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呪われた装備でハック&スラッシュ! ~異世界で神すら把握できないスキル使って呪い装備のコーディネートします~  作者: 馬ノ やすら
第二章~「商業都市オーロ・ヴァレンツ編」~

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【第59話】立候補

俺達は久しぶりの再会で話に花が咲き、夕飯も懐かしい穴熊サンドだったことも有り楽しい夜を過ごした。

どうやら俺のアドバイス通り、急遽開店した店も大賑わいの大盛況に終わったらしい。

途中で二人も退席してヘルプに入っていった。

翌朝、久しぶりの部屋のベッドから目が覚め準備を整えているとノックが叩かれる。


コンコン

「はい?どうぞ?」

「おはよう、ススム君!」

「ああ、おはよう。アリスさん。昨日は大賑わいだったようで。」

「お陰様でね!流石は穴熊亭名誉会長だよ!」

「いつの間にそんなに出世したんだ?」

俺は笑いながら返した。


「それよりも用件は?」

「いやあ、昨日あの話の後寝付けなくてね・・・。ほぼ寝ないで準備しちゃった。」

そんな事を顔を赤らめて説明するアリス。

今まではなんてこと無かったが、いざそういう関係に近づいていると分かると俺まで恥ずかしくなる。


「あはは・・・。ああそうだ。折角なら一度俺の拠点の屋敷まで行くかい?」

「いいの!?」

「店が大丈夫ならだけど。」

「大丈夫、大丈夫!基本的には本当にもう私やパック無しでも回せるくらいなんだから!」

「じゃあ、一度パックを呼んできてもらって良い?念の為だ。」

「わかった!」

そう言うとアリスは風の様に飛んでいく。

本当に行動力が凄まじい娘だ。


しばらくするとパックがやってきた。

「おう、おはよう。」

「おはよう、パック。悪いね朝から。」

「良いってことよ。それよりも一回あっちに戻るって?」

「ああ、一応こっちでやるべきことは終わっていて、1週間後くらいにこちらの冒険者ギルドに顔を出すことになっている。なので良ければアリスさんを一回連れて行こうかと。」

「なるほど。じゃあ最低でも1週間後には一回帰ってくるんだな?」

「別にアリスさんの都合次第で今日帰ってきても良いんだよ?なんせ転移陣(ポータル)の魔道具は基本僕しか使えないけど制限はないからね。」

「便利なものだ。アリス、どうする?」

「んー。荷物は一応まとまってあるから、そうだね。1週間後に一回戻って来る。その時に方方に挨拶に回って、落ち着いたら正式に移動するよ。」

「それが良い。じゃあ、1週間後だな。ススム、呉れ呉れも妹のことよろしく頼む。」

「・・・ああ。任された。」


暫くして荷物を持ったアリスが現れる。

「ずいぶん軽い荷物だね?」

「お陰様で収納鞄(マジックバック)の大きめの買えるくらいには稼いでるからね!」

「そっか。じゃあ準備は良いかい?」

俺が手を差し出すとアリスはしっかりと手を握り返す。


転移陣(ポータル)起動。オーロ・ヴァレンツに移動。」

バカッ!と石の扉が開き空間が歪む。


「さ、行こうか。」

「はい。パック、行ってくるね。」

「おう、1週間後にな。」

そうして僕達は転移陣(ポータル)に入ると一瞬ぐにゃっとした感覚があるがそこはもう既にオーロ・ヴァレンツの一室だった。


「ようこそ、我が家へ。アリスさん。」

「うわぁ・・・。すごい、本当に一瞬でオーロ・ヴァレンツに来たんだ。というかこれがススム君のお家・・・。」

アリスがぽかーんとしているとフィルルが出迎えてくれる。


『お帰りなさいませ。ススム様。それとお客様ですか?』

「ただいま。フィルル。こちらは僕の友人でアリスさんだ。今後この屋敷の一室に住むことになるんだが、良さそうな部屋はあるかな?」

「うわ!ススム君この可愛い子は!?」

「ああ、フィルルと言ってこの館を守ってくれてる妖精だよ。なにか困ったらフィルルに聞けば良い。会話は僕しか出来ないけど、それでも希望のことをしてくれるはずだ。」

「そうなんだ・・・。よろしくね!フィルルちゃん!」

フィルルはニコッと笑う。


『お部屋ですね。ご案内致します。』

「ああ。」

フィルルを先頭に客室に案内してもらう。

『こちらなんかは如何でしょうか?』

「うん、良いんじゃないかな?あ、そうか。ベッドは買えないといけないね。今日中に買ってこようか。」

「え!?ベッド買い替えるの!?勿体なくない?」

『確かにこちらの客間で泊まられたお客様は過去居なかったように思われます。』

「んー、じゃあ寝具だけ買い替えるか。流石に古いでしょう。」

『それがよろしいかと。』

「えええ!悪いよう!」

「気にしなくていいさ。早速街を散策がてら買いに行こうか?」

「あ、街は見てみたいかも!」

「フィルル、お湯の用意だけしておいてもらって良い?後で風呂入りたい。」

『分かりました。』

「風呂!?お風呂あるの!?」

やはりそこに飛びつくアリス。

風呂は本当に一部の貴族の特権のようなものだ。

一般階級の人間には夢のまた夢だろう。


「ああ、この家の自慢の一つだね。」

「うわあ、嬉しいなあ。」

そうして俺は何も考えないまま玄関から外に出てしまった。

それが大きな間違いだった。

玄関を開けるとそこにはサーシャ達が居た。


「ススムさん!と・・・・そちらの方は穴熊亭のアリスさん!?」

「ん?げっ!サーシャさん!?」

なんてこった。早々に問題に直面してしまう。


「お、おはよう、サーシャさん。」

「おはようございます!サーシャさん。お久しぶりですね。」

アリスはにっこにこでサーシャに挨拶する。

この二人、一度しか面識がないはずなのにしっかりと相手を認識してるー!


「ススムさん・・・。何故アリスさんがススムさんの家から出てきたのかお話を伺っても・・・?」

迫力あるサーシャに下手な口答えは無駄だと察し俺は素直に家に通す。


「どうぞ・・・。」

俺達は応接室に移動し座る。

部屋には俺から向って右にアリス、左にサーシャが座る。

『お茶です。』

「ありがとう・・・、フィルル。ええっと・・・。」

「ススムさんまずはお疲れ様でした。お祖父様からお話は伺っておりますが、ミストヴェイルに緊急の要件で行ったとか?一瞬で行き帰りを出来たのは魔道具ですか?」

「・・・左様です。」

「帰ってきたということは無事に完遂したということですね。それは良かったです。私もあの街は好きなので。それで何故アリスさんが居るのでしょうか。」

「うーん・・・、実はカクカクシカジカでアリスさんは今後友達以上恋人未満という関係でお付き合いしていくことになり、この街に滞在している間は僕の館の客室に住んでもらおうかと思いまして。」

それを聞いたアリスは嬉しそうにニコニコしている。


「では将来アリスさんと結婚することも有りうるという認識でよろしいのですね?」

「可能性はあります・・・。」

「では私も正式に友達以上恋人未満として立候補致します!!」

「えええーーー!?」

俺はサーシャの余りの宣言に驚愕してしまった。


「いやいや、サーシャさん。貴方は伯爵家のご令嬢で僕は平民ですよ?」

「家のことは問題有りません。それはススム様も良くご存知のはずです。」

「うっ・・・。確かに・・・。ですが一度にそういった関係の人が二人というのは外聞的によろしくないのでは?」

俺がさも当然のことを言うがサーシャとアリスは顔を見合わせ首をひねっている。

「え?何が問題なんですか?」

「うん。私も良く分からない。」


この状況、俺も良くわからなくなってきたぞ・・・。

もしかしてこの世界独自のルールがあるのかも知れない。

「あの、つかぬことをお聞きしますが、この国は一夫一妻制度ではないんですか?」

「一夫一妻ですか?確かかなり昔にそんな制度があったと聞いていますが今は普通に何人と同時に夫婦関係になっても問題はないですよ?」

「な、何だってーーーー!?重婚が認められているんですか!?」

「ああ、そうか。ススムさんはそういう人でしたものね。説明しますね。確かに昔は一夫一妻制度がありましたが、今はその時とは大きく事情が異なっています。」

「まさか・・・、人口減少ですか?」

「流石です。その通りですね。戦争や魔獣たちの被害により人口は右肩下がりです。それを解消するために一夫一妻制度は撤廃され、経済的に余裕があるのなら重婚は貴族だけに留まらず一般家庭でも認められるようになっています。というか経済的に余裕がある人はその方が『普通』だと思います。」


なんてこった・・・。

地球ではほぼどの国でもタブーになってた重婚がこの世界では人口減少が凄すぎるという理由から一般階級に至るまで認められているとは思いもしなかった・・・。


「いやでも、例えそうだとしても人間関係的に問題は発生しないのですか?」

「等しく愛情を注いでくれるのでしたら問題はないんじゃないの?」

アリスは平然と答える。


「うんうん。その通りですね。全く問題はないです。」

サーシャも同意している。


「ですが貴族社会だと第一夫人、第二夫人とか有りそうですよね?そういうのは?」

「それも昔の話です。跡取りの関係上、結婚した順番で序列が決まっていたようです。ですが今は完全に実力社会なので最初に結婚し、生まれた子よりも3番目に結婚し生まれた子が優れていた場合、その時その家を継ぐのは3番目の子になります。」

「なんていう実力社会・・・。」

「私は理にかなっていると思いますよ?だって一番最初の子がとんでもなく無能だったらどうしようもないじゃないですか。」

「う、その通りかも。でもそうするとサーシャさんは?」

「私は事情が事情だった上に『貴族』として優秀な上の兄達が居ますので。それに今の私があるのは『商人』としての私ですので。もし結婚して頂けるなら私は貴族の名は捨てますよ?」


平然とそう言い放つサーシャだが、短い間ではあるが付き合いがある今なら分かる。

この娘が言ってることは事実であり覚悟の上だ。

元より貴族として振る舞っている所は殆ど見たことがない。

恐らくそれは前伯爵であり実の祖父であるヴォルフガングも了承済みなんだろうと瞬間的に理解した。


「うーん・・・、うーん・・・。」

俺の今までの40年の倫理観をいきなり破壊するのは中々抵抗がある。

というか理解に苦しんでしまう状況だ。

だが、そんな俺を見かねたサーシャとアリスは「ふふ」っと笑い出す。


「ススム君らしいなあ。」

「そうですね。考えすぎですよ。」

「そうなのかなあ・・・。」

「ええ、もし私たちとそういった関係でお付き合いしていただいて無理だと思えば辞めればいいですし、受け入れてもらえれば私たちは何もしがらみなんて有りませんから。」

「そうそう、例えどちらか一人しか選ばなくなってそれはそれで受け入れるから大丈夫だよ?」


二人がそう言い合い、笑顔でいるのを見るとこの世界はそういう世界なんだと改めて痛感する。

二人はお互いに責め合ったりいがみ合ったりする様なことはしていない。

良き理解者であろうとしてくれている。

それならば俺も覚悟を決めるしか無いだろう。


「わかりました。まだまだ自分は若輩者ではありますがこんな自分でも良ければサーシャさんもアリスさんと同じ様に友達以上恋人未満の関係から始めさせていただいてもよろしいでしょうか?」

俺は手を差し出す。


「固より私はそのつもりでしたよ?」

そう言いながら笑顔でサーシャも俺の手を握り返してくれた。

こうして更に俺の人生の和の中にサーシャというもう一人の友達以上恋人未満という関係の人間が輪に加わることになった。


「では、私も客室に!」

「あんなに大きな屋敷を持っていて更に毎日の様に家に来てるんですからそれは駄目です。」

「えええーーー!!じゃあ、アリスさん!!抜け駆けは無しですからね!!」

「それはお互い様だね。サーシャさん。」

アリスとサーシャもガッシ!と強い握手をしていた。

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