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「ジャナイ方」の異世界見聞記  作者: 那内(元ちみーば)


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13/23

13:◯◯に会ったどー


 しゃがみこんで、ソレを凝視してみる。


 うん。どう見ても『ぬいぐるみに似た茶褐色の干物』だ。


 片手にすっぽり収まるサイズで、二頭身。

 先端にチョロ毛が付いた顔のような部位があり、貫頭衣を着用したような胴体と手足がある。

 ただし全体的にしなっしな。


 本当になんだこれ? と首を捻っていると、ノワとアシュがじぃっとあたしを見つめているのに気付いた。


 …………えっと。

 このまなざし。何かを訴えてる時の目✕4ですね。


「……た、助けて欲しいの?」


 問うと、ブルルヒヒンと返事が返ってくる。


 マジ?

 ぬいぐるみの干物にしか見えないけど、生き物なのこれ。

 ていうか生きてるの??


「助けるといってもどうすれば……」


 少し考え、ひとまずその生き物(?)を手で掬い上げてみる。


 直後――ソレはモゾっと動いた。


 ヒェエエッ!?


 ぞわりとする感触に咄嗟に投げ捨てかけたが、グッと堪えた。

 これは生き物、生き物!


 虫が這うような感触から意識を逸らし、蠢くモノを観察する。


 干物はフルフルと二頭身の体を震わせながら、手の平にしがみついていた。

 まるで、母猫に縋る生まれたての子猫のように。


 ……なんという……。

 憐れみを誘う、庇護欲そそる姿か……。


 感触にゾワッとした事も頭からスポンと飛び、あたしはもう片手の人差し指でその干物をそっと撫でる。


 すると、干物はころりと反転し、撫でていた指先を短い腕(?)で抱き込み、顔らしき部分をピトリと押し当ててきた。

 キスしてるみたい。


 ………………ん?

 微笑ましく眺めていると、違和感に気付いた。

 干物が顔部分を当てた指先から、抜けていくものがある。

 魔力だ。


 おぅ? 魔力を吸われてる?

 哺乳瓶の授乳よろしく指先から……まあごくごく僅かな量みたいだし、したいようにさせてやる。

 授乳だけにごくごくとな。


 …………。おそまつ。



 鍋のスープを思い出して焚き火へと戻った。

 あ、くそ。底が少し焦げたっぽい。焦げつきも魔法で綺麗になるけど、スープにお焦げの味が付くんだよな。数食は山菜キノコスープお焦げ味で我慢するしかない。


 因みに干物はたっぷり魔力吸い(授乳)して満足したのか、今はシャツの胸ポケットでオネム中だ。

 ……呼吸してる気配がないから最初、クッタリしてるのを見て焦ったけどね。


 しかし、よくよく観察すればなるほど、この干物は確かに『生き物』だった。


 ノワやアシュ、他の動物や、魔物にも最近感じる『生きてる気配』っていうの? そういうのが何となく分かる。

 呼吸をしてないのは……仕様だと思えば納得できるかな。


 異世界だからね。なんでもアリだろう。


✵✵✵


 夜寝て、起きる。

 スマホで確認すると翌日の朝だ。

 不思議な事にスマホの充電が減る様子が全く無いんだけど、これも異世界仕様なんだろうか?


 内心首を傾げていたあたしをヒョコっと覗き込んだのは、ちっさい小人。

 スマホの明かりだけで浮かび上がる姿は二頭身。


「あれ?」


 この子、あの干物?

 でも、しなしなじゃない。なんか丸っこい。

 目を瞬かせていると、元干物の小人は首を傾げた。

 よくよく見れば、短い足でちゃんと立っている。


 おやぁ……これが元の姿なの? 戻って良かったねえ。



 洞窟の外に出ると、その子の姿がしっかり確認できた。


 全体的に丸っこい二頭身は淡い褐色をしていて、若草色のスカートみたいな貫頭衣を着ている。

 顔部分には点々の目(?)が付いており、頭の上には髪の代わりなのか白銀の綺麗な小花が一輪咲いていた。これがチョロ毛だった部分か。


 丸太に座り、お焦げ味スープと果物の朝食を摂っているあたしの足元で、トコトコ歩き回っている。

 そして疲れたら、あたしの靴先に腰掛けて休んだりしてる。


 はっきり言おう。

 動くぬいぐるみみたいで、めちゃくちゃ可愛い。

 途轍もなくちっさい二頭身もかわゆさに拍車をかけてる。可愛いしか出てこなくて語彙力が消えた。


「てか、この子って……アレだよね」


 妖精とか精霊とか、そういう存在には違いない。

 ただ、どんな妖精だろ。知ってる気がするんだけどな。


 ホビット? ノーム? 頭の花や若草色の服からして、植物に因んでるのかも?

 ピクシー? うーん……。


 記憶を掘り起こしていると、子供の頃に読んだ絵本を思い出した。


「あ、コロポックル! キミ、コロポックルじゃない?」


 この世界でも同じ名前で呼ばれてるかは知らないけど、確か植物の妖精だったはず。

 違うかもしれないが、他に適切な種族が浮かばない。


 あたしが声をかけると、コロポックル(暫定)は足をよじ登ってきた。

 そして膝の上に乗り、あたしを一度仰いで、次に横向きでお座りする。

 広場で屯するノワとアシュを眺めている模様。


 うん、正解なのかそうでないのか分からん。


 分からんけども、可愛いからいいや。可愛いは正義。


 いやー、凄い。

 拝啓。地球のお父さん、お母さん、弟。

 あたし、妖精に会っちゃったよ!


 そんな風に、内心テンション上がってたのにさ。


 コロポックルは夜になる頃には、いつの間にか消えていた。


 ちょっと寂しかったけど、干からびかけてたのが戻ったのだし、住処にでも帰ったのかもしれないな。

 いつか機会があれば、また会えるだろう。次も干からびてたら笑えないが。



 気を紛らわす為に――そう思った事もありました。


 翌日。


 洞窟を出たところでギョッと足を止める。


 見覚えのあり過ぎる小人の後ろに、ぞろりと二頭身の茶褐色集団が並んでいたのだ。


 先頭の子以外は揃いも揃ってしなしな。


 ……もしかしなくても、全員を助けろってことですかね?


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― 新着の感想 ―
 ぬいぐるみの干物とは、と思いながら拝見しておりましたら、なんと可愛らしい正体でしょう。想像するだけでメロメロになります。しかし、困っていたのはこの子だけではないようですね。サクちゃんは皆を助けること…
“靴先に腰掛けて……” ちっちゃさが目に浮かびます。可愛い! しかし、善人ならぬ善馬二頭のお友達ができ、次は妖精?×何人?w 彼等とも良い関係が築けるといいですね(⌒‐⌒) サクさんの周りがだんだんと…
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