【第38話】ダンジョンの呪い
お料理教室を行いサーシャにから商人とは!という説教を受けた夜であった。
今後の方針を決めることにした。
「今後のことなんですが、これからはナナリーさんに専属で運転をしてもらい、セリルさんと僕で警戒監視を行いませんか?」
「理由をお聞かせいただいても?」
セリルが何故?という顔で聞いてくる。
「一つはナナリーさんが専属で運転することによってそれだけに集中することが出来、夜はしっかりと休むことが出来るということ。二つ目は僕とセリルさんの敵を察知するスキルと僕が有しているスキルを使用すれば、警戒監視は恐らく二人で安全に行えるということ。」
「なるほど。」
「明確に役割分担してしまえば、その方が休むべきタイミング、動くべくタイミングが明確になりますし、身体も休めやすいと思うのです。まあ、試しにやってみてダメそうならまた考えれば良いのでは?とは思っても居ます。」
「私はそれでいいよ!馬車の運転好きだし!」
「・・・わかりました。ではそう致しましょう。早速今夜ですがまずは私から監視を行いますね。」
「はい。よろしくお願いしますね。」
そうして俺達は交代で見張りを行うことにする事になる。
「ほら、ポチおいで。寝るぞ。」
『えー。』
「じゃあお前一人で寝なさい。」
『やだやだやだー!』
そう言ってズボ!っとポチが寝袋に入ってきた。
早速、ぬくぬくと寝ていると急に脳内で【システムメッセージ】が発生し俺は驚いてガバっと起きる。
「うわぁ!」
『気配察知(LV3)』と『地図』が自動で開いており、こちらに向ってくる敵影が確認できた。
「どうかされましたか、ススムさん」
サーシャが俺の声で起きてしまったようで声を掛けてきた。
「ああ、すみません。大丈夫だとは思いますがちょっと行ってきます。」
俺は即座に休憩用の服から戦闘用のバランス型装備に着替え、木の上で見張りをしていたセリルに近づく。
「セリルさん!」
「はい?どうかなされましたか?」
「ここから西方向に何か感じるものがありますか?」
「西ですか・・・?」
暫く索敵をしているようだがわからない様子。
「恐らくですが敵です。こちらに向ってきています。数は2、大きくはないですが早いですね。また狼かもしれません。」
それを聞いたセリルが一気に空気を変え戦闘状態へと移行する。
暫く俺は自身の『気配察知(LV3)』と『地図』を見ながら、セリルがどの程度の索敵持ちなのかを見極めることにした。
俺の『地図』でおおよそ半分くらいまで反応が迫った時、セリルが反応した。
「・・・本当に来ていますね。数は2、狼です。」
「任せて大丈夫ですか?」
「ええ。」
「では見学させてもらいます。」
今のセリルとのやり取りでわかったのは恐らくセリルは『気配察知(LV2)』に相当するスキルを有している。
更に俺は敵か味方か判断できないのに、セリルは「狼」だと言い切った。
そこが大きな違いだろう。
セリルが背負っていたのは大きな弓だ。
流石に木の上では弓が引けないのだろう。
地面に降りてきて若干空に向け弓を射る。
そして追加でもう1本射てから様子をうかがう。
すると時間差があったがほぼ同時に接近してきていた敵の反応が消失する。
「お見事です。どうやら仕留めたようですね。」
「その様ですね。それにしてもススム様は私よりも遥かに優れた察知能力をお持ちなんですね。」
「あはは。ですが種類まではわからなかったですよ。」
「それでもあの遥か彼方からの察知能力は頼りになります。」
「そう言ってもらえて何よりです。」
「それにしても今日はやたらと襲われるな。」
「・・・。」
「あ、そう言えばそろそろ交代の時間ですかね?代わりますね。ごゆっくりなさって下さい。」
「ありがとうございます。では失礼します。」
そうして交代した俺は先程寝ていた時に叩き起こされた【システムメニュー】を見る。
今まであの様に警告が出ることがなかったのに今回それが急に出たのは何でだ?
可能性としては『気配察知(LV3)』にしたからか、寝ていた時に初めて襲われたからか?
「ううむ・・・。わからん!考えてもわからん時は考えないこととする。」
『御主人ー・・・。』
「ん?ポチどうした。」
『何で一人で行っちゃうのー。』
「お前寝てただろう。おいで。」
『ポチも見張りするのー。』
「わかったよ。じゃあ俺達で頑張ろうな。」
そう言いながらわしゃわしゃ撫でてやる。
暫く時間が経ち色々と考えている内にもう一度敵対反応が発生する。
「またか?まあでもこれなら。」
俺は馬上戦闘で身につけた『気配察知(LV3)』と『地図』を併用した目標設定を使用して、ファイアボールを空に向けて放つ。
『火の玉飛んでいくのー。』
「ああ、まあ。これで大丈夫だろう。」
暫く『気配察知(LV3)』と『地図』を見ていると今回は3つあった敵対反応が先程の2匹の位置より更に離れた所で消失し経験値だけが入る。
「それにしても襲われ過ぎじゃないか?うーん・・・」
日が昇り始め朝になる。
朝食は昨日のスープが若干残っていたのでそれを温め直しパンに浸して食べる。
「そう言えばススム様。夜が明ける少し前に魔法使いました?」
ナナリーにそんな事を言われる。
「あ、起こしちゃいましたか?」
「ああ、いえ。たまたま起きたんです。その時飛んでいく火の玉が見えたもので。」
「なるほど。たしかに僕ですね。かなり遠くから何かはわからなかったですが獣らしい敵対反応が3つ来ていたので対処しておきました。」
「そうでしたか・・・。」
うん?何かあったのだろうか?
「そう言えば昨日旅に出てからここで野営して今の時間までに合計で3回も襲撃があったんですが、こんなに危ないなら行商は大変そうですねえ。」
「それに付いては私からお話があります。」
そう言ってサーシャが会話に入ってくる。
それも深刻な表情をしているのでただ事ではなさそうだ。
「サーシャ様、よろしいのですか?」
セリルが割って入りサーシャに確認をしている。
「ススムさんでしたら問題はないかと思いますし、それに知っておいて貰ったほうが良いと思うのです。」
サーシャがそう言うと間に入ったセリルも下がる。
「ススムさんは何故コカトリスがあの様な場所に現れたか不思議では有りませんでしたか?」
「あ、それはとても不思議でした。過去あの場所には出現したことがないような事を情報としてもらっていましたし、他のコカトリスが居た痕跡もなく完全な異常な状態だとは思っていました。」
「それと昨日から今朝にかけての獣の襲撃には実は意味があります。」
「意味、ですか?」
「はい。これを見て下さい。」
そう言いサーシャは手袋を外した。
すると手の甲に文様が入れ墨の様なものがある。
「・・・これは?」
「呪いです。私が伯爵家より忌み嫌われるもう一つの原因となります。」
「これが・・・、呪い?」
「はい。この呪いは獣や魔獣を引き込みます。お母様より受け継いだ指輪で一日に3回まではなんとか上手く対処できるのですが、4回目以降になるとより強大な呪いが発動し強大な獣や魔獣を引き込んでしまいます。」
「ではコカトリスも・・・!?」
「はい。恐らくはこの呪いのせいだと思われます。」
「その呪いを解く方法はないのですか?」
「一つだけあります。」
「それは?」
「私のこの呪いの『ダンジョン』を攻略し根源となるものを倒すことです。」
「『ダンジョン』ですって!?」
まさかハックアンドスラッシュゲームで醍醐味の一つだった『ダンジョン』という要素がこんな所で出現するとは思わなかった。
通常『ダンジョン』は空間に突如として現れるものだと思っていたが、まさか人に現れしかもそれが現況で状態異常として【呪い】が発動しているなんて想像もしなかった。
「どうやってその『ダンジョン』に入るが出来るのですか?」
「私が許可したものでしたら入ることが出来ます。」
「過去挑まれた方は居るのでしょうか?」
「います。伯爵家に使えていた騎士です。ですが・・・」
「なるほど。では私がその『ダンジョン』を攻略してもいいですか?」
「え?」
「まあ、ここでというのは流石に場所が悪いので村かどこかの宿などで『ダンジョン』に入れれば安全だとは思うのですが如何でしょうか?」
「いやいや、お待ち下さい!私はその様なつもりでお話したわけでは!」
「ですが、その『ダンジョン』を攻略しない限り、サーシャさんは死ぬまで呪われたままですよね?」
「それはそうですが・・・。」
「まあ、とりあえず移動しましょう。無理にとは言いません。ですが安全な場所でサーシャさんが許可してくれれば僕はいつでも『ダンジョン』に潜ります。」
「・・・、なぜ、なぜそこまで出会ったばかりの私にそこまで言ってくれるのですか?」
「うーん・・・。困っている人たちが目の前に居て自分が手を差し出せば助けられる可能性があるのに、それをそのまま見て見ぬふりをするのが許せないからですかね?後は単純に『ダンジョン』に興味があります。」
実際の所最後に言った『ダンジョン』がきになるというのが本音だった。
「・・・。考えさせて下さい。」
「ええ、では準備をして先を進みましょうか。」




