【第44話】館のダンジョン
「こちらが今回ご紹介させて頂く館となります。」
ラウルが紹介してくれた館は街の外れにあるが立派な屋敷であった。
ただやはり、人が住めない状態となってから長い年月が経っているからだろう『幽霊屋敷』と言われても可笑しくないような佇まいとなっていた。
俺達が館の敷地内に入った時だった。
それは聞こえてくる。
「出ていけ・・・!立ち去れ・・・!」
「え?」
「今の声は?」
「出ていけ・・・!立ち去れ・・・!」
どうやら屋敷全体から聞こえるような声であった。
その声に従い、一時的に敷地外へと出る。
するとその声は聞こえなくなる。
「この様に何ともわからない声が聞こえ、更に無茶に侵入しようとするものは拒まれます。」
「それ故、長年放置される結果になったわけですね。」
「ええ、その通りです。」
「ススムさん?どうでしたか?なにか分かりました?」
そうしてサーシャは笑顔で俺の顔を覗き込んでくる。
「全く僕が何でもかんでも分かるわけ無いでしょう。ただ対処はできそうですが。」
「流石です!」
サーシャは目を輝かせている。
「おおお、ではお任せしても?」
ラウルは驚いていたがやはりこの館をどうにかしたいようだ。
「ええ、今日は準備をするとして明日一人でここに来たいのですが任せていただいても?」
「勿論です!」
そうしてこの場は解散となり俺は明日、この『館のダンジョン』を攻略する為の準備に入る。
何故この館が呪われているのかはわからないが現時点でわかったことが二つあった。
1つ目は声である。
「出ていけ・・・!立ち去れ・・・!」と聞こえていたが俺には言語理解が発動したのか『助けて!』と言っているように理解できた。
2つ目は呪いが『ダンジョン』であるということ。
というのもあの敷地に入った瞬間、【システムメッセージ】が発動した。
内容はこうだ。
『ダンジョンの入口を発見しました。』
名前:“暗闇に” “囚われし” “妖精の” ダンジョン
推奨レベル:25
『ダンジョンに侵入しますか? はい/いいえ』
ということで、あの屋敷の呪いは『ダンジョン化』しているということが理解できる。
ならばサーシャの件と同じ様にダンジョンを攻略すれば解呪できるはず。
俺は“暗闇”と入っていることからダンジョン内に以前とは違い光が余り指してはこないのではないかと思い、サーシャに明かり関係の魔道具などがないかを聞くと魔道具のランタンがあるということでそれを購入する。
更にまたダンジョン内の時間がどの様に変化しているかわからなかったため、時を止める収納鞄に可能な限り食材を入れる。
今日も準備で時間が潰れてしまい宿などが取れなかったため、致し方がなしでサーシャの家にお世話になることになる。
「やはりあの呪いはダンジョンでしたか?」
夕食を食べているとサーシャが唐突に聞いてきた。
「その様ですね。なので時間関係がどうなっているのかわからないのですぐに出てくるかも知れないですし、下手したら数年出てこないかも知れないですよ。」
「それでも私たちは無事をお祈りしてお待ちしておりますからね。」
真剣な表情で言ってくれるのは有り難いが昨日のこともあるしなあ・・・。
一応今日は本気で支度をしたいため釘を差すことにした。
「昨日何やら物音がしてたんですが今晩は本気で支度をしたいため静かな夜になることを祈って休むことにします。」
「ふふ。そうですか。わかりました。ネズミが出たら私が退治しておきます!!」
そうやってガッツポーズをしているサーシャだが、そのネズミはお前じゃないのか・・・?
「はあ、よろしくお願いしますね。」
「任されました!」
そうして俺とポチは部屋に帰り早速『スキルツリー』を見る。
現状で余っているSPは6ポイントだ。
だが、現状の装備で太陽落焔の杖を有効に使うとすれば間違いなく【特殊魔法】は必須だ。
そうして俺はバランス型で以下のようにスキルを振る。
1、『メテオフォール【LV3】:火属性の特殊魔法。範囲攻撃であり広範囲の目標に対し隕石が降り注ぐ。着弾時に炎上効果を発生させる。威力が最大まで強化され、詠唱時間の100%を短縮する。消費MP30。再使用間隔120秒。この魔法は現在最大LVである。』
2、『メテオフォール【性質強化】:メテオフォールの性質を変化し強化する。メテオフォールが一回の発動で三体以上の目標に命中した場合、更に50%の確率で追加のメテオフォールが発生する。』
3、『メテオフォール【最終強化】:メテオフォールの性質を更に変化し強化する。メテオフォールの着弾位置に大きな衝撃波が発生し、メテオフォールの1/3の追加ダメージ及び、行動不能の状態異常を発生させる。』
4、『MP回復量上昇(LV2):MPが回復する効果値を2上げる。この効果は最大でLV3まで強化できる。』
今回から、バランス型ビルドにおいては最初から愛用してきていた銅の短剣が使えなくなるため保険としてMP回復量も上げておく。
「これでよし・・・。」
俺はスキルツリーと装備を何度も見直し、しっかりと呪われた三面鏡で装備とスキルツリーの更新も行い準備万端となった所で寝ることにした。
「わざわざ見送りなんて来なくてもいいのに。」
「次会えるのがいつかわからないじゃないですか?」
そういってわざわざサーシャ達が俺を館前まで見送りに来てくれていた。
「はあ・・・。行ってきます。」
「いってらっしゃーい。」
俺が敷地内に侵入するとまた声が聞こえてくる。
「出ていけ・・・!立ち去れ・・・!」
「悪いな。そう言われて素直に出ていくわけには行かないんだ。今『助けてやる』からな。」
「!?」
そうして俺はダンジョンへと侵入する。
ダンジョン内部は明かりはなく薄暗い上に視野が悪い。
「ふーむ。こう来たか。」
色々な部屋に出入りすることは出来るようになっている上に廊下を進むことが正解ではない、所謂『迷宮型ダンジョン』の様になっていた。
本来であればここは探索型の様な冒険者が適任なのだろうが俺にはそんなスキルはない。
多少時間は掛かるが確実性を取ることにする。
俺は防御型にビルドを切り替え、こんなときのために覚えていたレベルを1だけ振っていた土属性基本魔法、『ストーンアロー』を適当な所に発射する。
勿論適当に発射している上に敵対反応もないので壁にぶつかりストーンアローはあっけなく霧散するが、本命はストーンアローを発射したことによる副産物だ。
二体の土属性の大型狼が顕現し、更には土の防壁が自身を守る。
「さあ、俺を案内してくれ。」
俺がそう二頭の狼に声を掛けると意図を理解したのか迷宮型の作り謎お構い無しに歩を進める狼たち。
敵対するモンスターも出てくるがそれもお構い無しに各個撃破してくれドンドン進む。
一定の時間が経てば自然消滅してしまうので再使用間隔が発生した際は休憩しMPを回復しながら再度ストーンアローを発射し体制を立て直し徐々に進んでいく。
ある所で狼二頭がピタリと止まり何かがあることを教えてくれる。
「うん・・・?これは。罠か。」
俺がそう言うと狼達は嬉しそうに尻尾を振っている。
なるほど。
罠まで発見してくれるとはこの狼たち、想像を遥かに超え使い勝手が良いのかも知れない。
今後は探索型としてもう一つビルドを増やすのも有りかも知れないなと考えているとどうやら主部屋の前まで来たようだ。
「今回は迷宮型だからかやけに距離は少なかったな。まあ狼達の力のおかげではあるな。」
俺は準備を万全にし土の防壁を張り直し部屋に侵入する。
そこには一体の妖精と黒いモヤが生き物になったような不思議な者が居て、その黒いモヤが妖精を拘束しているように見える。
「なるほど。お前が原因だな。」
『・・・あの短時間で何故ここまでたどり着くことが出来た?』
「俺には優秀な道案内が居るんでね。」
『何!?』
俺の意図を読んだ一頭の狼は黒いモヤに飛びかかり妖精の拘束を解き、更にもう一体の狼は妖精を加え俺のもとに連れてきてくれる。
「もう少しの辛抱だ。待っていてくれよ。必ず助けるからな。」
『あ・・・、貴方は・・・。』
俺はここで新しく更新されたバランス型ビルドを試してみることにした。
装備とビルドを交換することにより黒いモヤに飛びかかっていた狼は突如消える。
『い、一体何だ!?』
「何だって良いだろう?お前には関係のない話だ。」
『紅蓮の理よ、我が掌に!――ファイアボール!』
そうして放たれたファイアボールは一直線にその黒いモヤに向かい直撃する。
『がっ・・・!』
そしてファイアボールが着弾した瞬間それは振ってくる。
部屋一面が炎の色で明るくなったかと思えば天井の様相が代わる
『な、何だ・・・!』
あ、これヤバいパターンかも。
そう思っていると無数のメテオフォールが黒いモヤ目掛け降り注ぐ。
その破壊力は凄まじいものでそこそこ距離は離れてていたつもりだった俺にも衝撃波が飛んでくる。
ダメージは無いがまともに動けない。
「うわわ!」
俺は咄嗟に妖精を庇いメテオフォールが収まるのを待つ。
暫くするとなんとかやり過ごせたようだが、この魔法は屋内禁止にしたほうが良さそうだ・・・。
館の部屋だったと思われる空間はグシャグシャになっていた。
「ポチ大丈夫か?」
『げほ!げほ!すごい煙なの!』
「君も大丈夫か?」
『え、ええ・・・。』
「それは良かった。」
『あ、見て!御主人!なんか落ちてるよ!!』
ポチが興奮して見ている先には一つの大きな扉の形をした石の彫刻が落ちていた。
「なんだこれ?まあ、いいや。回収しておくか。」
そうして俺は収納鞄にそれを仕舞うと、やはりダンジョンの崩壊が始まる。
『こちらです!』
束縛から解き放たれた妖精が俺達を一つの扉の前まで連れてきてくれた。
その扉を開くと一瞬強い光が有り、俺達は館の外の裏庭当たりに放り出されていた。
「ふう。帰ってこれたようだな。」
どうやら今回は時間の経過が起きていたようで、日が傾きつつ有り時刻はお昼ぐらいになっていた。
『助けてくださりありがとうございました。』
妖精は俺を見て礼を述べる。
「良いんだよ。君が無事で何よりだ。ところで君は・・・。」
『この館の管理をしていた家守妖精です。』
「そうか、君が。とりあえずこの館が解放できたことを知らせるので俺は一旦離れるが、大丈夫かい?」
『ええ、お陰様でこの館を取り巻いていた呪いは全て解呪できたようですから。というか・・・、貴方は私の話している内容が理解できるのですね?』
「ああ、その様だ。じゃあ、行ってくるね。」
『あ、あの!また・・・、また来てくれますか!?』
「近い内にすぐに来るよ。」
俺は家守妖精に笑顔を見せ館を後にしサーシャとラウルに報告に向かうことにした。




