【第52話】商人の裏の顔
俺は今日の唯一の戦利品である恐らく呪われていると思われるダンジョンのピースを片手に家路についた。
「ただいまー。」
『おかえりなさいませ。ススム様。』
「ただいま、フィルル。あの三人娘達は帰った?」
『はい。お風呂に入って気持ちよさそうにした後気分良さそうに帰っていきましたよ。お掃除も済ませているのでもし今日もお風呂入るのでしたらば大丈夫ですよ。』
「そうしようかなあ。ダンジョンで汚れてるし。」
『では準備いたしますね。』
そうして俺はフィルルと共に準備をした風呂にゆっくりと浸かる。
「ふー。生き返る。それにしてもここに来てLUKの問題が出てくるとはな。」
俺の予想では恐らくLUKは下がりすぎると経験値及び戦利品のドロップ率の低下に繋がっているのではないかと考えた。
現状でLUKは『太陽落焔の杖』を装備するとLUK:-37というとんでもない事になっている。
思い返せば『太陽落焔の杖』をまともに装備して【呪われていない】通常のダンジョンを踏破するのは初めてのことだった。
それ故試行回数も圧倒的に少なく、結論とするのは時期尚早かも知れない。
だが可能性としてはありえなくはないと感じた。
幸運なことは単純にLUKが低い=不運に巻き込まれると言った構図では現状無いということだった。
だが何故、フィルルを助けたこの館のダンジョンでは攻略完了時にレベルが上っていたのか?
恐らくだがLUKのマイナスは【呪われた】ダンジョンでは何らかの法則により無効化されているのではないかと考えた。
そうなってくると今後の対応策は二つ。
1、通常ダンジョンで試行回数を熟し、LUKと経験値、戦利品について確定させる。
2、【呪われた】ダンジョンに突入し、LUKと経験値、戦利品について確認する。
1については問題ないだろう。
今週今後は毎日ダンジョンに行くことにして確認すれば良い。
正直適正レベルであれば問題なく単独で攻略できることは確認できた。
問題は2だ。
【呪われた】ダンジョンのピースは存在するのはわかっている。
現に今日手に入れたダンジョンのピースも恐らく呪われているのだろう。
問題は入手方法だ。
今回のように通常ダンジョンをクリアした報酬で手に入れるか、または裏のルートを頼るか。
裏ルートについては恐らくサーシャを頼ればいいだろう。
だが裏ルートに頼りすぎると『聖教会』が絡んでくる可能性が極めて高い。
どの世界、どの時代もそうだが宗教というのは得てして関わると大変な目に合うことが多い。
なるべくなら関わりたくない組織だろう。
俺は風呂から出て着替えを済ませる。
風呂の処理はフィルルがしてくれるということなので頼んでおく。
まあ、とりあえずは今週はダンジョンだな。
そうして俺は翌日再び朝一番でダンジョン屋に行きピースを得てダンジョンに潜る。
結果としてはやはり昨日と同じで経験値は無し。
戦利品は最後にダンジョンのピースが1個手に入っただけだった。
ダンジョンから出てきた時刻は今日はかなり早く昼前だった。
なので最近かなりのペースで消費しているハーブ類の採取とともに早速薬草類の採取を久しぶりにすることにする。
オーロ・ヴァレンツ周辺はミストヴェイルほど緑が豊かでなかったがそれでもやはり採取する人間が少ないのか小1時間ほどでハーブと薬草類は最初に貰った収納鞄に一杯になるくらいは手に入る。
俺はそれを持ち冒険者ギルドに行き、受付嬢に話をする。
「こんにちは。少しお尋ねしたいんですが、ギルマスのアウレリアさんから薬草類についてのお話は何か聞いていますか?」
「もしかして、四角銀級のススム様でしょうか?」
「ええ。ご存知ということは話は通っていると考えても?」
「はい。伺っております。そのまま商業ギルドに行き、ミストヴェイルと同じ様に処理をするようにとギルマスより伺っております。」
「分かりました。では商業ギルドに行ってきますね。」
俺は早速商業ギルドに行き、身分証を提示すると話が通っていたようで時を止める収納鞄担当者のところまで案内されたので今日の収穫分を預ける。
「話には聞いていましたが、本当に凄い多さですね・・・。」
「あはは。まあこれで助かる人がいるのでしたら。今後可能な日はこのくらいの量を持ってきますので今後とも宜しくお願いしますね。」
「畏まりました。」
俺が商業ギルドから出ると待ち構えていたようにサーシャが居た。
「薬草類の納品、ここでもすることにしたんですね?」
「良く見てるなあ。サーシャさんは?」
「お仕事です!」
「それもそうか。ここは商業ギルドですしね。」
「ふふ。正直にススム様を待ってたーって言えばいいのに。」
ナナリーがそんな事を言っているとサーシャが照れている。
「今日は何だって僕のことを待っていたんです?」
「【呪われた】ピースについて、ですかね。」
「な!?」
なんでこの娘は俺の考えがここまで読めるのだ!?
「ふふーん。ススムさんのことはお見通しです!」
そうして姿勢を正したサーシャが雰囲気を変える。
「本日はこの商人サーシャがお客様のご所望の特別な商品をご用意させて頂きます。」
そうしてサーシャから放たれた雰囲気はいつもの残念美少女では無く、完全に商人としてのオーラを放っていた。
「さっ、行きましょうか?」
そうして俺はサーシャに連れられてサーシャの屋敷に行くことになる。
「なんだってここに?」
「単純にこの屋敷が商談の場所だからですよ。」
そう行って通され見慣れた屋敷の中で今日は一部が違っている。
「これって・・・。隠し扉?」
「その通りです。私が扱っているものは決して人から見て良いものではないですからね。なのでこうして隠し部屋を作っているわけです。」
「はあ・・・。すごい。本当にこんな部屋存在するんですね。」
「うん?多分ですがススムさんの館にもあると思いますよ?フィルルに聞いてみては如何ですか?」
「あ、それは盲点でした。帰ったら聞いてみますね。」
そうして通された隠し扉の中は一種の店のようになっており、雰囲気としてはかなり明るく整頓された商店のようになっている。
だが扱っているものは恐らく全て【呪われた品物】なんだろう。
「よくもまあ。こんなに集めたものですね。」
「何事にも需要はありますし、当然供給先もあるんですよ。」
「無料で処分すると言っていた【呪われた】ダンジョンのピース、とかですか?」
「正解です。」
やっぱりそうか。
無料で引き取ると入っていたが個人的にほぼ必ずどこかに流通させているとは思っていた。
「数はどれくらいあるんですか?」
「うーん、実は扱っては居ますがそんなに数は少ないんですよねえ。」
「何でですか?」
「単純に【呪われた】ダンジョンのピースは数がそんなに多くはないんですよ。」
「ふむ・・・。実は今僕は2個のピースを持っているんですが見ていただいても?」
「ええ。勿論!」
そして俺は通常のダンジョンから手に入れたピースを見せるとサーシャは興奮している。
どうやら紛れもなく呪われているようだ。
「これはどうするおつもりで?」
「自身で使うつもりです。」
「流石ススムさん!」
何が流石なのかは良くわからん。
「ちなみに何ですが、こういった商品ばかり扱っていると『聖教会』が絡んできたりしませんか?」
「お、良くお気づきになりましたね。確かに『聖教会』には注意を払ってますよ。」
「やっぱりか。ではどうやって商売しているのですか?」
「ふふふ。企業秘密です!」
この娘・・・。
「まあ知らないほうが良いこともありますからね。」
「・・・それはそうかも知れないですね。」
「さて、商売のお話です。セリルー。」
「はい。サーシャ様。」
そうしてセリルは厳重な箱を持ってくる。
持ってきた箱の鍵をナナリーが開けると中にはダンジョンのピースが幾つか入っている。
「さ、何か気になるものがあれば取引しましょう!」
こうして【呪われた】商人サーシャとの取引が始まる。




