【第28話】ビルド構成
俺は目的の品を手に入れ早々に宿に戻る。
時刻は丁度昼頃になりかけていた。
宿付近に来ると人集りが見え始め、ガヤガヤとした声も聞こえてくる。
「うわ、本当に人気の店になったんだな。」
穴熊亭は人でごった返しており、商品を求める人達の行列ができていた。
ちらっと目に入ったのは一つの立て看板だった。
そこにはこう書かれている。
【日替わりメニュー始めました!今日の日替わりは『野菜炒めサンド』です。】
お、早速日替わり始めたんだ。流石アリスとパックだ。
この柔軟な対応を取れるからこそ、一ヶ月足らずでここまで店が大きくなったと言えるだろう。
店の中からは「日替わり」の言葉が飛び交っていた。
そんな事を見ているとアリスが俺達に気が付く。
「お、ススム君おかえり!」
「ただいま。日替わり大盛況なようだね。」
「お陰様でね!お昼は?」
「折角なので日替わりを1つとハーフで1つ貰えるかな?」
「了解!」
実は街を歩いている時にやはりというべきか穴熊サンドの様な物を売っている店を何件か見かけたがやはりクオリティは元祖穴熊亭のが抜きん出ているように見え、実際客足も少なかった。
この調子だと次の一手も案として出して上げる必要があるかもなあ、と思い俺は考えた案をサラッとメモ紙に書きながら商品が届くのを待つ。
俺が書いているのは所謂『チェーン店』の仕組みだった。
ここ一箇所でパンクしてしまうなら穴熊亭2号店を作ってやって分散させれば良い。
そうして案を書き終えた所に丁度アリスが品を持ってきてくれる。
「お待ちどー!ごめんよー時間掛かって!」
「大丈夫だよ。ありがとうね。それとこれ、時間あるときにでも見てパックさんと健闘してみて?」
「おおお?まさか!?」
「後でだぞ。」
「わかったー!!」
アリスはメモ紙を嬉しそうに手にくるくる回っている。
本当に働き者だなアリスは。
俺はポチを降ろし両手に野菜炒めサンドを持ち部屋に入る。
『ポチ、お肉が良い!』
「好き嫌いしちゃ大きくなれないぞ。」
『えー・・・。』
「えーじゃない。美味しいから食べてみなさい。」
『いただきますなのー・・。』
渋々食べ始めたポチだったが、やはり勢い良く食べ始める。
「旨いだろ?」
『うま!うま!』
俺も野菜炒めサンドを食べながら自身の『ステータス』と『スキルツリー』を眺めることにした。
単純に考えてレベル=SP数だ。
ということは現在の使える総SPは13ということになる。
まずは今現在の装備品と合わせて、ホーンラビットの皮の手袋を装備する。
名前:ススム
職業:魔法使い
年齢:20才
出身地:不明
種族:ヒューマン
レベル:13
残りSP:4
各ステータス:HP:14、MP:20、STR:12(-2)、VIT:12(-2)、AGI:11(-4)、MND:20、INT:32(+6)、LUK:-17(-7)
初期スキル:言語理解、ハックアンドスラッシュ
装備済み:【呪】銅の短剣、鉄の腕輪、【呪】鉄のバックラー(ミル=ゼィ)、【呪】ホーンラビットの皮の手袋
ペット:ポチ(白狼)
割と真面目にLUKを考えたほうが良いのか?
他のステータスは上がり下がりはあるが基本プラスだ。
だが呪われた装備に限ってはLUKがどんどん下がっていく印象がある。
もしかして【呪われた】状態になるものは等しくLUKが下がるとかそういう法則なのかな?
現状はまだ戦闘時や日常生活時に支障が出るような不運は起きていない。
仮にここに支障が出始めた場合、本格的に考えたほうが良いのかもしれない。
そしてまずは現状の残りSPを振ることにする。
今回のSPの使い先はもう既に決めていた。
1、『ファイアボール【LV3】:火属性の基本魔法。単体攻撃であり目標に着弾時稀に炎上効果を発生させる。威力が更に強化され、詠唱時間の50%を短縮する。この魔法は最大でLV5まで強化ができる。消費MP5』
2、『ファイアボール【最終強化】:ファイアボールの性質を更に変化し強化する。目標に着弾した際、5つの小さなファイアボールが発生する。一定圏内に他の対象がいる場合自動的にその対象に対し発生したファイアボールが狙いを定める。目標が一体しかいない場合、発生したファイアボールは全て追撃となる。』
3、『MP回復量上昇(LV1):MPが回復する効果値を1上げる。この効果は最大でLV3まで強化できる。』
4、『気配遮断(LV2):自身に対し隠遁状態を付与し敵から更に見つかりづらくする。この効果は最大でLV3まで強化できる。』
以上の様にSPを振る。
ファイアボールのレベルを上げると威力の強化などが望まれるが、消費するMPも増えてしまう。
そのため、最低限の強化にとどめ性質を最終段階まで強化することにより最低限のMP消耗で更に威力を増す。
増えてしまったMPのコストは単純に回復量を増やすことで相殺し、更に今回の対人戦でも非常に役に立った気配遮断をもう一段強化することでこちらを狙われにくくする。
魔法使いは非常に単純明快だ。
高火力で一気に殲滅する。
だが代償として身体能力が低く死亡のリスクが高い。
なのでなるべくそのリスクを回避しつつ火力を維持できるかがポイントになる。
よし、次だ。
次はまず今装備している装備品を指輪型魔道具に記憶させる。
指輪型魔道具に意識を集中させると自然と脳内に直接イメージとしてこの装備を登録する。
それは本当にもとから自分の機能として存在していたかのように馴染んでいる不思議な感覚だった。
「さて、ここからが問題だ。」
俺は部屋の片隅に【呪われた】三面鏡を出す。
「ポチ、これから危ないことするから絶対俺の所に来るなよ?」
『んー?ポチ眠いから寝るー。』
「ベッドで寝てていいからな。」
『わかったのー。』
俺は満を持して三面鏡を開く。
割れた鏡に真っ直ぐ映ると『システムメニュー』が発動する。
【現在のスキルツリーを保存しました。スキルツリーを初期化しますか?戻って来るスキルポイントは13ポイントになります。 はい/いいえ】
俺はこのシステムメニューを見た瞬間、ぐっと拳を握る。
予定通りだ!
この三面鏡はスキルツリーを認識している人間でなければ使いこなすことは決して出来ないだろう。
だが使いこなせるのであればそれはある意味レジェンド以上の価値を持つ物になる。
スキルツリーを初期化するだけなら金で解決できるが重要なのは現在のスキルツリーを保存でき、任意のタイミングで呼び出せるということだ。
俺は満を持して【はい】を選択する。
するとレベルやステータスはそのままに『スキルツリー』のみが初期化される。
俺は静かに一旦三面鏡を閉じる。
そしてイメージをすると、指輪の時と同じ様に自身の脳内もしくは魂とでも呼ぶような場所に先程までの自身のスキルツリーが保存されているのを認識できた。
「よし。」
俺はそれを確認した後再度初期化された『スキルツリー』を開く。
完全に初期化されており残りSPが13になっている。
そこで俺は次のスキルツリーを構築する。
それは完全防御型だ。
1、『土の防壁(LV5):土属性の防御魔法。発動後、自身を5回守ることが出来る土属性の障壁を作る。詠唱は完全に省略される。この障壁発動中は防御力が大幅に上がり、攻撃したものを拘束状態にする。消費MP7。効果時間90秒。再使用間隔120秒。この魔法は現在最大LVである。』
2、『土の防壁【性質強化】:土の防壁の性質を変化し強化する。物理攻撃を防ぐことが出来る魔法障壁が合わせて発生する。また遠距離攻撃についても自動で防ぐ効果が発生し、その遠距離攻撃をしてきた対象を拘束状態にする。』
3、『土の防壁【最終強化】:土の防壁の性質を更に変化し強化する。攻撃してきたものを岩の壁で閉じ込める。また、岩の内部は棘状になっており出血状態を付与する。』
4、『MP回復量上昇(LV3):MPが回復する効果値を3上げる。この効果は現在最大LVである。』
5、『MP回復速度上昇(LV3):MPが回復するまでの時間を100%短縮する。1秒毎にMPが3回復する。この効果は現在最大LVである。』
これで良し。
俺は防御型スキルツリーを完成させると再び三面鏡の前に座りゆっくり開く。
当然のように『システムメニュー』が起動する。
【現在のスキルツリーを保存しました。スキルツリーを初期化しますか?戻って来るスキルポイントは13ポイントになります。 はい/いいえ】
俺は再度『はい』を選択し三面鏡を閉じ、脳内でイメージすると確かに二つのスキルツリーがイメージ出来る。
俺は試す様にまずはファイアボールで構成された『バランス型』を呼び出す。
一瞬でスキルツリーが呼び出され、『システムメニュー』にもそれは表示される。
【バランス型スキルツリーを読み込みました。】
念の為スキルツリーを確認すると当然のようにそこには最初に設定したファイアボールを駆使する『バランス型』スキルツリーとなっていた。
俺は再度イメージし今度は新たに構築し直した『防御型』を呼び出す。
【防御型スキルツリーを読み込みました。】
やはり一瞬で切り替えることが出来、スキルツリーを見ると当然そこには新たに設定した土の防壁を最終形態まで強化した完全防御型のスキルが現れる。
俺は思わずやったー!と声を出して喜んだ。
最後に俺はもう一度三面鏡を開き最後のスキルツリーを構築する。
1、『水精霊召喚(LV5):水属性の精霊魔法。3体の水属性の精霊を召喚する。詠唱は完全に省略される。水精霊の攻撃力が大幅に上がる。召喚した水精霊は自動で敵味方を識別し、敵対行動を取るものを攻撃する。消費MP10。効果時間60秒。再使用間隔120秒。この魔法は現在最大LVである。』
2、『水精霊召喚【性質強化】:水精霊召喚の性質を変化し強化する。追加で2体の水精霊を召喚する。水精霊の体力及び攻撃力が大幅に上がる。遠距離に居る目標に対し、自動で遠距離攻撃を行う様になる。』
3、『水精霊召喚【最終強化】:水精霊召喚の性質を更に変化し強化する。水精霊が上位の存在となり氷属性に変化する。氷精霊の体力が更に大幅に上がる。追加効果氷結状態を付与する。』
4、『MP回復量上昇(LV3):MPが回復する効果値を3上げる。この効果は現在最大LVである。』
5、『MP回復速度上昇(LV3):MPが回復するまでの時間を100%短縮する。1秒毎にMPが3回復する。この効果は現在最大LVである。』
ある意味切り札とも言っていいだろう。
完全水属性召喚魔法型だ。
何故これが切り札かと言われればそれは新たに入手した【呪われた】オークワンドに秘密があった。
これは『【水属性】スキルに関わる全ての数値が2倍になる。』が適用されるからだ。
全てが2倍という事はコストも2倍になるわけだが、当然効果時間も2倍、更に召喚される精霊の数も2倍ということになる。
単純に考えてMPを20消費するが召喚される精霊数は10体になるはず。
120秒限定の一人中隊を作れるわけだ。
このスキルツリー『召喚型』として三面鏡に登録し、更に装備も登録した上でイメージを強化しこの『召喚型』に結びつけて自動で切り替えるようにした。
結果俺は、LV13にして火属性の『バランス型』、土属性の『防御型』、そして水(氷)属性の『召喚型』を瞬時に使い分け戦うことが出来るようになった。
俺は今後これを『ビルド』と呼ぶことにした。
なんて中二病がすぎるか?なんて思いながら俺はしっかりと三面鏡を収納鞄にしまい込む。




