電の減らない謎スマホで確認すると、召喚された日から二ヶ月が経っていた。


 画面の日時は11月の半ばを示してる。まだ秋だ。

 が、聳える山々は雪を被って真っ白。今いる所が北国だからなのか、この世界全体が寒冷なのか。

 地図はバランドル王国を中心に周辺国をちらっとしか描いてない代物なので、よく分からない。


 分からない事だらけ。王都でもっと情報収集しておくべきだったかな。

 でも、たった一日では召喚への諸々で気持ちを保つのと、必要物資を購入するのが精一杯だった。寧ろ限られた期限と初めての土地で、よく動けた方じゃない?


 そうだそうだー、と脳内会議の分身たちが賛同する。

 だよねぇ。今更反省しても仕方ない。


 それに、情報不足でも結構、なんとかなってるもんね。


 冬景色なのに寒くないし、野菜や果物、魚も豊富に採れるから食料に困らない。

 拠点にした洞窟も、かなり住みやすくなっている。


 コロポックルたちとノームたちのお陰でね。

 いやマジで。


 物造りの匠ノームたちによって、洞窟には棚どころか馬ちゃんたち用の柵が造り付けられた。

 外にも、畑の柵、石造りのテーブルや椅子、水飲み場、洗い場などが次々用意され、今もまた新しく……。


 ……あの巨大な容器、生け簀かな。確かに毎日釣りしてるけど、あたししか魚を食べないからそんなに大きな生け簀は要らないよ?

 とは、一生懸命楽しげに作業してる彼らに言えないけども。


 野菜もだ。

 コロポックルたちにより毎日お供えの如く積み上げられるので、消費が間に合わなくなり、乾燥したり漬けたりで保存食に加工する事となった。

 妖精たちも野菜や果物、食べるんだけどね。ほら、サイズがね……。


 因みに土と植物の妖精がいるからなのか、広々とした洞窟前広場は放って置くと雑草まみれになる。

 ノワとアシュの馬ちゃん’ズがここで大活躍だ。二頭がいなかったら、必死に草刈りしても焼け石に水だったろう。

 何せ刈ったそばから新たな芽が生えニョキニョキ伸びていくのだから。


 まあ、こんな僻地で食料と暮らしに余裕があるのは助かる。

 これ以上を望むのは贅沢だ。というか、軽率に望みを口に出すのはいけない。


 何故って、軽率な呟きのせいで広場の一角に『虫小屋』が建造されてしまったから。


 どういう事かというと。


 例えば、起きがけに体のあちこちが固まっている。ベッド代わりに使っているのが木の座席だからだ。

 なのでストレッチするのが毎朝の習慣なのだが、ポロッと呟いてしまった。


「ふかふかの布団が欲しいな……」


 その時、コロが側にいたのをすっかり忘れていた。

 数日後には匠ノームたちによる糸車と機織り機、コロポックルたちによる綿花畑、そして芋虫が用意されていたのだ。


 1メートルの芋虫である。

 紹介された時に悲鳴を堪えたのはエクセレントでしたよ。あたしは虫が得意じゃないもので。


 その芋虫、実は蚕だったようでガンガン糸を吐いた。糸は匠ノームたちが集めて糸車で生糸にし、機織り機にて絹地になり、針と糸で縫われ、最終的にそれはそれは滑らかなベッドカバーへと相成った。

 匠ノームたち、匠過ぎる。


 コロポックルが用意した綿花は、コットンフラワーとも言う。なのでそのコットンでも糸と綿生地が作られ、それはマットレスとなった。中には綿花が詰められ、フカフカに。


 コロポックルはそれぞれ担当する植物があるようで、住みついた中に綿花担当がいたらしい。

 そういえば、頭に花ではなく綿毛が咲いていた子がいたな。てっきりタンポポかと思ってたけど、綿花だったのか。

『ポポン』と命名しよう。


 綿花入りのマットレスは好評で、あたしだけでなくノームとコロポックルたち全員の分が作成された。

 お陰で毎日ぐっすり眠れるし目覚めも快適。

 蚕を『カイ子』と名付け、専用の小屋で飼うこととなり、ついでに機織り用の作業小屋も用意される事となった。


 もう一つ。

 別の日、砂糖が残り少ないのでうっかり零してしまった。


「砂糖大根……うーん、代用できる甘味があるかな。蜂蜜なら? でも蜂はなぁ……」


 その時、周りに誰もいないと思っていた。コロはノワやアシュと遊んでたしね。

 コロは二頭が見つけて助かったようなもの、だからかとても懐いている。


 なので気を抜いていたが、誰ぞ聴いていたみたい。


 数日後には大根畑と養蜂箱が準備され、蜜蜂の群れがお招きされた。

 もちろん大根は砂糖大根で、蜜蜂は異世界サイズの20センチ大。


 だから、虫は苦手なんだってば! せっかくお招きした(?)ものにギャーと騒ぐのは堪えたけど、コロポックルよりデカい20センチの蜂とか怖すぎる。しかも百匹以上いるし。


 というか、蚕といい蜂蜜といい、キミたちどうやって連れて来てるの? 異世界の虫は話が通じるの??

 盛大にハテナをとばしてたら、コロポックルの一人が蚕と蜜蜂たちを統率、というか従えている事に気付いた。


 葉っぱ服の金太郎状態の子だ。

 彼は何の植物を担当してるのかな、見たとこ大体お家の中に引き籠もっててあまり外に出て来ないな、と少し心配だったんだけど……。


 もしや彼、テイマーなのか。今のところ虫に限定されているが。

 とりあえず『キンちゃん』と名付けよう。


 虫は苦手だけど、カイ子の糸も蜜蜂のハチミツも助かる。

 妖精は甘いモノ好きらしく、果物のハチミツ漬けやカボチャのハチミツ煮は、ノームにもコロポックルにも大好評だった。


 というか、共に数日も過ごせば虫と言えど愛着が湧くようだ。

 蚕はよく見るとプリチーな顔をしてるし、蜜蜂はお尻がポワポワで愛くるしい。


 キンちゃんの言う事をよく聞くから、襲って来ないしね。暫くすると、撫でるくらい可愛がるようになった。

 因みに女王蜂の名は『ハニー』に決定。


 でもいきなり虫とご対面は心臓に悪い。とりあえず発言には気をつけるとして。

 あたしも大概、順応性が高いのかもしれないな、と思う今日この頃である。


サクは学生時代に引き籠もりでしたが、母親がきっちり家事を手伝わせていたので基本的な料理等は一通りできます。

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― 新着の感想 ―
 サクちゃんのお母様が、サクちゃんに一通りのお料理を教えていてくれて良かったです。  また新たな仲間たちが増えて、サクちゃんの洞窟暮らしも賑やかさと便利さが増していますね。
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