12:パワーアップしたかも
「ぶえっくし!!」
おぉう、加◯ちゃんくしゃみしてしまった。
風邪でも引いたかなとデコに手を当てるが、特に熱はない。
気のせいか。
だよねぇ。辺りは一面雪景色。冬本番だというのに、全く寒くない。
せっかく買った毛皮のマントも、最近じゃ眠る時だけの毛布になってるよ。
なんたってギフトのお陰だ。【パーソナルエリア】は数十メートル範囲でバリアが張れるし、生活魔法で温度調節可能だし、展開していれば洞窟の周辺だけ積雪しないようにもできる。
そして通常モードバリアは、2メートルもの積雪の中でも雪掻き要らずでガンガン進めるようになった。
現在、洞窟の入り口付近50メートル四方は雪のない広場になっており、湖と森へは雪壁に挟まれた数本の迷路みたいな道ができてる状態。
ここ、凄いんだよ。
湖の水が凍らないから真冬でも魚が釣れるし、森の木々には秋と変わらず木の実やら果物が生ってる。
(魚は最初の頃は怪魚が釣れたが、現在は普通の魚。瘴気を祓うとやはり生態系が戻るみたい)
なのであたしの食料も何とか賄えてる感じだ。拠点にして良かったー。
え、広場はノワとアシュがいるから必要でしょ。
お年寄り馬だけど、まだまだ元気で遊びたいようなのね。狭い洞窟にずっといるより健康に良いし、どうせならもっと広げても構わない。
雪壁に囲まれた迷路はあたしが時々迷…………いや、湖や森へ行くのに手間だから。
それに、積雪のない場所は冬であれ雑草が繁るんだわ。暖かい季節に比べれば成長度合いはちょびっとだろうけど、馬ちゃんたちのご飯の足しになる。
なのでここ数日は、雪壁を破壊しながら縦横無尽に走る簡単な作業をしております。
我ながらアクティブ。
というか、最近動き回っても疲れにくいし、ギフトや生活魔法を好きなだけ使っても魔力切れしにくくなってる気がする。
最初のうちは何度もぶっ倒れてたんだけどねぇ。
これって、魔力量が増えたって事かしらん? 確か『小』だったと思うけど、『中』ぐらいにはなったのかな?
助かる〜。体力アップで魔力枯渇もしにくくなるなら魔力なんてなんぼあってもいいです。生存率もウハウハ上がるって事だからね!
魔力が増え過ぎてパーンしなければ尚いいね!
…………。
怖い想像をしてしまった……。
話を変えよう。
え、えーと、せっかくだから洞窟の間取りも案内しちゃおうかな!
ご存知、入り口付近は馬ちゃんたちの居場所。
あんまり美味しくないらしい食べ残しがちの草を、日干しと生活魔法の『送風』で乾燥させて寝床を造った。ノワもアシュも気に入ってくれたみたい。
シッコとウンウン? それも生活魔法でパッと清掃できるので匂いは籠もらないよ。換気も完璧だしね。
馬ちゃんたちの寝床から中に進むと、そこは資材置き場。
と言っても物とかあんまりないんだけど……。
下手くそな加工で作成した木の枝の箱とか、下手くそな編み込み技術で造った蔓の籠とか、下手くそなDIYで組み立てた木の棚とか。
数ヶ月は暮らすのに必要そうな家具を準備しているとこ。
んで、最奥。
例の偽馬車を横付けしたそこがあたしのマイルーム。
寝台部分には敷物を敷いて、枕替わりのクッションを置き、毛皮マントを掛け布団にしてる。
L字の短い部分には食器類。と、買っておいた着替えなどの荷物が積み上げられていた。
ごちゃごちゃしてて見苦しいけども、仕方ない。ストレージバッグの容量は限りがあるから、魚とか果物とかの食料に全振りしたい訳よ。
因みに、洞窟内は暗い。
が、生活魔法でも『灯明』なる魔法が使えるし、ランプもある。魔導具屋で買ったそれは魔力で起動できて、洞窟内を全てぼんやり照らす程度は明るい。
ランプは馬車に元々くっついてたのも二つあるけど、普通の道具なんだよね。
燃料がなくなると使えないと思うので、どうしてもそれを使う状況とかがなければインテリアとして飾るだけかも。
まぁ、こんなトコかな!
✵✵✵
そんな原始に近い生活を続け半月以上が経った頃。
あたしは、洞窟の入り口脇で火を焚き、鍋で山菜キノコスープを拵えていた。
焚き火は洞窟の中だと、馬ちゃんたちがいるし、燃えやすい物も多いから基本は外だ。
味付けはもっぱら砂糖か塩か胡椒。たまに小麦粉と牛乳を入れてシチューっぽい味にしたりする。それらの必需品もたっぷり買ってきたけど、充分な量ではないからね。たまにだね。
パン? 食事はほぼ食う専だったあたしにパンが焼けるとでも? 酵母もないし、購入した焼き立てパンならまだストレージにありますよ。
作れるとしたらお好み焼きモドキの粉焼きぐらいだわ。
などと思いながら鍋をかき混ぜていると、ふと。
ノワとアシュが、広場で何やら妙な行動をしているのが見えた。
二頭が鼻面を突き合わせて、地面の一箇所をフンフンと探っている。
最初は同じ場所のご飯を取り合いしてるのかとも思ったが――。
気になったので近付いてみる。
二頭が探ってるそこを覗き込むと。
ぬいぐるみに似た、茶褐色の干物があった。
…………。
………………。
なんだこれ。




