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呪われた装備でハック&スラッシュ! ~異世界で神すら把握できないスキル使って呪い装備のコーディネートします~  作者: 馬ノ やすら
第一章~「最初の街『ミストヴェイル』編」~

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【第9話】彫金ギルド

ガルドンとカッフェは早速テコの原理について色々と応用を考えていて俺の存在と約束を忘れそうになっていた。

「ん!んん!!」

わざとらしい咳払いは40年生きてきて初めてしたかもしれない。


「あ!いかんいかん!」

ガルドンは本当に俺のことを忘れてたようだ。

「すまんな!早い所彫金ギルドに行ってお目当てのものを探し出すか。」

「別に後日でも良いんですが?」

一応社交辞令的にそうは言うが貰えるものなら早く手に入れたい所ではある。

「いやいや、そうもいかん。これは正当な取引なんだからな!さあ、行くぞ!カッフェ!留守を頼む!」

「わかりました!行ってらっしゃい師匠、ススムさん!」

恐らくカッフェは留守番という名のテコの原理の研究に入るに違いない。

ガルドンもそれを分かってて留守を託したんだと思われる。

本当にこの師弟コンビは徹底的に似ている。


目的の彫金ギルドも冒険者ギルドと同様然程離れていないところにあった。

理由は冒険者ギルドと鍛冶ギルドの関係と同じ様に、利便性を考え比較的近いのだという。

ギルド関係で言えば商業ギルドも同じ様に素材の取引の関係上冒険者ギルドの近くに存在しているんだとか。


「さあ!着いたぞ。彫金ギルドだ。」

そういってずんずんとガルドンは彫金ギルドに入っていく。


「おう、ジーニスはいるか?」

ガルドンは彫金ギルドでも顔なじみなようで応対した人物はすぐにジーニスなる人物を呼びに行く。

「ジーニスはこの彫金ギルドの副マスターで俺の幼馴染だ。気楽にしてもらって良い。」

ガルドンの幼馴染と言われ、ガルドンのような豪快な人物がもうひとり出てくるのかと思いきや、非常に線が細くガルドンの性格とは真反対で神経質そうな片眼鏡(オラクル)を掛けた人物が出てくる。


「ガルドン、いつも言っているでしょう?私は忙しいのです。来られるならアポを取って下さい。」

「俺とお前の仲だろう?そんな事言わずに、な?」

「はあ・・・。貴方と幼馴染として育ったことをいつも激しく後悔していますよ。ところでそちらの方は?初めての方ですよね?」

そう言われジーニスが俺の方に向き直り聞いてきた。

「初めまして。冒険者のススムと言います。ガルドンさんと縁あってこちらのギルドを紹介していただきました。よろしくお願いします。」

何事も初対面が大事である。


「ガルドンに気に入られるとは随分珍しいこともあるものですね。私は当彫金ギルドの副マスターでありますジーニスと申します。よろしくお願いしますね。ところで今日のご用向きは?」

やはりガルドンに気に入られるのはかなり珍しい人種になるらしい。


「ええ、実はSTRとVITが上がる装飾品(アクセサリー)を探しています。」

「STRとVITですか?失礼ですが前衛職の方には見えませんが職業(クラス)をお聞きしても?」

やはり俺はかなりの細身なので前衛職にはとても見えないらしい。

「魔法使いになります。」

その答えにジーニスの頭に?が浮かんでいるのが見える。


「何故魔法使いの方が前衛向けのSTRとVITの装備を欲するのでしょうか?理由をお聞きしても?」

そう言われ、おれは腰に差していた【呪われた装備】の銅の短剣を見せる。

それを「ふむ?」とみたジーニスが途端に明らかに拒絶感を示す顔色になる。

「失礼ですがこれがどういう物かおわかりで?」

やはり【呪われた装備】はどこでも同じ様な扱いなようだ。


「ええ。ですが、現在の私のステータスではこちらの装備を使いこなすことが出来ません。それを補うためにSTRとVITのバフ効果がある装飾品(アクセサリー)を探しています。」

それを聞き更にジーニスの顔色が悪くなる。

「まさかこれを使うつもりで?」

「そのまさかです。信じがたいとは思いますがご協力お願いします。」

そう言い頭を下げる。

ガルドンもそれに続き「俺の恩人でもあるんだ。頼む力を貸してくれ。」と頭を下げた。


「あのガルドンが人のために頭を下げるとは・・・。良いでしょう。珍しいものが見れたことですし相談には乗ります。」

やったぜ!相談を聞いてくれるだけでも非常に助かる。


「ではこちらへお掛け下さい。まず確認ですが、冒険者になってどれぐらいになりますか?」

ジーニスが確認してきたので「昨日登録用紙をだして明日に冒険者証を貰えるので実質0日ですね。」

正直に話すとジーニスが頭を抱えてため息を吐く。

まあ、そうだよね?新人冒険者未満がいきなり装飾品(アクセサリー)は垣根が高いはずだ。


「ではお聞きしますが、装飾品(アクセサリー)についてどこまで知識がお有りでしょうか?」

その様に聞かれたのでいつもの捏造話をし、知識がまるでないので教えてほしいとお願いする。

それを聞き、ジーニスはこめかみを押さえていた。


「ではまず装飾品(アクセサリー)に付いてお話しましょう。彫金ギルドで作っている装飾品(アクセサリー)は大きく分けて2種類あります。1つは一般市民でも使うような着飾ることを目的とした装飾品(アクセサリー)です。そしてもう一つは冒険者や騎士団などの戦闘職に従事するものが着用する装飾品(アクセサリー)です。」

この答えは予想外だった。

装飾品(アクセサリー)は全て統一のものだと思っていたからだ。


「まず一般市民が着飾る目的で使用する装飾品(アクセサリー)ですが、こちらは一部魔法効果が付与されているものもありますが、基本的には身体能力を伸ばすような効果はほぼ無く、無制限に付けれると考えてもらって結構です。」

「ということは戦闘職用装飾品(アクセサリー)は制限がなにかあるんですか?」

まずい。何かとんでもない制限があるのだとすれば装飾品(アクセサリー)に対しての意識を根底から変える必要があると思った。


「はい。戦闘職用装飾品(アクセサリー)の制限とは、『全身に5個までならばその戦闘職用装飾品(アクセサリー)の能力は発揮される』ですね。つまり6個目以降の戦闘職用装飾品(アクセサリー)は例え装備しても効果は発揮されません。」

これについては予想はなんとなくしていた。

例えば指輪については付けようと思えば手の指だけでも10個、足に無理やりつければ更に10個装備できる。

つまりそれだけで例えコモンやアンコモン程度の指輪であってもそれだけ装備すれば必然的にとんでもないステータスにバフが掛かる。

だが、冒険者ギルドで見かけた冒険者たちはその様なことはしていなかった。

単に金銭面の問題もあるのかもしれないがそれだけではなく制限があるのだろうとは考えていたが、コレが答えだったようだ。


「なるほど。ジーニスさんお聞きしても?」

「ええ、どうぞ。」

「戦闘職用装飾品(アクセサリー)は合計で5個と言われましたが、例えば手の指に5個でも良いし、手の指、首、髪飾り等を合わせて5個でも効果は同じですか?」

「・・・。流石ガルドンが気にいるだけのことはありますね。良い着眼点です。答えは『はい』です。どの部位に5個装備してもそれが上限であり、6個目以降は能力は発動しません。加えて申すと何故発動しないのかは『不明』です。一応研究はされているんですが答えになるようなものは出ておりません。」

なるほど。恐らく何かしらのこの世界の魔法が絡む法則なのだろうと考えた。


「もう一つの疑問なんですが、一般市民でも付ける装飾品に魔法効果があるものもあるとおっしゃられていました。これは戦闘職用装飾品(アクセサリー)と組み合わせるとどうなりますか。」

「ほう・・・。ススム様は本当に面白い方だ。その答えは『問題なく発動する』です。一般市民向けの装飾品(アクセサリー)の魔法効果と戦闘職用装飾品(アクセサリー)の効果は別物ですので例えそれで合計が6個以上になったとしても全て発動します。」

これは大変興味深い話だった。

一般市民向けの装飾品(アクセサリー)の魔法効果にどんな物があるかはわからないが法則を無視して装備でき、効果が出るのは大きい。

ハックアンドスラッシュゲームの装備品は何がどう転んで自身の強化に繋がるかわからない。

それが面白さの醍醐味であり、故に俺は地球では10年以上遊んでいられた所以だからだ。


「大変興味深い話をありがとうございました。勉強になりました。」

「いえいえ、こちらこそ。暫く振りな有意義な会話、楽しませてもらいました。それで当初の目的はSTRとVITの上昇する装備品でしたね。予算はどの程度で?」

ジーニスが予算の確認をしてくると「俺が払うから気にしなくて良い。」とガルドンが答える。

それを非常に驚いた顔でジーニスが見ている。


「ま、まさか・・・。あのケチで頑固なことで有名なガルドンにそこまでさせるとは・・・。ススム様とガルドンの関係は・・・まさか?」

「恋仲とかではないですからね!?」

「あ、違うんですね。」

俺はサブイボが立つ気がして体を擦っていた。

「だから俺の恩人だと言っただろう?」

「そういえばそんなこと言ってましたね。」


「さて、STRとVITですか。指定される部位や効果値はありますか?」

「部位指定はありません。効果値は自身のステータスに上乗せでこの短剣分のマイナスを上回れればそれで良いと思っています。」

俺がそう答えるとガルドンが横から助言してくる。

「それではだめだな。完全に相殺が出来た所でそれではステータス的に見れば0だ。ただでさえ魔法職でSTRやVITが低いのに更に今以上に低くなって0になったらお前、まともに動けなくなるぞ。」

正直そんな予感はしてたんだよなあ・・・。今まで生きてきた概念で『ステータス』という明確に数値化された能力なんて見たことがなかったので、例えばステータスが0でどの程度なのかが想像できなかった。ただ明確だったのはマイナス値になればあの俺を襲ってきた瀕死のゴブリンの様な状態になるだろうとだけは実体験で分かってはいた。


「コモンやアンコモンでSTRとVITが最低でも10以上上がるものを用意してくれ。可能ならアクセサリー個数は今後を見据えて少ないほうが良い。」

ガルドンがなかなか値が張りそうな注文をしている。

「ふむ。」

ジーニスが返事1つで頷くと小さなベルを鳴らす。

すると近くで控えていたジーニスの使いらしき人物が現れ、ジーニスは先程のことを注文し、何かを取りに行かせたようだった。


暫くすると、その使いは1つの腕輪を持ってくる。

「お待たせいたしました。副マスター。こちらです。」

「ありがとう。下がって下さい。」

ジーニスがそう言うと使いは頭を下げすぐに退室していった。

ここら辺に鍛冶ギルドと彫金ギルドの違いを見た気がする。

鍛冶ギルドは何でもそうだが、基本豪快なイメージが有り、彫金ギルドは非常に繊細なイメージが強かった。

それはここにいる二人のせいなのかもしれないが・・・。


「ススム様。こちらは如何でしょうか?こちらは作りは鉄ですが、等級はアンコモン。ステータス上昇値はSTRが13とVITが12上がる品です。これでスキルが何か1つでも付いていれば確定でレア等級になるであろう品です。アンコモンの品では最上級クラスのものだと思われます。」

「手に取って確認してもいいですか?」

「ええ勿論です。」


【アンコモン:鉄の腕輪】

効果:STR+13、VIT+12


確かにジーニスの紹介どおりの品物だった。

未鑑定品でも無くステータス上昇値のみが付いた腕輪だった。

だが、低レベルで装備できてしかもこのステータスの伸び方、めちゃくちゃ高級品じゃないかコレ?


「確かにジーニスさんがおっしゃられた通りの品物のようですが、私の見識が正しければ私のような低レベルの冒険者未満のものがアンコモンとはいえ装備出来るものにしてはステータスの伸び率が高すぎませんか?」

俺は思ったことを口に出すと、ジーニスは笑みを浮かべる。


「フフフ。本当に面白い方を連れてきたものですね、ガルドン。貴方が気に入るのも納得の方ですよ。」

「ガハハ!だろう?」

そう言いながらガルドンも笑っていた。


「どうだ、ススム?これで問題なければこれをお前に渡そうと思うのだが?」

「いやいや、こんな高級品貰えませんって!!」

流石に高級品すぎる気がして気が引ける。


そこにジーニスがこう持ちかける。

「大丈夫です。今回は私からもススム様へ投資させていただきます。私の勘では貴方は普通の冒険者で終わる器ではないと考えております。ですのでこちらの品は私とガルドンで折半しますので、お支払いの方はお気になさらぬよう。」

「本当に良いんですか・・・?」

「ああ、気に入ったのなら貰ってやってくれ!」

ジーニスとガルドン両名からの強い要望もあることから断ることは失礼になると感じる。


「・・・。ではありがたく頂戴致します!」

そう言い、俺はその腕輪を貰うことにした。


「折角だ。ここで付けていけばいいだろう?」

「ええ、そうですね。手続き的なものはこちらで行って起きますのでそちらはもうお持ちになってもよろしいですよ。」


「では遠慮なく。」

おれは心の中で(鉄の腕輪を装備)と考えながら腕にはめる。

すると当然、【ハックアンドスラッシュ】のシステムメッセージが表示される。


【アンコモン:鉄の腕輪(装飾品)を右腕に装備しました。】


これでようやくあの【呪われた装備】の銅の短剣を装備しても問題なくなったぞ。

明日の冒険者証を受け取ってからの初めての依頼が俄然楽しみになる。


「気に入ってもらえたようで何よりだ!ガハハ!」

「ええ、本当に。また何かあれば私にご相談くださいね。」

ジーニスからも気に入られたようで何よりだ。


人付き合いは心底辟易していたが、こういうのも悪くないと感じた日となった。


___________


現在の『ステータス』


名前:ススム

職業:魔法使い

年齢:20才

出身地:不明

種族:ヒューマン

レベル:2

残りSP:1

各ステータス:HP:3、MP:5、STR:16(+13)、VIT:15(+12)、AGI:4、MND:6、INT:8、LUK:-10

初期スキル:言語理解、ハックアンドスラッシュ

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