【第46話】フィルルと転移陣
俺は早速新たなこの拠点に居を移すことにする。
「ススムさん!後一泊だけ!一泊だけでいいですから泊まっていってください!」
サーシャがそんな事を言っているいるが俺的にサーシャの家に泊まる理由がなくなったので即却下する。
「元々は最初の一泊だけだったんですし、俺は客人ですからね。家が手に入ったらそちらに行くのは当然では?」
「ぐぬぬー。じゃあ今度遊びに行きます!」
「はあ、まあ綺麗に掃除が終わったら来て下さい。」
「やったー!」
「ではセリルさん、ナナリーさんもお世話になりました。」
「とんでも有りません。こちらこそ本当にお世話になりました。」
「サーシャ様は私たちで止めて置くのでごゆっくりー。」
「では。」
俺はサーシャ達を見送り家の中に入る。
「あー、本当にこんなでっかい家を俺が持てるだなんてなあ。」
日本で住んでた家は本当に必要最低限の部屋しか無い賃貸アパートだった。
それが今やこんな豪邸の主となってしまった。
実感無くボケーっと突っ立っているとおずおずと家守妖精がやってくる。
『あ、あの?御主人様・・・、でよろしいんですよね?』
「うん?ああ、ごめんよ。ちょっと現実離れした雰囲気にボーっとしていた。それにしても御主人様はちょっとむず痒いな。改めて自己紹介しようか。俺はススムだ。可能ならススムと名前で読んで欲しい。」
『あ、私はこの家の管理をしていました家守妖精です。』
「名前は?」
『名は有りませんでした。そもそもこの家の住人たちと会話できたことが有りませんでしたので。』
「そっか。じゃあまともに話ができるのは俺が初めてというわけか。」
『はい。』
俺はうーん・・・、と悩む。
『どうかなさいましたか?』
「いや、どうせなら名前つけたほうが家族っぽいなと思って・・・。そうだな妖精だしそれっぽい感じで『フィルル』はどうだい?」
『フィルル・・・。それが私の名前ですか・・・?』
「気に入らない?」
『いいえ・・・!気に入りました!私はこの家の家守妖精、フィルルです!宜しくお願い致します。ススム様。』
「ああ、よろしくね。フィルル。」
自己紹介をし合っているとポチがフードから飛び出してくる。
『ポチはポチなのー!』
『ポチですね。私はフィルルです。よろしくお願いしますね。』
『よろしくなのー!』
こうして俺は二人目の新しい家族であるフィルルを迎えることになった。
「それにしても家守妖精って基本的にどんな妖精なの?」
俺が腰を落ち着けながらフィルルに聞くとフィルルは丁寧に答えてくれる。
『この家の管理が主なことです。掃除もさせて頂きますし多少なら料理もできます。』
「ええ!?フィルルそんな事もできるの?」
『はい。ですので早速お掃除に取り掛かりたいのですが。よろしいですか?』
「構わないけど道具や集めたゴミはどうするの?」
『それは問題有りません。家守妖精専用の魔法がありますので。』
「はー、そうなんだ。それじゃあ・・・、とりあえず今日はこの部屋で寝るから台所から初めてもらっていいかな?台所が綺麗になれば料理も出来るだろうし。」
『ススム様がお作りになるので?』
「料理は得意でね。今度一緒につくろうか。」
『是非!』
そう言い、フィルルの顔に笑顔が見られる。
「フィルル、俺はちょっと手続き関係で役場に行ってくるので任せても大丈夫かい?」
『はい!お任せ下さい!』
「じゃあ頼んだ。ポチはどうする?」
『行くのー!』
「んじゃ散歩がてら行こうか。」
そうして俺は早速ラウルさんに教えてもらった税の納入場所になる役所を教えてもらっていたので、今回の契約した書類とともに役場に行く。
それにしても本当にこの街は商業都市と言うだけあって非常に商店が多く並び活気がある。
ミストヴェイルの街だけでも見たことがないものだらけだったのにこの街は遥かにそれを超えている。
「うーむ。まともに見てたらそれだけで人生終わりそうだ。」
商店見てるだけで終わる人生とかそれはそれで幸せなのかも知れない。
暫く散策しながら歩くと当初の目的地である役場に着く。
やはり栄えている都市なだけあり、役場もかなり豪華な作りだ。
「ポチおいで。」
俺はポチをフードに入れ役場へと入る。
「うわ、やっぱどの世界でも役場ってこんな感じなのか?」
窓口がたくさんあり、各課によって詳細に分かれているような様相だった。
俺が困っていると一人の職員の方が声を掛けてくれる。
「お困りですか?」
「ああ、職員の方ですね?ええ、実は新たにこの街に居を構えることになりまして。その手続と税関係を処理したいと思ったのですが。」
「なるほど。ではご案内しますね。」
そうして俺は居住を構える手続きを行うがここで、この街でもそこそこ有名だった幽霊屋敷に入居するということに加え俺のようなものが本当に住めるのかと職員に訝しがられてしまう。
そのため俺はラウルさんより渡されていた正式な委任状と共に四角銀級の冒険者証と銅級の商業者登録票を提出する。
「こ、これは失礼しました。直ちに処理させていただきますね。」
うーむ、こういった場合やはり公的身分証があるのはかなり大きい。
しかも冒険者証に至っては四角銀級だ。
文句の付けようも無いだろう。
「お待たせ致しました。ではこちらが正式にススム様が該当の屋敷の世帯主となったことの証明書です。決して紛失なさらないよう管理には気をつけてくださいね。」
「分かりました。そう言えばこういった書類を整理出来るような文具って無いんですか?」
俺は奥で作業していた職員たちを見てやたら乱雑に積み上がっている文章類を見て思った。
「あはは、そんな物があれば良いですねえ。」
あ、これは無いということだな。
「ですよねえ。あはは。」
俺はそう話を合わせ切り上げた。
「次に税関係ですが、こちらが提出して頂く書類になります。こちらの提出していただいた書類を元に算出し、後日郵送でお送りいたしますのでそれを持って税の納金をお願い致します。」
「分かりました。」
ふーむ、これもやはり地球の確定申告に似たようなものだな。
だが不思議なのは稼いだ金額を書く場所がない。
「あの?こちらに今年稼いだ金額を書く場所が無いようなんですがそれは?」
「ああ、それはですね。ススム様は冒険者及び商人として登録されておりますからその情報を問い合わせて正確な収入をこちらで把握することにしております。」
「なるほど。不正防止のためですね。まあこちらとしても助かります。」
「ご理解いただけたようで感謝致します。」
こういった場合でも冒険者と商業各ギルドのネットワークは機能するんだな。
確か完全に独立した組織と言っていた気がするがまあこの辺は帳尻合わせしてるのかも知れないな。
「以上となります。ご質問は?」
「いえ、特には。では。」
こうして俺は役所への提出も終え正式に商業都市オーロ・ヴァレンツ市民ということになった。
そこそこ時間掛かったなあ。
まあそれでも大分日本にいた頃よりは簡略化されてはいたが。
俺は帰りにリンゴのような果物を進められ、試食もさせてもらえたが非常に美味しかったのでそれを土産に家に変えるとなんということでしょう!あんなに荒れ果てていた庭がとんでもなく綺麗になっていた。
「う、嘘だろ?」
『ススム様!お帰りなさいませ!』
「ただいま、フィルル。随分頑張ってくれたようだね。」
『頑張りました!さ、どうぞ。』
そうしてフィルルに案内され中に入ると更に驚愕する。
とんでもない年月放置されていたことにより埃で塗れていた家の中もとんでもなく綺麗になっている。
「ええええーーー!!」
『どうかなさいました?』
「いや、これ全部一人でやったの!?」
『頑張りましたので!』
「あはは、フィルルは凄いな。」
俺はそう言いフィルルを撫でてやると嬉しそうにしている。
『あ、ずるい!ポチも撫でて!』
「はいはい。ポチもいい子でした。」
『うへへー。』
「それにしてもこれが家守妖精の力なんだなあ。びっくりだ。」
『お掃除は得意ですので。あ、それとベッドは変えるということでしたので元あったベッドは仕舞っておきました。必要でしたら出しますのでお声掛けを。』
「と言うと収納鞄みたいなものか?」
『この家の敷地内限定のものになりますがその様な認識で大丈夫です。』
「なるほど。そういえばフィルル、この果物食べれる?」
『果物はなんでも大好きです!』
「あはは、妖精らしい。お土産で買ってきたから皆で食べようか。」
そうしてフィルルにお土産の果物を渡すと一瞬で切り分けられる。
「おおー。凄い」
『えへへ。』
「ゆっくり食べてな。ポチもだぞ。」
『『いただきまーす!』』
それにしてもこんなに一瞬で片付いているのは想定外だ。
もっと時間がかかるかと思っていたが杞憂に終わったらしい。
それに元々の所有者が飾っていたのであろうアンティーク類も埃や汚れが取り除かれ綺麗になっている。
これなら処分すること無く飾っていても全く問題はないだろう。
俺達は果物を食べ小休止した後、改めてルームツアーをする。
リビング、キッチン、客間、そして各部屋も非常に綺麗になっている。
ベッドルームは非常にシンプルで飾り物も少なく俺の要望通りベッドがあった所だけすっぽりと消えている。
明日にはこの大きさのベッドを買ってくるかな?
かなり大きなものになりそうだが。
そしておれはある部屋に目が留まる。
うん?この部屋タイル張り・・・?
「フィルル、この部屋は元々なんの部屋だったの?」
『ここは元々浴室が有りました。ですが浴槽は木造で既に腐ってしまっていたので処分し、この様に部屋だけが残っている状態です。』
「浴室ー!?という事は風呂か!」
『そうですね。前の主人がお風呂好きでわざわざこの部屋だけ改修して今この様になっています。』
前の世帯主に感謝!これは早急に浴槽を準備せねばいかんな。
それにしてもどうやって湯を張るのだろう。
「お湯はどうやって準備するの?」
『この部屋から直接外に出られるのでお外で湯を作り準備しておりました。』
「それ大変じゃない?」
『う、確かに大変でした・・・。』
「ふーむ。要検討だな。」
『あ、でも外の死んでしまっていた井戸については復旧しておりますのでいつでも井戸水は汲めますよ!』
「すごいな、フィルル。」
『えへへ。』
一通り部屋を見終わり俺は客室に戻ってきた。
「いやあ、この内容であの値段。しかもフィルルも居てくれるとか破格すぎるな。」
『お役に立てたようならありがたく思います。』
「立ってる立ってる。今後この家を管理するにはフィルルは必須だよ。」
『御主人!そう言えばあのでっかい石は何?』
唐突にポチがそんな事を言い出す。
「でっかい石?ああ、あれかあ。」
俺はフィルルを救助した際のあの黒いモヤが落とした謎の扉の形をした石が戦利品であることを思い出した。
「よっこいしょ。」
俺はそう言いながら、その石を取り出し触る。
すると突然【システムメッセージ】が発生する。
「は?」
『転移陣を設置を確認しました。』
転移陣だと!?
この石が転移陣の起動様のアイテムだっていうのか!?
【ハックアンドスラッシュ】のゲームでは色々な場所に赴き、一つの場所を何度も周回しそして集めた戦利品をアレヤコレヤと見比べるというのがお決まりだ。
まさかこんな所でその要となる転移陣が手に入るとは思ってもいなかった。
だが待てよ?この世界には道具用の転移陣の魔道具が存在する。
まさかでかいだけの道具用の転移陣の魔道具ってことはないよな?
そうして俺は再度その転移陣を触ると以下のメッセージが表示される。
『現在転移陣に登録されているされているのは以下の街。』
・ミストヴェイル
・商業都市オーロ・ヴァレンツ
『初めて転移陣に登録したため、帰還の魔法を習得しました。』
そうして俺の脳内に強制的に『帰還の魔法』の呪文が刷り込まれる。
「まじか・・・。」
俺はただただ驚く。
『帰還の魔法』を覚えたということはこれは『物』ではなく『使用者』を輸送する本物の転移陣だ。
転移先に『ミストヴェイル』があることで実験しようかとも考えたがまた人間関係で面倒くさいことになるのも少し気が引けたので今回は控えておくことにした。
しかしこれがあれば、今後どんなに遠出したとしても一瞬で拠点であるこの街に帰ってこれる。
もし俺が嗜んでいたゲームと同じ仕様なら、一度戻ってきたとしても再度この転移陣に突入すればその移動先に瞬時に移動することが可能となるはずだ。
究極のファストトラベル装置を手に入れることが出来、俺は大満足の結果となる。
いやあ、なんか順調すぎるが故に今後注意しないと痛い目見そうだなと思う。
なんせLUKが異常にマイナスだしね・・・。




