【第85話】頼もしき理解者
今日の夕飯は忙しくなりそうだ。
何しろ来客数が多い。
それにどうせならば真壁先生が喜んでもらえるものが作りたい。
そう考えた俺はあるものを思いつく。
材料は以前から色々と買い込み既に揃えてあるので後は準備だ。
「フィルル、悪いけど今日もお客さんが沢山だ!準備を手伝ってくれるかい?」
『わわわ、フィルル頑張ります!』
『ポチも頑張るー!』
俺は以前庭の広場を若干改造し、いつでもバーベキューが出来るようにセットしておいた。
今回はこれを使って鉄板焼に加えお好み焼きもどきを作ろうと考える。
勿論沢山のお米も焚かなくては!
そうと決まれば大量の素材の準備だ。
と言っても今日は基本的に切りそろえるだけなので余り手間はかからない。
「ただいまー!」
どうやらアリス達が仕事を終え帰ってきた。
「お帰り、アリスさん。今日はどうだった?」
「今日も大盛況だったよ!今日は野菜炒めだったんだけど女性客もガッツリ捕まえてきたよ!」
「あはは、流石だ。そうだ、今日はかなり大人数で食事をするんだ。良ければスタンドの3人もどうだい?」
「えええ?かなりの人数になるんじゃない?」
「それは大丈夫かな、ただ手伝っては貰うけどね!」
「そういうことなら・・・!」
そうして鉄板焼の準備にアリスを筆頭に穴熊亭の三人も加わりガンガンと準備は進む。
夕飯近くになるとサーシャ達が前伯爵と真壁先生達と共にやってくる。
「只今戻りましたー。」
「今日は世話になる。」
「いらっしゃいませ。今日は大人数になりますので庭での食事になります。」
「ほー、これがススム君の館かい?随分と立派なもんだ。」
真壁先生が館を大きく見回しながら入ってくる。
「縁あって安く手に入れられたんですよ。それよりも今日の夕飯、コーイチ先生用にメニューを考えましたので是非楽しんで下さい!」
「ふむ、そうさせて頂こう。」
そういう事でメンバーは俺、森の穴熊亭4名、サーシャ達3名、前伯爵、真壁先生達3名とかなりの数になる。
「ススムさんこんなに大人数で大丈夫なんですか?」
サーシャ達が心配そうに見てくるが全く問題ない。
穴熊亭の者たちにも手伝ってもらい後は焼くだけだ。
「ええ、もう後は焼くだけですから。」
俺はそう言い今日のメニューの鉄板焼とお好み焼きもどきの説明をすると真壁先生は目に涙を浮かべる。
真壁先生は元々関西の人間なのできっと喜んでくれるだろうと思ったがどうやらその通りのようだった。
「さあ!ドンドン焼きますよ!皆さんお皿と調味料は各人勝手に使ってくださいね。」
そうして肉、野菜をドンドンと焼く一方でお好み焼きの方は真壁先生が焼きたいと言うので任せることにする。
「ええ!?これはお客様に焼かせる料理なんですか!?」
アリスやサーシャ達が驚いている。
「ふふ。お好み焼きには客もなにも関係ないんだよ。焼きたい人間が焼いて振る舞うものだ。」
真壁先生は久しぶりのお好み焼きに笑顔が止まらない。
ひっくり返すのもお手の物で綺麗にすぱーん!とひっくり返す。
そしてひっくり返した上に俺特性のウスターソースを塗る。
すると辺り一面独特の匂いが漂いだし食欲を誘う。
「ああ、たまらないねえ・・・。」
「今日は米も用意しましたので、沢山召し上がって下さい。」
「米もあるのかい!?」
「ええ、勿論です。」
俺はにこりと笑う。
そうして各人が焼き、拾い、食べ大満足と言った表情を浮かべている。
「こんな食事法があっただなんて、ススムさんはずるいです!!」
「本当にいつもびっくりだよね!!まだまだ振ったら色々な料理が出てきそうだよ!!」
腹ペコ4人娘はいつもの様に食べ文句を言う。
穴熊亭の3人も無心でガツガツ食べていることから気に入ってくれたのだろう。
前伯爵は野営を思い出すと言いながら美味しそうに食べ、真壁先生は久しぶりのお好み焼きに米という組み合わせにしんみりしている。
教員夫婦は初めての経験と空気に圧倒されながらもそれでも美味しそうに食べている。
「ふー、食べた食べた。」
「大満足ー!」
「それは良かった。明日にでもやりますのでここで解散にしましょうか。コーイチ先生は学校のお話どうしますか?」
「もちろん聞くつもりだ。久しぶりに徹夜で話が聞けそうな位気力が復活したよ。」
「あはは、それは良かった。」
「私たちは今日は帰ります。また明日来ますね!」
そう言って帰っていったのはサーシャ達だ。
「この子たちの送迎だけお願いできるかな?」
アリスは申し訳なさそうにお願いをしてくる。
「ああ、勿論だ。フィルル、悪いが火を完全に消しておいて欲しい。」
『分かりました!』
俺はサーシャ達を見送り、穴熊亭の店員たちをミストヴェイルに届けアリスも疲れているようで申し訳なさそうに部屋に返っていった。
前伯爵、真壁先生達3人と学校の話が始まる。
「それにしても本当に美味しい料理をありがとう。」
「いえ、お気に召して頂けたようで何よりです。」
「どうやらススム君はあの様な『奇抜なこと』を沢山しているようだね。それで財力も作ったのかな?」
「あはは・・・。それは色々有りまして・・・。ただ自身の経験を元にここでは教育が満足にできておらず、それが原因で仕事につけず食べていくのもやっとという人間たちが居るというのを嫌と言うほど見てきました。」
先生は俺の話しを昔のように笑顔でウンウンと頷きながら聞いてくれている。
「最初は食料支援だけを行って欲しいとのことだったのですが、自分はそれでは焼け石に水ではないかと思い、自身には見遣わしくない程の収入源もあったためどうせならばと『学校計画』を立ち上げ現在に至っています。」
俺は収納鞄より現在の状況、学校運営に必要なもの、授業の内容、協力者、そして今後の展望を話す。
これらの資料を見てフリューセル夫妻は目を見開き驚愕していた。
だが、先生は冷静に資料に目を通し、自信で感じたことや修正案などをドンドンと資料に書き足していく。
「流石、ススム君だ。昔から君はこういった事は得意だったからね。」
「ありがとうございます。これも先生のご指導の賜物です。」
「謙遜することはない。これだけのレベルのものを君一人で考え運用していくというのは並大抵のことではないはずだ。だが、安心してほしい。今後は私たちが居る。」
真壁先生の力強くも安心させる一言に俺は報われたような気がして再び涙がこぼれる。
「涙もろいところも昔のままなようだな。」
「あはは、お恥ずかしい。」
「さあ、話を煮詰めていこうか。」
「はい!」
俺達は俺の草案を下に更に真壁先生やフリューセル夫妻のアイデア、それに学校長となる前伯爵の意見なども取り込む。
「それにしても就学を終えた子どもたちを中心に新たな遊具の開発か。」
「ええ。こういったものですが。」
俺は『冒険者ゲーム』を取り出す。
「なるほど。『ボードゲーム』か。良い着眼点だね。そういった遊具の類はここでは非常に少ない。これは非常に良い強みになるだろう。」
実際に俺達は冒険者ゲームを行う。
今回は遊ぶと言うより、このゲームで得られる教育的価値を確認するためだ。
だが当然の如く前伯爵やフリューセル夫妻はそんなことが途中から置き去りになりゲームに熱中しだしてしまう。
「あはは。これは愉快愉快。大人で貴族である者たちですらここまで熱狂させるゲーム性か。素晴らしいではないか。」
「ありがとうございます。」
一通りの確認や授業をいつから開始するかなどを確認した後、前伯爵だけは帰宅することなり、俺と真壁先生達とは熱い教育論を話し合い時間を共有する。
元々教育者を目指していたものと教育を武器に壇上に上がったが、スタイルが合わず爪弾きにされ冷遇されたもの。
そしてその人物の数少ない理解者二人だ。
熱が籠もらないわけがなく、気がつけば朝日が昇り始めている。
「なんと・・・。久しぶりだな。本当に教育のことで語り合い朝日を見ることになるのは。」
「あはは、でも本当に御三方が来てくれて助かりました。これで学校運営については基本的にお任せして大丈夫そうですね。」
「ああ、改めてその任、お受けしよう。よろしく頼むよ。ススム君。」
「こちらこそ、よろしくお願いします。」
俺は三人と握手を交わす。
学校の開始は1週間後に設定された。
俺はそれに合わせ各種準備を行うこととなる。




