15:共同生活が始まる模様
魔力授乳は全員が満タンになるまで三日続いた。
授乳とは違うか。もう指先チューチューはしてないもんね。供給? 補充?
どちらにせよ、せっせと魔力を献上した甲斐あって、小さい干物ちゃんたちはころころと丸可愛い姿に変わっていた。
全員コロポックルなのかな?
見分けが付かない子もいるがそうでない子も多い。
最初のコロポックルは「コロ」と名付けた。あたしの肩を定位置にしているコロは、他の子たちにも一目置かれているのか、リーダー格らしい。妖精にも序列があるんだろうか。
で、そのコロは頭に白銀の小花が咲いてるんだけど、他の子は赤、黄、ピンクの小花が咲いていたり、ドングリみたいな帽子を被ってたりする。
衣装もスカート状の貫頭衣が殆どなのだが、たまにモロ葉っぱを纏う金太郎状態の子もいる。
あとは、小さい子たちの倍以上ある十人の小人。
体長が30センチくらいで、コロポックルよりは少しスリム体型だ。
黄土色の肌に濃茶のモヒカン頭。顔は糸目でにっこり笑って見える和み系。
赤銅色のベストに灰色っぽい短パンを履いてる。
その子たちはノーム、かな。
ノームは確か土の妖精。人間のような姿で長いひげの老人。三角帽子を被っていて、手先が器用な小人――だっけ?
帽子じゃなくてモヒカンだし髭もないから、違うのかな。
と、思ったけども、やっぱりノームな気がする。
だって洞窟前の広場の一角を耕し始めたんだもの。
魔法……なのかな? スコップや鍬を生み出し、十人しかいないにも関わらず、凍って硬い地面を物凄い速さで掘り返していく。
その耕した土に、一部のコロポックルたちがあれこれ種らしき物を蒔き。
それ以外のコロポックルたちが、(これも)魔法? をかけると。
……なんという事でしょう。
あっという間にピョコピョコ新芽が生えていきます。
メルヘンだな〜、とか感心してる場合じゃない。
「え、キミたち何してるの……?」
恐る恐る訊ねるが、コロポックルやノームたちは首を傾げ、つぶらな点々の目をあたしに向けるだけで回答は無い。
この子たち喋らないんだよね……。
でも作業を中断した子たちが寄って来て、じぃっと見つめてくる時だけは言いたい事が分かる。
魔力ください、だ。
あたしが魔力をあげつつ、戸惑ってる間にも、彼らは黙々と作業を続けている。
畑(?)を耕し終えたノームたちは、今度は別の場所の土を隆起させた。
森の側から見ると、広場の奥の左から湖、焚き火などの空き地、洞窟、そして少し離れた所に畑が並んでいる。
彼らが土を隆起させているのは、洞窟と畑の間だ。
ボコボコ盛り上がる土は形を変え、あたしの背丈ぐらいの大きさのドームになった。それが六つ。
広場側の、地面に付いた一箇所に30センチ大の蒲鉾型の穴と、側面にピンポン玉くらいの穴がいくつか空いている。
そのドームへ、魔力が満タンになった子たちから順に入っていった。
気になって穴の一つを覗き込めば、中は階段付きの階層になっており、小さいベッドがそれぞれに並んでいる。
十個のベッドのいくつかに、コロポックルが何人か寝ていた。
ゴルバニアファミリーの家みたいでほっこりしてしまう。
ドーム六つのうち二つには、ちょっと大きめのベッドが五つずつ収まっていた。
丁度、ノームたちが横になれるサイズだ。
……うん。流石に説明されなくても理解した。
キミたち、ここを住居にするつもりなんだね。
まぁ、この子たちは元々この森に住んでる先住民だろうし、間借りしたのはあたしの方だから構わないんだけどさ。
「元の家(巣?)があるんじゃないの? 帰らなくて大丈夫なの?」
もう一度訊くが、皆して首を傾げるばかり。
そして何を思ったのか、畑に生った野菜を収穫し出した。
って、収穫!?
早ッ! いつの間にそこまで成長してたの!?
コロポックルたちはトマトやキュウリ、ナスやカボチャなどうんしょと頭上に持ち上げ、運んで来た。
その短い手、伸びるんだね。そして小さいのに力持ちだね、皆。
それらを、次々あたしの前に積み上げていく。
え? えぇ??
「も、もしかして、あたしにくれるの?」
コロポックルたちはウンウン頷いた。
……言葉が分かるらしい。
え、分かるの?? さっきまで分からない様子だったのは一体……。なんか混乱してきたな。
こめかみを揉みほぐしていると、今度はノーム(暫定)たちも揃ってやって来た。
魔力が欲しいのかと思ったが、違うらしい。
なのに、もの言いたげにじぃ~っと見つめてくる。
何となくピンときた。
「……あー、洞窟の中に、棚を造りたいんだけど……。手伝って、くれる?」
ノームたちは揃って頷いた。どことなく嬉しそうだ。
お、おぉ……これは。
鶴の恩返しならぬ、妖精の恩返し?
というか、本当に妖精✕50+馬2と暮らしてく事になるのか……。
最初に想像したサバイバル生活とはどんどんかけ離れていく気がするな。
まあ、文句なんてないけど。
殺伐とした一人暮らしに白と灰色の多い冬景色。遭いに来るのは凶暴な魔物だけとか嫌すぎる。
お馬と妖精との共同生活。いいじゃないか。メルヘン上等。
何より、賑やかな方が色々と気も紛れるだろう。
そう思い、あたしはちょっとだけ微笑んだ。




