【第68話】救出
ルビアと二人でダンジョンに突入するとやはり【呪われたダンジョン】特有の歪さだった。
空間が非常に歪んだような状態で尚且つ入って早々にダンジョン主の部屋に繋がっていた。
部屋の中は粘着性の糸が張り巡らされている。
「これが・・・ダンジョン・・・?」
ルビアはダンジョン自体が初めてであったようでこの異常さに気がついていない。
「普通のダンジョンではなく【呪われた】ダンジョンだ。普通の構造ではない。気をつけろ。」
「あ、ああ。しかし何なんだこの糸?」
ルビアがそんな事を言っていると、その糸に包まれ拘束されている子どもたち3人を発見する。
動きがあることを見ると命に別状はないようだ。
「お前達!!」
ルビアがそう言って動こうとした時だった。
天井から粘着性のある糸が勢い良く飛んできた。
「ルビア!!」
俺がルビアを跳ね飛ばしルビアを助けるも俺自身が糸に拘束される。
「これだからパーティは苦手なんだ・・・。はあ。」
「いてて・・・。おい!おっさん大丈夫か!?」
「ああ、なんとかな。それよりもどうやら主のお出ましの様だ。」
その姿は触手がいたるところから生えた大型の蜘蛛でありまさしく異形だった。
その姿を見たルビアは恐怖で動けなくなっている。
「ルビア!ルビア!!俺の作戦を聞け!!」
俺が叱責したことでルビアは意識をはっきりとさせ俺に目を向けないでも話を聞く体制が取れたようだ。
「俺がこいつの注意を引き付ける。その隙に子どもたちを救出しろ!」
「だ、だが・・・!」
「しっかりしろ!お前の大切な『家族』だろう!!」
俺が『家族』という単語を放ったことでルビアの目にしっかりと光が戻った。
「あ、ああ!頼む!!」
「よし、行くぞ!!」
『風精霊召喚』
俺が呪文を唱えると、バチ!バチチ!と音が鳴り始めそこに風の上位精霊である雷の上位精霊が顕現する。
その上位精霊は即時俺の背後に周り鎧となるように覆いかぶさり、俺の身体から強い放電現象が始まる。
そして足元からは三頭の風属性の大型狼が顕現する。
俺の予想通り、俺を拘束した糸は雷の上位精霊が発する放電現象で焼き切れる。
俺を拘束したと思っていた異形の蜘蛛は俺の糸が焼き切られているのを察知すると直ぐに俺に目標を定め突っ込んでくる。
「よし、良いぞ。行け!!ルビア!!」
それを聞いたルビアは一目散に子どもたちの元に移動する。
対し俺に突っ込んできた蜘蛛はというと雷の上位精霊の帯電した一撃を諸に数発食らい、更にノックバック効果が発生し大きく吹き飛んだ。
その威力は凄まじく大型の異形の蜘蛛はよろよろとしている。
俺は大型狼達を蜘蛛の下に行かせ俺自身はルビアの援護に向かう。
「大丈夫か!」
「この・・・!クソ糸が切れねえんだよ・・・!!」
蜘蛛の糸特有の粘着性物質がルビアの持っていた短剣に引っ付いてしまい上手く切断ができない様子であった。
「ならここは俺が。」
俺がそう言い、雷の上位精霊を駆使してレーザーカッターの様に電気を放電させ、糸を焼き切る。
だが、子どもたちを傷つけては元も子もないのでかなりの慎重な作業となっている。
「後少しだ。頑張れ!」
俺は子どもたちに声を掛けながら慎重に糸を切断している時だった。
「ギャワン!!」という狼達の悲鳴が聞こえ、俺の感知内からも大型狼達が倒されたのを理解する。
糸はもう少しで切断できる。
「ルビア!数十秒でいい!!足止めできそうか?」
「・・・、俺様を誰だと思っている!!俺はクリムゾンハウンドの頭、ルビア様だぞ!!」
ルビアはそう言い短剣に黒いモヤを纏わせ大型の異形の蜘蛛の足元に投げそしてスキルを発動させた。
『影縫!!』
足元に刺さった短剣は大型の蜘蛛の影を狙ったようで、影に短剣を刺された蜘蛛は一時的な行動不能に陥っていた。
「流石だ!!」
子どもたちを拘束している残りの糸を無事に怪我を負わせること無く焼き切ることに成功する。
「よし、切断できた!一旦退避するぞ。」
俺はそう言い子どもたちを大事に抱えルビアにも声を掛け、大型の異形の蜘蛛から距離を取る。
「ルビア、この子達を頼む。」
「ああ・・・。だがこの後はどうする?アイツとんでもなく強いぞ・・・!?」
ルビアの放った短剣が大型の蜘蛛の力を抑えきれず想定よりも早く『影縫』の効果が切れているようだ。
「問題ない。後は俺に全部任せろ。」
俺は立ち上がり蜘蛛の前に立ちはだかる。
「さて悪いが、俺の初めてのビルドに付き合ってもらおうか!!」
俺がそういった瞬間に完全に『影縫』の効果が外れ再び俺目掛け突進してくる大型の異形の蜘蛛。
そして移動中に触手からも糸を飛ばしてくるがそれは雷の上位精霊の電撃により俺に届く前より先に蒸発している。
「ふっ!」
俺が息を一息吐き、一気に間合いを詰める。
そして放たれる怒涛の連打。
一撃一撃が雷の如く速さで放たれ、電撃を纏っているのでとんでもない音を立てながら全てが大型の異形の蜘蛛にめり込む。
蜘蛛は殴られた勢いと強制ノックバックの追加効果で再び大きく吹き飛ばされ、更に大量の打撃を受けたことでのダメージに加え、帯電状態になりまともに動けなくなったようだ。
「悪いな。実験ここまでの様だ。」
俺がそう言うと雷の上位精霊はそれを合図に更に連打を大型の異形の蜘蛛に浴びせ、呪いの元凶となっていた、このダンジョンの主は形を留めること無く消滅する。
「ふう。これで終わりかな。」
『御主人!御主人!!何か出るよ!!』
ポチがフードの中で大暴れを始める。
という事は・・・。
一筋の金に近い光がダンジョンの主だったものの付近に立ち上る。
そこには強い光を放つ一本の短剣がある。
「短剣か。ざーんねん。ただレア度的に回収は必須だな。」
そうして俺はその光が立ち上る短剣を改修した後直ぐにルビア達の下に駆け寄り子どもたちの状態を確認するも、既にルビアにより子どもたちは完全に救出されていた。
「あ、あんたは・・・一体・・・?」
ルビアがそう言いかけた時だった。
例の如くダンジョンが崩壊を始める。
「おしゃべりは後だ、さあ。ダンジョンを出るぞ!」
俺は脇に子供二人を抱え、ルビアは子供一人を背負い、ダンジョン奥から差し込む光に向かい全力で駆け抜けた。
ダンジョンを抜け終えるとダンジョンは光を放ちながら崩壊していく。
出た先にはまだ先程の面々がいる。
「頭!!」
「カイト!リア!レオン!!」
ダンジョン前に居た面々から声が上がる。
どうやら今回は時間が通常通り流れているダンジョンのようだった。
ギャング団のメンバーや子どもたちの保護者達が一斉にルビアと子ども達の前に集まる。
「ああ、良かった!良かったよ!!」
「お母さん・・・ごめんなさい!!」
子どもたちと母親たちは抱き合って安堵していた。
俺はその場の雰囲気を壊したく無かったために静かにその場を離れようとするとルビアから呼び止められる。
「おい!お前!!」
「うん?どうかしたか?」
「・・・話がある。」
「そうか。」
俺達はルビアを先頭に再び旧教会へと向かう。
ルビアは自分の席に着くとドカッと気が抜けたように座り込む。
やはり大分精神的にきつかったようだ。
俺は収納鞄からだいぶ前に貰ったポーション類を探し、そして回復のポーションを取り出す。
「ルビア、これを。」
俺は取り出した4本のポーションをルビアに渡す。
「・・・これは?お前用と後は子どもたち様だ。かなり精神的に参ってるだろう?取っておけ。」
「いらねえよ。」
「いいからいいから!おっさんの奢りだ。取っておけ!!」
俺は強引にルビアに手渡す。
「返品は受け付けないからな。」
「・・・はっ!おい、このポーションをさっきのチビどもに飲ませてやれ。」
ルビアの部下らしき人物に3本手渡し自分も一本を飲み干す。
「これは・・・!?」
どうやら効き目は抜群なようだった。
「お、随分と効いたようで何よりだ。その材料は俺が冒険者ギルドで『勉強し』採取した薬草類を下に作られたポーションだ。」
「ススム、と言ったか・・・。」
「うん?」
「お前が居なければ子どもたちは愚か俺すらも死んでいただろう・・・。感謝する。」
そう言いガバっと頭を下げる。
その瞬間それを見ていたルビアの部下たちは一斉にどよめき出す。
「おいおい、止してくれ。俺はたまたまああいった物に慣れてただけだ。それにあの子達を救ったのは紛れもない『家族』を守ろうとしたお前の力だよ。」
「俺は・・・。俺達は今まで金持ちや権力者達から搾取されるばかりだった・・・。だから俺達は自分で自分たちを守るための力をつけるためにこの『クリムゾンハウンド』を立ち上げ、この街の奪われる側の人間たちを守ってきた・・・。お前のように俺達に『与えてくれた』のはお前が初めてだよ。良ければさっきの話詳しく聞かせてくれないか・・・?」
「感謝する。きっと後悔はさせない。」
そうして俺は『学校』プロジェクトについての話し合いを始めることにした。




