【第31話】報酬
コカトリスとの戦闘時どうやらアドレナリンが全開だったようで戦闘終了時に入った経験値によりレベルが上ったのにようやく気が付く。
どうやら【システムメッセージ】によるとLVが2上がりLV15になったようだ。
念の為、『気配察知(LV2)』と『地図』で索敵をするが特に敵対的な物はいないことから戦闘は終わったと考えられた。
「ふう・・・。これで終わったか。」
そんな風に力が抜けているとフードの中からポチが飛び出した。
「な!?ポチ!!危ないから出たら駄目だろう!!」
『御主人!なんか凄いのが出るよ!!』
そう言ってポチが吠えている先にはコカトリスがどろりと溶け出し大地に帰っていくと同時に魔素として帰るはずだったものが形作られ、一着のローブとコカトリスの首一個がその場に現れた。
「こ、これがアイテムドロップか!?というかこの光は・・・」
そのローブからは神々しい金に近い色の柱が天高く立ち上がっていた。
「こらポチ!勝手に出たら駄目だろう。」
『だって!』
「だってじゃない。お前はここに入ってなさい。」
『はーい・・・。』
ポチをフードに入れるもやはり気になるのか頭によじ登りそのローブのことを見たい様子のポチ。
「この頭も戦利品なのか・・・?まあそれより問題はこっちだ。」
俺はその金色の光が立つローブを手に取る。
【ユニーク:魔術師のローブ】
効果:HP+5、MP+10、VIT+3、INT+10、LUK-5
【ユニーク:魔術師のローブを鑑定しますか? はい/いいえ(鑑定用アイテム0個)】
ユ、ユニークきたーーー!!
初めてのユニークで舞い上がってしまうが、このアイテムは未鑑定品だ。
しかもLUKにマイナス補正がかかってる。
ということは・・・。
【呪われた装備】の可能性が高いのか・・・?
ぐう!でも、【ハックアンドスラッシュ】の能力のお陰で最初から等級がわかっているのでお金を無駄にすること無く鑑定することが出来る。
鑑定屋にいくか鑑定用の巻物があれば問題なく鑑定できるはずだ。
「あ、だけどこの戦利品って扱いどうなるんだろうか。」
丁度今こちらに大勢の人達が向っている反応があるのでそこで聞けばいいかな。
それにしてもコカトリスの頭一つって・・・。
そう思っていたときである。
視界に入ってきた一団の動きがピタリと止まる。
「ん?どうかしたのかな?おーい!みなさーん?」
俺は大声でその一団に声を掛ける。
すると代表して一人だけがこちらに来る。
どうやらカイエンのようだ。
「おい!大丈夫かお前!!頭だけが残ってるが!?」
「え?これが普通じゃないんですか?あ、ちなみになんか魔術師のローブもドロップしましたが。」
「なに!?一回で二つだと!!」
「え?」
「とにかく戦闘は終わってて無力化されてるんだよな?」
「それは見てたでしょう?」
「あ、ああ・・・。」
俺が一応コカトリスの首に近づき無害であることを証明する。
「ね?もう完全に戦利品状態ですよ。」
「・・・その様だな。」
んーーー??
この反応コマトリスの戦利品が珍しいからの反応なのか、それとも異常なのかのどちらかだろうな・・・。
俺的に後者な気がしてならない。
そんなことを考えているとカイエンが合図を出しており、離れたところにいる一団が一気に迫ってきた。
やはりその迫ってくる一団もひときわ目立つコカトリスの首に戦々恐々としている様子。
まあ、俺でも正直近づきたくはないわな。
「うお!これ本当に頭一個戦利品かよ!」
「おい!見てたぞ!何だあの最後の!」
「あれだけの戦いしてほぼ無傷とかまじかよ!」
等など色々と言われる。
そんな中ヴォルフガング前伯爵が進み出て宣言した。
「コカトリスは討たれたことを正式宣言する。ススムよ、見事であった。」
握手を求めてきたヴォルフガング前伯爵の手を見ると若干震えているような様子が見て取れた。
「ありがとうございます。『ご覧になってくださった様で何よりです。』」
その様に俺は更に揺さぶりをかける。
あの様子からして俺の意図はきちんと伝わったはずだ。
「ススム、何やってる?戦利品は全てお前のものだ。早く仕舞え。」
「へ?」
「当然だろう。お前1人で倒したんだ。お前は戦利品を得るだけの武勲を上げたんだ。」
「わかりました。では『一応』仕舞っておきますが、後で相談があります。」
「お前のことだ。碌でもなさそうだが聞いてやる。」
「ありがとうございます。」
俺がそう言いコカトリスの首を仕舞っていると声を掛けられる。
斥候に出ていたネビル達一行だ。
「あ、ネビルさん達。斥候お疲れ様でした。」
「ススム、済まなかった。俺達は大変な勘違いをしていたらしい。」
そう言いながら三人はバッと頭を下げる。
「いやいや!何を仰っているんですか。頭を上げて下さい。」
「しかし・・・。」
「状況が状況です。むしろネビルさん達の思慮深さこそ正しい判断だと思いますよ。」
「そうか・・。」
「じゃあ、帰りましょう。」
「ああ!」
そうして俺達は再び街に凱旋することになった。
どうやら軍達と一緒に凱旋したことで安全が確保されたことを知った街の住人たちが歓喜の声を上げていた。
確かにしばらくは行商もかなり混乱していた様子であったためそれが正常に戻るのは国民の生活も平常に戻るということだ。
そう考えるとなかなか感慨深い。
俺はヴォルフガング前伯爵に今後のことを聞いた。
「この後軍はどうするのですか?」
「今は臨時で私が指揮を得ていたが、今後は指揮系統も通常に戻る。その後は事後処理や念の為の見回りを軍が行うことになるだろう。」
「なるほど。」
「それと、ことの顛末を『諸々』含めて話す必要がある。」
「そうですか。」
早々に冒険者ギルド側と軍側は解散となり指揮系統が通常の状態に戻される。
俺はこの後カイエンに相談することがあるので冒険者ギルドに行く。
どうやら先行して色々と情報が回っていたのか冒険者ギルドには商業ギルドマスターのフォレスも居た。
「お帰りなさい。無事に討伐できたようで何よりです。」
「流石に耳が早いですね。」
「ええ、なにやら私も居たほうが良いとの話をカイエン殿から聞いておりますし。」
「ああ、悪いな来てもらって。」
なるほど。フォレスに使いを出したのはカイエンだったようだ。
俺達はいつもの2階の応接室に行く。
「ふーー。やれやれだぜ。これでようやく落ち着ける。」
「お疲れ様でした。これで商業ギルドとしても通常運転が出来そうです。」
「今後のことは完全に軍に一任ですか?」
「ああ、軍に手に負えない自体が発生した場合は再介入することになるがそうならない事を祈るばかりだ。」
「なるほど。」
腰を下ろしたカイエンがいつもの様にじろりと俺を見る。
「な、なんですか?」
「なんですかじゃねえ、お前が俺に用があると言ったんだろう。」
「あ、そういえばそうだった。」
「あのなあ・・・。」
「それは私も関係があることなんですよね?」
「ええ、居てくれれば助かります。で、早速なんですがまずはこちらを見て下さい。」
そうして俺は戦利品のうちの一つであるローブを出す。
「ほう、これはこれは。非常に上等なローブですな。」
「ああ、確かにこいつはすごい。」
「わかるんですか?」
「それは私たち商人と冒険者は常に装備品などには目を光らせておりますからね。」
「なるほど。ではもう一つなんですが。」
そういった所でカイエンが慌てだす。
「お、おい!今ここで出すんじゃねえぞ!!」
「出しませんよ。どれだけ常識がないと思われているんですか・・・。」
「あれだけのもの『わざと』見せられて常識だなんだと言われたくねえよ。」
「あ、やっぱわかりましたか。まあ、それは後にして先にもう一つの戦利品、コカトリスの首1個に付いてです。」
「コカトリスの首一つですか!?」
フォレスが非常に驚いた声を出す。
「ええ、首から上が全て残りました。」
「そ、それは凄い・・・。というかコカトリスは2羽居たんですか?」
「いや1羽だ。」
「1羽で2個戦利品が出たということですか?」
「そうなる。」
やはり基本出たとしても魔獣一匹につき1戦利品が普通のようだ。
「そこで相談なんですが。先程戦利品は倒したものの物だと仰っていましたよね?」
「そりゃそうだ。」
カイエンが何当たり前のことをと言いたげな顔で俺を見る。
「僕は今回、それには納得しかねます。」
「はあ?」
「僕は我儘で最終的に単騎で仕留めただけです。数日にわたる調査、警戒、監視をしていた冒険者には何も報酬がないということですか?」
「そういうことか。完全にないわけではない。評価値が入るからな。ただ実入りはない。」
「そこが僕は納得がいかないんです。どうせ戦利品はイレギュラーとは言え2個出ました。それならばローブは頂きますが、頭は冒険者ギルドで引き取って下さい。」
「な、お前!?あの頭1個でどれくらいの値段になるのか知らんのか!?」
「知らないし興味があまりないんですよ。勿論ローブ以外にそれ相応に欲しいものがありますが。」
「・・・。聞こう。」
「上級アイテムを鑑定できる巻物が欲しいです。以前鍛冶師ギルドでお話を聞く機会があったんですが、上級は非常に高価だと聞きました。ですので上級アイテムを鑑定できる巻物を現物で頂きたいです。」
「何故巻物なんだ?鑑定士では駄目なのか?」
そこで俺は何も言わず右手人差し指を立て口に当てる。
どうやら二人はこれですべてを察したようだ。
「なるほど・・・。だが、それでも首一つの報酬はかなり多い。」
「じゃあそれは今後起こすであろう僕の迷惑料とでも思って下さい。」
「あのなあ・・・。」
俺はフォレスに向かい話を変える。
「フォレスさん一応聞きますが、納品された首は丸々商業ギルドに行きますよね?」
「ええ、そうなりますね。ただ初めてのケースのなので恐らくそこから部位ごとにバラして必要とする場所に卸すと思いますが。」
「でしたらそれを分割せずそのまま『国』に買い取らせませんか?」
「・・・理由を聞いても?」
「証拠です。今回の事態を受け全てを目撃していた前伯爵は王に全てを当然話すでしょう。そして僕は先程前伯爵と話をした時に若干の揺さぶりをしておきました。」
「お前、そんな事してたのか・・・。」
カイエンが呆れている。
「ええ。だけどきっとこの国のトップ達は前伯爵というとても地位の高い人間だったとしても、言葉では信用出来ないはずです。」
「・・・。なるほど。その為の証拠・・・ですか。」
「はい。証拠さえあれば前伯爵は嘘を吐いているということにはならず、更にその話が嘘でないということは僕の力も嘘ではないということが理解できるはず。それで『抑止力』を僕は得られるはずです。」
カイエンとフォレスに沈黙が流れる。
「とまあ、こんな感じの筋書きなんですがどうですか?ああ、後要求するとすれば早々に僕の階級を銀級まで上げて下さい。指名依頼と今回の討伐で問題はないですよね?」
「ああ、そのことだがお前は銀級にはしない。」
えええーーーー!!!??
カイエン話が違うだろう!!
「何でですか!?」
「当たり前だろう。四角銀級複数パーティか金級の依頼内容だぞ。それで単騎で終わらせたのに銀級じゃスジが通らない。」
「え、じゃあ?」
「お前を指名依頼及び討伐の件を持って四角銀級に上げ、更に二つ名を付ける。」
二つ名キタアーーーー!!
厨二病患者様なら一度は考える二つ名だ!
何が良いかなー?
「ちなみにその二つ名って僕が考えても!?」
「いや、ギルド側で考える。」
何じゃそりゃ!?
まあでもよくよく考えたら二つ名って自然とそう呼ばれるようなものであって自分から言うものではないか・・・。
「だが、本当にそれで良いのか?」
「自身の身の安全以上に欲しいものは有りませんよ。」
「まあ、確かにそうかも知れませんね・・・。」
「僕からは以上です。問題がなければ後日結果を聞きに来ます。カイエンさんに首は預けておきますね。」
「あ、その件ですが良ければ内の時を止める収納鞄に入れておきませんか?」
フォレスから進言がある。
「確かに首を常温というのはまずいですね。ではこの後フォレスさん、一緒に来てくれますか?」
「ええ。首をいれた後カイエンさん、よろしいですかな?」
「・・・ああ。」
ということで俺は商業ギルドに行き早速コカトリスの首一つを時を止める収納鞄に入れ帰路につく。
さてどんな結果が待っていることやら。




