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呪われた装備でハック&スラッシュ! ~異世界で神すら把握できないスキル使って呪い装備のコーディネートします~  作者: 馬ノ やすら
第三章~「オーロ・ヴァレンツ『スラム街』編」~

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【第70話】森の穴熊亭オーロ・ヴァレンツ支店

旧教会視察の翌日、俺はミストヴェイルにアリスを迎えに行く。

「おはようございます。アリスさん。」

「お、おはよう・・・。ススム君。」

アリスは机にぐでーっと身を預けながら答えた。


「その調子だと大変だったようですね。」

「大変どころじゃなかったよ・・・。」

「そうだな。結婚するのか!?と方方で言われて大変だったもんな。」

「おはよう、パック。」

「もーーー!パック!!」

俺はパックに挨拶するが、裏事情を話されたアリスは顔を真赤にしながらパックに殴りかかっていた。


「それでもう、アリスさんの方は大丈夫なの?」

「・・・うん!いつでもおっけーだよ!」

「それにいつでも帰ってこれるんだ。アリスなら問題ないだろう。」

兄妹二人は笑顔で顔を見合わせている。


「じゃあ、パック。責任を持ってアリスさんをお預かりまします。」

俺は背筋を伸ばし、パックに握手を求める。

パックはそれに応じ、手を握り返す。

「おう、妹をよろしく頼んだぜ。」


「そう言えば、バレッサさんから連絡があって出店する場所の候補地を見つけたので見て欲しいそうだけど?」

俺はバレッサから相談されていた件を思い出し二人に聞く。

「俺は先に、そっちに行く側の用意をさせる必要があるから適当な頃に来てくれ。」

「じゃあ、私だけ先に見行くね。」

「了解した。確かこっちに来る予定なのは3人だっけ?」

以前さらっと聞いた話だと、移住希望者は複数いるが最初はそんなに行ってもしょうがないということで調理担当二人、ホール担当一人、それにアリスが先発隊として来るという話になっていた。


「ああ、そうだ。なので可能なら同じ様に店に住み込めるような形が一番良いだろうな。」

「そうだね。それが一番お金掛からない方法だろう。その点も考慮して店舗の見学してくるね。」

「頼む。」

「じゃあ、行ってくるね!」

「おう、行って来い。」


そうして俺達はオーロ・ヴァレンツに戻ってくる。

「おかえり。アリスさん。」

「ただいま。ススム君!」

「少し休憩する?それともこの足で手続きに行く?」

「うーん、本当は久しぶりにお風呂入りたかったけど先に手続きに行く。あの感じだと結構大変そうだし。」

「わかった。フィルルに湯だけ用意させておこう。それで良いかな?フィルル?」

俺がフィルルの名を呼ぶとフィルルは姿を表す。


『畏まりました!ご用意しておきますね。』

「フィルルちゃん、これからよろしくね!」

フィルルはにっこりとアリスに笑顔で答える。


そうして俺達は先にアリスを正式にオーロ・ヴァレンツ市民とすべく役場にやってきてミストヴェイルからの諸々の文章を提出し、正式に移住手続きを終える。

「ふう。いやはや。同住所ですがご婚約ですか?と聞かれた時は驚いた・・・。」

「まあ普通はそうだしね?」

そういい、アリスが俺の顔を満面の笑みで覗き込んできた。

ぐう!


「ぜ、善処します・・・。」

恋愛ヘタレおじさんには中々厳しい状況だ。

そんなことを話しながら商業ギルドに向かうとサーシャ達の姿が見える。


「おはようございます!ススムさん!アリス!」

「おはよう、サーシャ!私正式にオーロ・ヴァレンツ市民になったよ!」

「その様ですね。良かったです。」

サーシャとアリスは相変わらず中が良く、二人できゃいきゃいはしゃいでいた。


「おはよう。みなさん。今日は何だって僕達を待ってたんですか?」

「あ、流石ススムさん。やっぱし分かりましたか?」

「サーシャさんのことだから根拠があって待ってたんだろうと思っていました。」

「アリスが元々オーロ・ヴァレンツの役場で手続きをする予定は聞いていましたし、何よりバレッサ副ギルドマスターが物件を探し出したっていう情報も貰っていたので、だったら私たちも一緒に見たいなー?って。」

サーシャは身を乗り出し俺の顔を見ながら答えた。


「なるほど。まあ共同出資者なら妥当ですね。行きましょうか。」

「はい!」

そうして俺らは商業ギルド内に入りバレッサに取り次いでもらう。

暫く広めの待合場所で待っているとバレッサが姿を表す。


「おはようございます。皆さん。」

「おはようございます。バレッサさん。どうやら店の候補地が見つかったようで?」

「ええ。どうやらサーシャ嬢たちもご一緒という事はこれから見学ということでよろしいのでしょうか?」

「はい!良ければお願いします!」

サーシャ達はバレッサに返事をする。


「ああ、そう言えばバレッサさん。昨日の内に旧教会に行ってきましたよ。『クリムゾンハウンド』のルビアとも話をつけてきました。明後日に『クリムゾンハウンド』としての最終的な答えを用意してくれるとのことです。」

俺が昨日の出来事を話すとバレッサは非常に驚いた顔をしている。

「ええ!?もう協力を取り付けたんですか!?」

「はい。冒険者ギルドへの問い合わせも済んでいますし、もし『クリムゾンハウンド』が協力してくれるならより柔軟な動き方が出来そうですよ。」

「そうですか・・・。本当にススムさんは人とのお付き合いがお上手なんですね・・・。」

バレッサは感心した様な、呆れたような表情で俺を見る。


「ススムさんの人誑しは今に始まったことじゃないですから。」

サーシャ達は笑顔でそんな事を言っている。

「あはは・・・。それよりも物件。問題なければ見に行きましょう。」

俺が促し全体が動く運びとなる。


そこは商業ギルドからも歩いていけるような距離であり人通りも多い居抜きの建物だった。

「こちらです。」

「ええ!?こんな良さそうな建物なの!?」

アリスが驚くのも納得だ。

立地も良く建物の状態も良い。

更に元々カフェか何かだったのか。居抜きとしてそのまま使えそうな物がかなり残っている。


「はい。ここのオーナーは元々私の古い友人でかなりここら辺では知られたカフェだったのですが病でお亡くなりになりまして。亡くなる前に、こちらを私が縁合って譲り受けていたんですよ。」

「ですが、かなり条件が良すぎませんか?ここ、この街でも一等地では?」

俺がそう聞くとその通りだと返事が帰ってきた。

「ええ、そうですね。ここは店が潰れてからというものかなりの問い合わせがあったのは事実ですが、どうしても思い出がある場所だったのでどの方にもお任せしづらくて。そこに森の穴熊亭のお話を頂き、更には『学校』の設立というその先の展望まで見せて頂きましたので、お任せしようかと。如何でしょうか?」


アリスは複雑そうな顔をしている。

「うー、でもでも。ここかなりお高いんじゃないの?私の予算じゃ賄えないよ?」

そんな事を言っているので俺達は顔を見合わせた。

「アリスさん。言ったでしょう。これは投資なんですよ。単純に出資者で悪んだったらアリスさんの出資金は1/4で良いんですよ?」

俺が改めてそう答えるとアリスは目を丸くしている。


「勿論建物や土地だけでなく、この中の改装だったり、各種必要なものの調達をする際も全部纏めての話になります。なのでアリスの出資金はかなり抑えられるはずですよ。」

サーシャがアリスを見てニッコリと笑いながら説明をする。


「さ、では中をご案内しましょう。」

バレッサが先頭に建物の現状を見せてくれる。

この建物は地下一階。地上四階建ての建物だった。

非常にしっかりとした作りであり建物の管理も行き届いている。


「いやはや、僕もこのレベルの物を紹介してもらえるとは思ってもいませんでした。」

「はい!でも本当に良いんでしょうか?」

アリスが心配そうにバレッサを見るがバレッサも笑顔で答える。

「ええ、勿論です。これからも、今後も私たちがサポート致しますので是非『森の穴熊亭オーロ・ヴァレンツ支店』盛り上げましょうね!」

それを聞いたアリスが俺達に向き直り、背筋を伸ばしてしっかりと感謝述べる。


「ありがとうございます!宜しくお願い致します!」

こうして『森の穴熊亭オーロ・ヴァレンツ支店』の場所が決まる。


俺達は一度商業ギルドに戻り、今後の計画を話すことなる。

実は俺はあの店を見てからずっと考えていたことがあった。


「ススムさん。考え事ですか?」

サーシャはその様子を知っていたようで、商業ギルドに着き会議室に着席した早々に声を掛けてくれた。

「ええ。実はあの店を見てアイデアが浮かんだので。」

俺がそう言うと全員が今すぐに白状しろ!と言わんばかりに身を乗り出した。


「あはは・・・。じゃあ説明させてもらいますね。まず一階はミストヴェイルと同じ様に誰でも気軽に入ることが出来、持ち帰りも、その場で食べることも可能な場所としてで良いと思います。」

「うんうん。」

アリスもそれをイメージしていたようだ。

「3階、4階は従業員の宿舎としての使用でどうでしょうか?かなり広めですが今後の活動次第ではかなりの従業員が入る可能性があるので、広い分には問題ないかと思います。」

「3階だけじゃ駄目なの?」

アリスは頭を捻っている。


「それは従業員の安全面を考えて、3階は男性用、4階は女性用とすれば従業員たちは安心して暮らせるだろう?もしそれでも余るようなら物置にでもすれば良い。」

「確かにそれは画期的ですね。そうすれば従業員たちも伸び伸びと生活でき、質も向上するかも知れませんね。」

バレッサは今まで思い浮かばなかったというようなハッとした表情で答える。

この世界では男女関係なくタコ部屋のような部屋に押し込まれるのは比較的普通のことのようだ。

俺は以前よりそれは健康上よろしく無いのではないかと、ミストヴェイルの従業員用居住区にも実はアドバイスとして書き記していたくらいだ。


「じゃあじゃあ、2階はどうするの?」

「紹介専用VIP用にする。」

それを聞いた全員が想像できないというように頭を捻っている。


「バレッサさん。以前三種類のサンドをお渡しした際、率直に貴族のような上流階級相手でも戦えるとお考えになりましたか?」

「はい。ただし食べ方が難ありかとは思いましたが。」

「そこで上流階級の方々には2階を利用してもらう。一般市民達と席を共にしたくないと考える上流階級様達は割増料金を払ってでも2階を利用するはずだ。」

「なるほど・・・。食べ方も2階は2階で別に提供できる・・・か。」

サーシャが感心したように頷いている。


「ああ、それに紹介制度にすることにより、金や権力に物を言わせるような粗雑な上流階級様は排除できる。」

「どういうこと?」

「その利用客がトラブルを起こした際は単純に『紹介した者』も連帯責任とさせる。そうすればそのトラブルを起こした当人は勿論、紹介した者も排除できる。」

アリスがそこまで聞き納得したようだ。


「なるほどー。確かに食事の席ってどうしても荒れちゃう場合があるしねえ。」

「だろう?」

俺とアリスはこの様なやりとりを今までやってきたので当然のように話しているが、サーシャやバレッサには顔面に鳩の豆鉄砲を連打されたような気分だったようだ。

「ススムさん!その様な素晴らしいシステムをいつもこの様にアリスさんやパックさんと話していたんですか!?」

「うん?そうだけど。」

それを聞いたバレッサは慌ててメモを取っている。

あ、これもしかしてやらかしたパターン?


「後でススム様には登録してもらいましょう。サーシャ嬢。」

「ええ、そうですね・・・。全く。」

二人が嘆いているが実はまだ案があった。

俺は恐る恐る手を挙げる。


「はい。ススム君!」

「実はもう二つほど案が有りまして・・・。」

そう言うとアリスは目を輝かせ、サーシャとバレッサは呆れていた。


「・・・お聞きしましょう。」

「ごほん。では。正式に店舗が開店できるまでの間、店の前で『スタンド』を立てて簡易で販売できないかなあと考えました。」

「『スタンド』って?」

「手押し車を改造して簡単な調理場を作って持ち帰り専用の販売所にするんだよ。販売する種類は日替わりにして買える商品も1日1種類にする。予め具材もある程度調理しておいて最終工程だけを調理できる調理場にすれば省スペースで販売できると思うんだ。それにこの方式なら調理人一人、販売係一人の二人で回せる。」

「要は移動式屋台みたいな感じ?」

「そうだね。ただ正直な所これは設けよりも宣伝を重視する。なので販売数も少なくて良い。」

「うんー?なんで?売れるなら売れたほうが良くない?」

「いつでも食べれる物と一日10個しか売ってない物。食べたくなるのはどっち?」

「それは勿論・・・!!」

アリスが俺の質問を想像しながら結論に至った。


「ふふ。そういう事。要は人の興味を焚きつけるのがスタンドの目的。」

「なるほどー!」

サーシャとバレッサの顔には更に豆鉄砲がめり込んでいる。

ひーひー、と息切れしているのが想像できるような様子だった。


「なるほど・・・。スタンドの重要性も理解できました。まあでも、これは屋台と同じと考えられそうなので登録は不要でしょう・・・。」

「何度も登録しないで済みそうで良かったです。」

「ちなみに最後の一つとは?」

「これは軍が絡んでくるので可能かどうかわからないんですが、例えば巡回してくれる兵士に『フードチケット』を無料で配布するのはまずいですか?」

「・・・。お話を聞いても?」

「はい。『フードチケット』はその名の通り引換券です。それを巡回兵達一人一人に毎月4枚程度無料で配布します。」

「何故その様なことを?」

バレッサはとことん理解できないという顔で考えている。


「理由は二つです。一つは宣伝のため。各種サンドの魅力は街なかで豪快に美味しそうに食べている様子や匂いが強力な宣伝材料となります。それを巡回している兵達にも担ってもらいます。」

「なるほど。それは理解できます。ですがそれは一般市民でも同じことですよね?」

「ええ、ですから本命は二つ目の理由です。安全性の確保です。」

「安全性の確保・・・?」

「ええ。先程バレッサさんも仰っていたようにこのあの場所は何かと注目を浴びるでしょう。もしかしたらあの場所を狙っていた人達に恨みを買うかも知れません。そこで兵士たちに『不定期に巡回してもらう』のですよ。」

「・・・!!」

そこまで言うとバレッサは気がついた様だ。


「なるほど・・・!通常であれば店の巡回なんて兵達は行ってくれませんが、無料のサービスがあるなら利用する。それが間接的に兵達の巡回に繋がり、更に不定期になることによって抑止力になる、ということですね!」

「ご明察です。」

これは犯罪が非常に多いアメリカのドーナツ店が地元警察官相手に無料でコーヒーやドーナツをプレゼントしていた手法だ。

警察官はドーナツやコーヒー目当てにドーナツ店に行き、それが抑止力となりドーナツ店での犯罪件数が劇的に減ったという実例がある。


「本当に・・・、ススム様はどこまで見えていらっしゃるのか・・・。フォレスが見込みを付けるのも納得です・・・。」

「そうでしょう!そうでしょう!!」

何故かサーシャが自慢気だった。


「わかりました。当然ですが私はこの街の軍にも顔が利きます。交渉してみましょう。」

「バレッサさんならそう言ってくださると思っていました。よろしくお願いしますね。」


こうして、『森の穴熊亭オーロ・ヴァレンツ支店』が完成するまでの間は暫くスタンド方式で活動することとなり、同時に本店舗の設営に向けての各種契約や改装などが行われる運びとなった。

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