【第42話】商業都市オーロ・ヴァレンツ
俺達は約一ヶ月ほどの旅路を経て『商業都市オーロ・ヴァレンツ』に到着した。
「ここがオーロ・ヴァレンツですか。確かに商業都市と言われるだけあってミストヴェイルより遥かに栄えていますね。」
「そうですね。この国の中でも2番目に栄えていると思います。ですが品揃えに関しては物によってはこちらのほうが充実している場合もあると思います。」
「【呪われた装備】等ですか?」
「ふふ。それもありますね。」
そういうサーシャの顔色は非常に華やかだった。
笑顔と話の内容が合ってなさすぎる残念美少女だ。
「所でススムさんは今後どうするつもりですか?」
「うーん、まずは冒険者ギルドに寄って必要な報告と精算を済ませた後は未定ですね。」
「そうですか・・・。では!」
サーシャがそこまで行った所で俺は話を遮る。
「サーシャさん達と僕はあくまで依頼人と冒険者の立場です。ありがたいお話ですがそこはしっかり線引したほうがお互いのためかと。」
「!・・・残念です。」
「ふふ。サーシャ様振られてしまいましたね。」
ナナリーがその様子を見てそんな事を言っているとサーシャが顔を真赤にしてナナリーをぽかぽか叩いていた。
こんなおっさんの何処が良いんだ、全く。
「今回は通常依頼では無く、指名依頼ですので私たちも冒険者ギルドに行きましょう。」
「ああ、そう言えばそうですね。よろしくお願いしますね。」
そうして俺達は冒険者ギルドまで行くがナナリーは先に馬車を自分たちの拠点に持っていくということで別れることになる。
「帰りに乗っていかないで大丈夫な距離なんですか?」
「ええ、ここから近いですから。」
「なるほど。」
冒険者ギルドに入るとここもまたミストヴェイルとは大きく違い、なんというか実入りが良いんだろうなあと言うような感想が浮かんでくるような作りになっていた。
俺は早速カウンターに行き冒険者証と今回の依頼票を提出する。
「はじめまして。僕はミストヴェイルからススムというものですが指名依頼の報告をしたいのですがどうしたら良いでしょうか?」
「ススム様ですね。お話はミストヴェイルの冒険者ギルドより伺っております。そちらの方が指名依頼を出したサーシャ様でいらっしゃいますか?」
どうやらミストヴェイルから事前に話が来ているらしい。
これが冒険者ギルドのネットワークってやつなのかな?
「ええ、依頼者のサーシャです。」
「畏まりました。では冒険者証、依頼票をお預かりします。サーシャ様はこちらの依頼完了票にサインをお願い致します。」
「わかりました。」
サーシャは依頼完了票にサインを書くと少し待つように言われる。
今回はわざわざ副ギルドマスター以上の人が出てくるということはなさそうだ。
「やはり街が街ですからかね?指名依頼って結構あるんですかね。」
「そうですね。商人たちは気が合う冒険者達とは指名で囲いますからね。そういう意味ではミストヴェイルよりも遥かに多いと思いますよ。」
「どんな冒険者とあたるかドキドキするよりかは確かに高いお金払ってでも確実な冒険者を雇ったほうが気が楽ですもんね。」
「ふふ。そういうことですね。」
そう暫くしないうちに受付より再度呼ばれる。
「大変お待たせ致しました。確かに今回の指名依頼については完了したこと確認できました。そしてススム様には今回の指名依頼の他にミストヴェイルで行っている別の依頼の件について精算がありますが、こちらについては今日中に精算の方を終わらせておきますので明日またよっていただくことは可能でしょうか?」
「わかりました。では明日また来ます。よろしくお願いしますね。」
「承りました。」
「さてと、僕の仕事はここまでですね。」
「駄目です。」
サーシャはおれのローブの端を掴んでプンスカしている。
ええ・・・?
「せめて今日くらいは泊まっていってください。今後の事や街のこともお話しますので。」
「ですが、女性ばかりの家に泊まると言うのは・・・。」
「今更それを言うのですか?」
「あはは・・・。それもそうですね・・・。では今夜だけはお邪魔させてもらいますね。」
「やったー!」
「全く、サーシャ様ったら・・・。申し訳有りませんススム様。」
「あはは・・・。」
そうして初めてのオーロ・ヴァレンツの街を歩くがやはりどの店も栄えている。
品揃えもミストヴェイルとは段違いだ。
そんな商店が並ぶ先に家々が並び始め、その内の一件の大きな家に着く。
そこには既に帰宅していたナナリーと馬車も入っていることからここがサーシャ達の拠点なのだということが理解できた。
「これまた立派なお家ですね。」
「そうですか?ここではこれよりも更に大きな家なんてザラにありますよ。私たちは普段ここにいることが少ないのでこのくらいの大きさの家なんですが。」
「それでも十二分に大きいと思いますよ・・・。」
そうして呆気にとられていると、サーシャは恭しく俺の前で礼をする。
「ようこそ。ススム様。今日はごゆるりとお休み下さい。」
「お世話になります。」
「ふふ、ではどうぞ。」
そうして中に入るとやはりシンプルながらも豪華な家だった。
不思議なことに家を開けていることが多いと言う割に埃などがほぼ無く、綺麗な状態を保っていた。
「家を開けている割に綺麗なのは?」
「ああ、毎週家政婦さんが掃除してくれてるお陰ですね。」
「か、家政婦さん・・・。」
ドラマでしか見たこと無い存在だよ。
応接間に通され座っているとセリルがいつの間にか旅衣装からメイドの格好になっている。
「そういえばセリルさんとナナリーさんはメイド件護衛でしたね。」
「ええ。ですのでこの屋敷に滞在中はこちらの格好となりますのでお気になさらず。お茶を入れましたのでどうぞ。」
「ありがとうございます。」
お茶を飲んでホッとしているとサーシャも着替えてきたようだが、やはりかなりの美少女だというのは一目でわかる。
「お待たせしました。」
「いえ、改めて『今日だけ』お世話になりますね。」
わざとらしくそう言うとサーシャはふくれっ面になる。
「『今日だけ』で無くてもいいんですよ?それにどうするおつもりですか?」
「どうするとは?」
「泊まる場所ですよ。」
「ああ、そうですねえ。結構な貯金はあるので宿では無く賃貸があればいいかなあと思ったんですが。」
「賃貸ですかあ・・・。うーん・・・。」
そう言ってサーシャは考え出す。
「なにか問題でも?」
「いえ、賃貸はあるにはあるんですがかなり高いんですよね。下手すると持ち家のほうが安く住む場合もある位なんですよねえ。」
「そ、そうなんですね・・・。」
なるほど。
このオーロ・ヴァレンツはこの国では二番目に栄えている街だ。
当然栄えているということは居住に関しても色々ハードルはあるだろう。
東京でも都心部の値段と多摩地区のような場所で大きく土地代や賃貸代金が違うようなものだろう。
「良ければ私の知り合いの不動産を紹介しましょうか?」
「非常に助かります。」
「ふふ。セリル、お願いしても良い?」
「分かりました。日程は明日で?」
「そうですね。ススムさんの精算が終わった後伺います。」
「畏まりました。ナナリーに行かせますね。」
「えーー。」
そう言ってサーシャはセリルにがっかりしている。
「セリルさん、助かります。」
「いいえ。サーシャ様お一人にはさせられませんから。」
どんだけ信用されてないんだこのお姫様は・・・。
「そうだ。お聞きしたいことが合ったんです。」
「『ダンジョン』のことですか?」
「う、流石フォレスさんの弟子ですね。」
「ふふ、そう言ってもらえるとフォレスも喜ぶと思います。それでどんなことでしょう?」
「この街がダンジョンと密接に関係しているというのはどういうことですか?」
「それは、この街でダンジョンの売買がされているからですね。」
「え?『ダンジョン』が『売買』・・・ですか・・・?」
俺は余りの衝撃に頭がフリーズする。
「ええ、そうです。」
「ダンジョンは何処かに長い事存在しててそこに冒険者が何年も時間を掛けて挑戦し続けるような場所かと思っていましたが・・・。」
「勿論そういうダンジョンもありますよ。そういったダンジョンは基本国が管理していて国が認めた者しか挑戦することはできません。」
「では売買されているダンジョンというのは?」
「一時的ダンジョンと呼ばれるダンジョンですね。」
なるほど、『一時的ダンジョン』の概念がこの世界にはあるのか。
『一時的ダンジョン』は文字通り一時的に発生するダンジョンであって俺が嗜んでいたゲームではそのダンジョンは『完全に中身がランダム』なダンジョンであり、挑戦できる回数も限られていた。
恐らく『鍵』となる何かが売買されており、それを使うことで『一時的ダンジョン』に挑戦できるのだと理解した。
「良ければ明日にでもその『一時的ダンジョン』を売買してる店を紹介していただいても?」
「そう言われると思っていました。大丈夫ですよ。」
「ありがとうございます。」
「明日もご一緒できることが多そうで嬉しいです。」
サーシャはご満悦な様子だ。
「そうだ、今日のお夕食は流石に時間がないのでこの街のローカルフードでも如何ですか?」
「それは良いですね。興味があります。」
「では、これで今日の予定は完璧ですね!」
「あはは・・・。まあ久しぶりにゆっくりしたいですね。」
「もう、ススムさんおじさんみたいですよ。」
実際おじさんなのでそこは触れないでくれ!




