【第81話】呪われた装備のコーディネーター
ある程度の仕事を割り振り、久しぶりにポチ、フィルルと戯れていた時不意にポチがあることを言い出した。
『御主人、そう言えばこの前うねうねから拾ったアイテムはどうするの?』
「うねうねから拾ったアイテム?」
『うん、あの糸ぶしゃーって出してきたやつ。』
『糸をぶしゃーと出すうねうねした生き物ですか?フィルルは見たことがないです・・・。』
俺はそう言われ思い返しふと思い出した。
そう言えばスラム街の呪われたダンジョンを攻略した時に短剣を拾ってそのままだった。
「なるほど!これか。」
俺はその短剣を取り出す。
『そう、それなのー。アオォーン!』
そして例の如くポチが遠吠えをするとやはりポチに文様が浮かび上がりすぐに消える。
恐らく『女神ヴェリティアの加護』が付与されたのだろう。
「どれどれ?」
【レア:鋼鉄のダガー(加護)】
効果:HP-3、AGI+8、LUK-5
【レア:鋼鉄のダガー(加護)を鑑定しますか? はい/いいえ(鑑定用アイテム5個)】
俺はいつぞやに商業ギルドを訪れた際、低級用の鑑定用のアイテムは実は5個だけ購入していた。
上級も買おうと思えば買えるのだが、多分サーシャが見たい見たいと騒ぐのが目に見えているのでサーシャに任せようと思っている。
まあ、等級次第ではあるだろうが。
「さて、レア等級だしサクッと鑑定をしちゃうかね。」
俺が『はい』のボタンを押すとなんと自動で鑑定用アイテムが消耗され自動的に鑑定が瞬時に終わった。
「こういうシステムだったのか・・・。これも人前でやらないようにしないとな・・・。」
再び鋼鉄のダガーに目を通すと次のような物であった。
【レア:鋼鉄のダガー(加護)】
効果:HP-3、AGI+8、LUK-5
鑑定効果:【影縫】のスキルが変化し、シャードーウルフが2体顕現する。このシャドーウルフは【影縫】の特性を併せ持つ。更にAGIに応じて攻撃力が上がり、拘束力も上がる。シャーウルフの効果時間は120秒。
加護効果:【影】属性スキル成功時AGIが20%上昇する。
加護:女神ヴェリティアの加護
空きスロット:なし
う、うーん・・・。
これってどう見てもルビア向け装備じゃねえか?
確かルビアはスキル『影縫』を使用していたと記憶している。
だが、これは所謂【呪われた装備】だ。
どんな反応をするのか想像もできない。
「だけどこれを腐らせておくのも勿体ないよなあ。フィルルちょっとお出かけしてくるわ。何か食べたいものある?」
『いってらっしゃいませ。フィルルは温かいおイモを食べたいです!』
「わかった。帰ってきたらふかし芋を作ろう。」
『肉!肉が食べたいの!!』
「ポチは肉ばっかじゃないか。全く。」
スラム街に近づくと数日前までは聞こえなかった『音』が聞こえてくる。
それは掛け声だったり、木材を切ったり、何かを組み立てたりしている『音』だ。
「ススム様!」
ディナが遠目から俺のことを発見したようで駆けながら近寄ってきた。
「ディナさん、どんな塩梅かな?」
「はい。この街の人達は皆やる気に満ちとてもここがスラム街だと言うことを忘れてしまうくらい働いてくれています。もう少しで一機目の肥溜めも出来ますし、炭の粉砕も手際良く行えております。石鹸も既に最初のものが固める段階に入っておりますし、万事順調です。」
「それは驚いた。あれからまだ3日も経ってないくらいなのにもうそこまで進んだのか。」
俺は素直に感嘆の声を上げる。
「人は変われるというのを目に見て感動しております。そして嬉しいことにたった数日の作業ですが、既に他に仕事はないかという問い合わせが来ております。如何しましょう?」
「ふーむ・・・。ここで無理をすれば一気に計画が破綻しかねない。君たち商人ギルドの裁量で雇うか断るかは決めて良い。その際に僕の名前を出せば納得するだろうし、直ぐに次の仕事が控えていると言っておいてくれれば相手も引きやすいだろう。」
「承知致しました。ではその様に。新たに雇う場合、その人物についての資料も追記しておきます。」
「うん。よろしく頼むね。後、肥溜めの一機目が出来たら俺を手紙の魔道具で呼んでくれるかな?一応見届けます。」
「畏まりました。」
俺はディナとの軽い打ち合わせの後旧教会へと近づくとまた街の中から聞こえていた音とは違う音が聞こえてくる。
それは鍛錬をしている声と、それを指導する前伯爵の熱のこもった声だった。
「やってますね。」
「おお、ススムか。最近は食べ物が増えたお陰か大分体力はついてきたようだがまだまだだな。」
「そ・・・そもそも・・・、ジジイが厳しすぎるんだよ・・・。」
ルビアが大の字にゴロンと寝そべり胸で息をしている。
相当しごかれているらしい。
「誰がジジイだ、ルビア。教官と呼べと何度言ったら分かる?」
「あはは・・・。そうだ、ルビア。お前に会いに来たんだよ。こっち来れるか?」
「あん・・・?今、見ての通り死にそうなわけだが・・・。」
「お前にプレゼントをやろうと思ったんだが、そんな状態じゃ無理だな。店にでも売りに行くか。」
俺が回れ右して帰ろうとする小芝居をするとルビアは元気良く立ち上がり俺の肩を掴む。
「ちょちょちょ、ちょっと待った・・・!」
「随分元気じゃないの?」
「うるせえ!い、いや・・・。で何をくれるっていうんだ?」
「俺と一緒に子どもたちを救いにダンジョンに入っただろう?その時の主から手に入れた短剣だ。だがかなりの訳有なので受け取るかどうかはお前に任せる。」
「訳有・・・?」
「ああ、所謂【呪われた装備】だ。だがこの短剣は明らかにお前と相性は良くお前の強さを底上げしてくれるだろう。どうする?」
そう俺が告げると周りがどよめき出す。
「・・・物を見せてくれないか?」
「これだ。」
俺がそう言い鋼鉄のダガーを取り出し渡す。
震える手で受け取り、じっくりとその性能を見るがやはり怖いのだろう。
ジワリと訓練の時とは違う冷や汗を流しているのが分かる。
「一つ聞く。俺には短剣の効果が全くわからないのに何でお前にはそれが分かる?」
「完全にわかる訳ではないし、ほぼ勘だ。だがこれはお前を傷つけたり、周りを不幸にすることはないよ。それは保証する。」
ゴクリと唾を飲み込んだルビアが決心した目で俺を見つめる。
「俺には今後、この自警団をそしてこの町の住民たちを守っていく力が必要だ。其の為になら呪われた力だって飲み込んでやる・・・!」
「良いだろう。ではルビアにその短剣を授ける。折角だ、それの試運転に狩りに行こうか。」
俺達は早速狩り場に赴き獲物を探すとある獲物が引っかかる。
敵性反応が何かを追いかけながらこっちに向ってきていた。
「ふむ。丁度いいな。ルビア少ししたら何かがこちらに向って来る。恐らく鹿か何かを狙った猪あたりだと思う。お前一人で狩ってみろ。」
「俺一人でか!?」
「ああ、力をつけるんだろう?」
俺がそう言うとルビアは一度目を伏せ、再度見開いた目には光が宿っている。
遠くから何かがかなりの速さで接近してきている。
逃げているのはやはり鹿だった。
そして追いかけているのは猪では無くなんと熊だった。
「おっと、これは予想外の獲物だな。」
「フォローは頼むぞ。」
そう言い意を決したルビアは短剣を構え熊の影を狙い【影縫】を放つもそれは当然今までの通りではなく、足元より二頭のシャドーウルフが現れる。
予想外の展開にルビアは一瞬困惑するがそれも瞬時に何かを理解したようで指示を出す。
「行け!!」
指示を受けた二頭のシャドーウルフ達は影に潜みながら熊に接近しそして捕らえる。
捕まった熊は強化された【影縫】の効果により身動き一つ出来ないでいる。
そしてその身動きができない熊目掛け、実体化したシャドーウルフ達が一気に噛みつき、一瞬で熊は急所を食いちぎられ絶命する。
「うん。いい感じだな。どうだ?」
「すげえ・・・、すげえよこれ・・・!」
「気に入ってもらって良かった。まあとりあえずコイツの血抜きをして、おみやげに持って帰ろう。」
こうして俺は人生で初めて、『【呪われた装備】のコーディネーター』として活動を行ったのだった。




