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呪われた装備でハック&スラッシュ! ~異世界で神すら把握できないスキル使って呪い装備のコーディネートします~  作者: 馬ノ やすら
第二章~「商業都市オーロ・ヴァレンツ編」~

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【第58話】友達以上恋人未満

俺は状況が無事完了したことを確認し、隣りにいるカイエンに話しかける。

「ギルドマスター、僕はここから一時撤退する。後は頼んでいいか?」

「あ、ああ。事後処理は良いが聴取は取る必要があるぞ?どうする。」

「とりあえず今日は“いつもの宿”にいる。明日以降は一時帰宅し、1週間後にでもまた来るつもりだがそれでいいか?」

「“いつもの宿”・・・、ああわかった。それで良い。」

「じゃ、よろしく。」

俺はそう言い残し気配遮断を最大まで上げて『森の穴熊亭』まで帰宅することにした。

周りからはいきなり消えた!?等と声が上がっているようだが、やはり気配遮断を最大まで上げるとその様に見えるのかも知れない。


穴熊亭に戻ってきて気がついたが客らしき人達が居ない。

どうやら事態が事態なので臨時休業にしているのかも知れない。

俺はパックが居るのに気がついたのでパックの前に座る。

「ただいま。」

「ん?うお!気が付かなかったぞ!」

「あはは。まあそういうスキルだからね。それより店動かしてないの?」

「なんせ事が事だからな。」

「まあ、街が潰れるかどうかの話だったみたいだしね。」

「ああ。だがお前がここに帰ってきたってことは・・・。」

「問題は解決、かな?」

「はあぁぁぁぁーーー。良かったあ。」

パックは心底安心しているようである。

「パック、今日もし余裕あるならこれから少しでも営業したほうが良いかも知れない。」

「なんでだ?」

「こういう日の食事は特に記憶に残る。宣伝には持って来いだろ?」

「・・・!」

俺の一言で言いたいことが伝わったようでパックは迅速に忙しなく動き出す。


「これで良し。」

「・・・良くない。」

「うお!びっくりした!」

いつの間にか目の前には不機嫌そうなアリスが居た。


「ススム君とはこれからお話です。」

「店は手伝わなくていいの?」

「“お陰様で”大繁盛してて店員はかなり補充できたからね。」

「そっか、じゃあ一目に付かない方が僕的には助かるので庭にでも下がろうか。」

「ん、わかった。」


そうして俺は穴熊亭の裏庭にいつも持っていた野宿用時に使う机と椅子を出す。

用意している最中にパックもやってきた。

「あれ?パック、店の準備は?」

「今じゃ俺が居なくてもこの店は十二分に回るくらい人材が育成できたもんでな、“お陰様で”。」

「そっか。」

「そっかじゃねえ。なんでお前はあんな手紙一通で出ていったんだ?」

「そうだよ!私なんて、私なんて・・・。」

「申し訳なかった。」

俺は即座に言い訳もせず頭を下げ謝罪する。


「・・・。理由を聞いても?」

「・・・。話すべきだろうね。」

そうして俺は話をところどころ誤魔化しながら過去の体験として人付き合いの煩わしさを感じ今回も結果として逃げ出すような形になったことを話す。

日本で暮らしていた時はこれで人との距離を取ることが出来ていた。

少なくとも現代日本は『そういう社会』だった。

だがこの世界ではそれは裏目に出るということを思い知った。


「なるほど。ススムにはススムなりの理由があったってわけか。」

「まあ・・・、ね。でも今回はそれが裏目に出てしまった。少なくとも二人には筋を通しておくべきだったよ。」

「それが理解できたんならよろしい。」

「本当に、アリスは特に大変だったからな。仕事に力が入んなかったり、ボケーっとしたり。友人たちが色々と良さそうな奴らを紹介してくれたんだけどどれもお断りだったしなあ。」

「パパパ、パック!余計なことは言わないでいいの!!」

「余計じゃないだろう。これは重要なことだ。ススム聞いてくれ。お願いがある。これはコイツの兄としての願いだ。」

そんな事を言われたので俺は自然と背筋を伸ばして聞く姿勢を取る。


「・・・どうぞ?」

「アリスを嫁に貰ってやってくれねえか?」

俺はそれを聞き口をぽかーんと開けてしまう。

アリスはそれを聞き、下を向いている。


「・・・へ?」

「お前だってどんなに鈍感男だって言ってもコイツの気持ちぐらいは理解してるんだろう?」

正直全く理解していないかと言われればそれは嘘になる。

だけどそれは今まで人生40年以上ろくに恋人も居らず独身貴族をしてきた自分にアリスの様な美少女で器量良しの相手は務まらないと考えていた。


「いやいや、アリスさんには俺は不釣り合いでは?」

「どこがだ?お前ほどの人間は逆に俺は見たことねえが?」

「・・・そうなの?」

「「はあ・・・。」」

二人が一斉にため息を吐いた。


「・・・アリスさんは本気なの?こんな僕が良い訳?」

アリスは無言で顔を真赤にして俯きながらコクコクと小さく頷いている。

ま、まじ?

いや、嫁って・・・。

まともに恋人すら出来たこと無いのにどうしたもんかなこれ・・・。

いや、俺も決してアリスは嫌いな訳では無いし、むしろこんな娘は理想な嫁になりそうな気はする。

だが結婚なんて考えたこともないのだ。

それに自分はいつも危険に身を置く冒険者でまた何処に行くかもわからんような人間だ。


「自分は今まで結婚はおろか禄に恋人すら出来たことがない人間で人とお付き合いするというのが理解できてない人間です。それに自分は冒険者であって、危険に身置く人種でしかも依頼次第じゃ同じ拠点に居続けるというのも難しいかも知れない。それでも良いの?」

「ススム君の仕事の事は理解しているよ。それこそ、ススム君が居ない間に嫌というほど思い知った。」

「じゃあ、なんで?」

「だからこそ、支えてあげたいと思った。」

「うぐう!!」

女性からそんな事を言われたことがなかったので今の一言はとてつもなくときめいてしまった。


「う、うーん・・・。でも流石にいきなりお嫁さんは正直自分も実感が持てない・・・。友人以上恋人未満位の関係から始めない?」

俺は精一杯頭を捻って妥協案を出した。

「お前な、これだけの事態なのに恋人にすらならないのか?」

「恋人すらまともに作ったこと無い人間に無理言うなよ!!」

「はあ、全く。こういう所は臆病なんだな。」

「臆病で悪いか。それこそ、こういう事も理解してくれない相手じゃないと僕の相手は無理だぞ。」

「私はそれでも構わないよ!それなら時間を掛けてどんどんステップアップすればいいだけだもん!」

いつも思うがこの娘とんでもないポジティブだよなあ・・・。


「それに今ススム君の拠点って、オーロ・ヴァレンツなんだよね?」

「うん?そうだけど。」

「ならちょうど良かった。実は他の街にも森の穴熊亭を作ろうと思ってたんだよ。」

「えええ!そんなにこの店大きくなってるの?」

「ああ、お前の助言のお陰でな。それに人材育成もかなり進んでいてこの街から出たいという人間も居る。」

「ふーむ・・・。」

俺はアリスの事をちらっと見ると、ニコッといつもの元気な笑顔で返してくれる。

ぐう!あんな事言われた後じゃ気になってしまう!!

これが人生でまともに女性と付き合ったことがない男の反応なのか!!


「わかった・・・。じゃあアリスさん。最後の確認だけど本当にそういう関係からで良いんだね?」

「勿論!願ったりだよ!!」

「じゃあ・・・。よろしくお願いします。」

俺はそう言い手を差し出すとアリスは手を握り返してくれる。

「よろしくね!ススム君!!」


こうして俺の人生の輪の中に一人、友達以上恋人未満という新しい関係の人物アリスが加わることになった。

「よし、じゃあ早速準備してくる!!」

「準備って何を?」

「当然!オーロ・ヴァレンツで住む準備だよ!!」

「ああ、そうか。そういう準備か。そういや、館に使ってない客室一杯あったな。そこで良いなら住む?」

「良いの!?」

あ、気軽に言ってしまったがそれってひとつ屋根の下に住む関係になるのか?

あああーーーー!!

だがそれを聞いたアリスはルンルン気分だ。


「お前、度胸なしとか言いながら早速そこまで駒進めるとか変な野郎だな・・・。」

「う、うるさい!言ってから気がついちゃったんだよ!」

「あれはもう止まらねえぞ。」

「・・・その様で。」

「それにしてもオーロ・ヴァレンツか。遠いな。」

「確かにね。でもあの魔道具のお陰で一瞬だよ。」

「ああ、あの変な石か。」

「必要に応じてこっちに戻ってきたり、オーロ・ヴァレンツに連れて行ったり出来るから。」

「ならまあ、安心か。でも良かった。俺は本当にあの魂の抜けたようなアイツが心配だったんだ。」

「そんな酷かったんだ。悪いことをしたな。」

「そう思うなら埋め合わせてやれ。」

「・・・わかったよ。」

「うし!それじゃあ今日はしばらくぶりの森の穴熊亭サンドでも食っていくか?」

『お肉なのー!!!』

「ああ、頂いていこう。」

「そうだ!ススム君!これ!」

アリスよりぽいっと投げられたものをキャッチし手の中のものを見るとあの部屋の鍵だった。

「おかえり!」

「ただいま。」

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