【第33話】呪われた亡霊
俺は早速冒険者ギルドに向かう。
ギルドに入るなり色々と声を掛けられるが適当にあしらい受付に行く。
「こんにちは。ススムさん。この様な時間に来るのは珍しいですね?新しい面倒事ですか?」
「セリーヌさん。そういう事は笑顔で言うものではないですよ。カイエンさんとお話をしたいのですが。」
「そうだろうと思いました。カイエンは二階に居ますので適当に尋ねて下さい。」
だんだん扱いが雑になってきたな!!
「では、失礼しますね。」
そう言い俺は二階にあがる。
恐らくだが、今はギルドマスターの部屋にいるのだろう。
俺もギルドマスターの部屋には直接入ったことはないが一応そちらに声を掛けてみる。
コンコン
「失礼します。カイエンさん。ススムです。今よろしいですか?」
「あん?鍵は空いてる。勝手に入れ。」
「失礼しますね。」
「何だ?なんか用事か?また面倒事じゃねえだろうな?」
「カイエンさんまで同じ事言うんだな・・・。」
「理由は自分の胸に聞いてみろ。で、何のようだ?」
「ああ、その前に。これ返すの忘れてたので返します。」
そう言い、俺は収納鞄から結局使わずじまいだった『灰石還しの秘薬』を取り出しカイエンに渡す。
「そう言えばお前、あの戦闘で結局無傷で帰ってきやがったものな・・・。」
「お陰様で。」
「まあ、こちらとしても経費が浮いて助かった。預かる。」
「お願いします。それで今日来た理由なんですが。」
「どうせ、この間の話の結果だろう。」
「わかってるなら最初から言ってくださいよ・・・。」
「今、最後の二つ名をどうしようか悩んでたんだよ。」
「お、じゃあ僕にも考えさせてくださいよ。」
「いや、もう決まった。」
えええーーーーーー!!!???
「そう赤羅様に残念そうな顔するなよ。」
「残念な顔にもなりますよ。それで、順に聞いていっても?」
「ああ」
「まず、等級はどうなりましたか?」
「ああ、等級か。ほらよ。」
そう言い、カイエンが机の中から冒険者証を取り出す。
「おおーー。四角銀級だあ!」
「そういう話だったからな。銅級のは預かる。」
「はい。」
そう言って俺は銅級の冒険者証を渡し、新たな四角銀級の冒険者証を身に着けた。
「異例中の異例の大出世だ。ちなみに現在うちにいる連中じゃあ四角銀級が一番上だ。」
ええーーー!!??
そんな所に冒険者になって2ヶ月位の俺がなるのか・・・。
やはり色々と対策は練らないといけないな。
「次、報酬はどうなりましたか?」
「ああ、それはこれだ。以前預かっていたローブと上級鑑定の巻物、そしてその巻物の代金を差し引いた緊急報酬金だ。」
ん?緊急報酬金ってなんだ?この間の話にはそんなの出てなかった気がする。
「このお金って?」
「そういやこの間の話で出なかったな。緊急報酬金というのは冒険者ギルドまたは管轄軍のみで対処出来ないと判断され、かつ都市や村が緊急に対処しなければ損害が想定される場合に『国』から出る追加の報酬のことだ。」
「今回のコカトリスはそれに当たってたんですか?」
「それはそうだろ。事実コカトリスにより伯爵家の令嬢に被害が出て、しかも商業ギルドも運送などで大きな変更を強いられることになったからな。」
「はあ。そうなんですね。」
「ちなみに今回は15万ミラルの緊急報酬が設定されて、そのうち上級鑑定の巻物代金として3万を引いた。なので12万ミラルの報酬だ。」
150万円位か。緊急で上乗せとは言え随分現実的な数字だな。
「ではありがたく。ちなみに上級鑑定の巻物ってどこで買えるんですか?」
「鑑定屋か商業ギルドで買える。今後入り用ならそっちを当たれ。ただし値段はどうなってるかはしらん。今回はフォレスが仲介したからこの値段になっただけだ。」
「なるほど。」
「次に首の件だが、これはお前の言う通り国が買取、その手数料を引いた金額が冒険者ギルドに入る。そして今回任務に当たった者たちにその貢献度に準じて報酬が支払われる。」
「良かった。それなら僕は何も言うことがないです。ちなみに値段は言わないでくださいね。なんか後悔しても嫌なので。」
「そうだろうと思ったので値段は伏せておく。それとお前の『狙い』だが俺の情報網によると上手く通ったらしい。」
『狙い』とは前伯爵の話と首の現物をもっての俺の今後の扱いだろう。
「お前は少なくとも、この国では触れてはならない存在になったようだ。」
「おー。実はそれが一番嬉しかったりします。」
俺はもう面倒な縛りごとには辟易しているのだ。
まあ、『この国では』というのが非常に厄介だが・・・。
はあ。
「後は二つ名だと思うが、お前はそもそも二つ名の意味を知っているか?」
そう言えば二つ名ってなんのためにあるんだろう?
「さあ?かっこいいからですか?」
「阿呆か。いいか?二つ名はそいつの存在を示すものだ。そして同じ階級でも実力は圧倒的に二つ名持ちのが上になる。」
「そ、そうなんです・・・?」
「ああ。だが二つ名はギルドからの信用の証でもある。この二つ名は世界冒険者ギルドのネットワークで即時共有される。もし仮に自身の名前だけでどうにもならない場合、この二つ名を出すことで一気に状況が変わる場合もある。そういうものだ。」
なんか話を聞いてると水戸◯門様の印籠みたいなイメージが湧くな。
「なるほど。そういうものだというのは理解しました。それで僕の二つ名は?」
「呪われた亡霊」
厨二病全開ーーーー!?
「だが待てよ・・・。呪われた亡霊か・・・。流石カイエンさんですね。この名前にも抑止力を持たせてくれたんですね?」
「は?」
「いや、だってそうじゃないですか。呪われたー、なんて言葉が入ってる時点で呪いに近づきたくない人達は皆近づこうとしないじゃないですか?それを狙ってのことなんでしょう?それに亡霊ってことは居るか居ないか確認ができない存在って言うことだ!いやあ、カイエンさん。天才ですね。」
「いや、思いつきだが?」
「・・・は?」
「さっき適当に思いついた。」
こ、この野郎ーーーーー!!!!
こんだけ褒めちぎった俺が馬鹿みたいじゃねえか!!!!
はあ、なんかどっと疲れた・・・。
「じゃあ、これで以上だな。問題なければこれにサインしろ。完了報告書と報酬受領書だ。」
「はあ・・・。はいはい。」
俺は一気に肩の力が抜けさらっと署名すると【システムメッセージ】が起動し、なんとレベルが4も上がったと知らされる。
俺はそのあまりの光景にただ呆然とする。
「は?」
「ん?どうした?なにか問題か?」
「ああ・・・、いやいや、なんでもないです。こっちの話です。」
「そうか。では以上だが後なにかあるか?」
「あります。実は恐らく数日以内の内にサーシャ・ヴィクトリア・ブラウン嬢から指名依頼が入ると思います。」
「な!?随分急だな!内容は?」
「商業都市オーロ・ヴァレンツまでの護衛ですね。」
「やはりか・・・。」
「やはりってことは予想はしてたんですね?」
「ああ、いずれ来るだろうとは思っていた。まあいい、了解した。」
「ちなみに護衛依頼の報告ってこっちに戻る必要は?」
「無い。可能なら戻ってきてほしいが、商業都市オーロ・ヴァレンツの冒険者ギルドで報告すれば完了になる。」
「なるほど。理解しました。では。」
「おい!」
カイエンがなにか言いたげだったが俺は何も言わず手だけ振って出ていく。
俺は穴熊亭の部屋に戻る。
「さて、後は準備するだけだな。まずはこのローブの鑑定するか。」
『かんてー!』
「どうやら使い方は道具様転移陣の魔道具とほぼ同じだな。」
使おうとすれば【システムメニュー】が発動し、呪文が自然と口から発せられる。
『光よ、万象を照らす眼となれ。偽りは影となり、真実のみが形を得る。我に照覧を許せ。』
呪文を唱えると一瞬光り、そして鑑定は無事に終わる。
『おー!すごいの!すごいの!』
「たしかにこれは凄そうだ。」
【ユニーク:魔術師のローブ】
効果:HP+5、MP+10、VIT+3、INT+10、LUK-5
鑑定効果:魔法の詠唱に成功した場合、攻撃力が15%加算される。更に対象に与えたダメージ分、HPに対し障壁が発生する。なお障壁の耐久値に上限はない。
空きスロット:2個
「なんつう、チート級装備だこれ・・・。攻撃力上がる上にほぼ鉄壁の防御力じゃねえか。」
早速俺はこれを全てのビルドに組み込む。
そして、現在の「バランス型」のステータスは以下のようになった。
名前:ススム
二つ名:呪われた亡霊
職業:魔法使い
年齢:20才
出身地:不明
種族:ヒューマン
レベル:19
残りSP:6
各ステータス:HP:25(+5)、MP:40(+10)、STR:18(-2)、VIT:19(+1)、AGI:17(-4)、MND:27、INT:51(+16)、LUK:-22(-12)
初期スキル:言語理解、ハックアンドスラッシュ
装備済み:【呪】銅の短剣、鉄の腕輪、【呪】鉄のバックラー(ミル=ゼィ)、【呪】ホーンラビットの皮の手袋、【呪】魔術師のローブ
ペット:ポチ(白狼)
なんかステータス凄いことになってない?
しかも二つ名まで表示されるようになってるし・・・。
うーむ。
まあ、考えてもしょうがないか。
なるようにしかならんわな。
SPについてはまた、何かあったら降るかな?
そうして俺は指名依頼が来るまでの間、密かに準備をしつついつも通りの草むしりを続けることにする。




