【第26話】おしゃれな魔道具!
俺はポチを連れて一階に降りる。
そこでは朝早くから調理場で仕込みが行われ、アリスたちも掃除を必死にしていた。
「おはようございます。」
「あ、ススム君おはようー!良く眠れたかね。」
「ええ、やはりベッドは良いものだと再認識しました。」
「それは良かった。ポチもおはよう。」
そう言いながらアリスはポチを撫で回していた。
「アリスさん、この時間だったら毎朝ここでポチと食事貰ってもいいですか?」
「ん?ああ、この時間はお客さんいないし良いよ!ただし汚したらススム君が片付けてね!」
「あはは。それは勿論そうします。」
「よろしい!ただ、内容は他の子達の朝食と同じ様にまかないになるけど良いかな?」
「ああ、それは何でも。貰えるだけ有り難いです。」
「では持ってくるねー。」
待ってる間、店内を見渡すが基本的に以前の部分と増築した部分で明確に分かれているのがわかった。
そんな風に様子を見ているとパックがわざわざ食事を持ってきてくれた。
「おはよう、ススム。無事に戻ってきたようで何よりだ。」
「ああ、おはようパックさん。お店大きくなってたから驚いたよ。」
「ああ、これも単にお前のお陰だ。皆を代表してお礼を言わせて欲しい。」
「あはは。宿代と食事代だけで十二分に貰ってるから大丈夫だよ。その代わり、この街で一番美味しいご飯を提供し続けてくれればそれでいい。」
「感謝する。ついでに俺もここで一緒に食っていいか?」
「ああ、勿論。どうぞ。」
「すまない。ほれチビスケ。お前の分だ。ゆっくり食えよ。」
『いただきますなの!』
パックはそう言いながらポチに皿を渡し座るのかと思ったら不思議なことがパックの身に起きる。
なんと一瞬にしてパックの服装が調理時のエプロン姿からラフな格好に切り替わったのだ。
「え!?」
「ん?どうかしたのか?」
「いや、今服装一気に変わったよね!?あれ何!!」
「ああ、お前は知らないのか?」
そう言いながらパックは首から下げている指輪を見せてくれる。
「これは指輪型の魔道具で服装をいくつか覚えさせることが出来るんだ。前の収入だととても手が出なかったが、今はお陰で余裕ができてな。ちなみにアリスも持ってる。」
「あ、何々?指輪型魔道具の話?お邪魔するよー。」
そう言ってアリスも食事を持って席に付く。
「これ便利だよねえ。これもススム君のお陰だよ。私たちなんかはやっぱ油とかお酒とかで服が汚れがちな仕事してるからさ。こうやってぱぱーっと着替えできるの助かるんだよねえ。」
「なにその便利魔道具!!」
「そこそこ値段はするけどススム君なら買えるんじゃないかなあ?」
「ちなみにどこで売ってるの?」
「彫金ギルド系列の商店なら買えると思うよ。」
「彫金ギルドには知り合いがいる。ちょっと今日行ってくるわ。」
「あはは!早速だね。情報量は新レシピかアイデアでいいぞ?」
「こらアリス!調子に乗るんじゃない!」
そう言われパックに怒られるアリスだった。
「新メニューかアイデアねえ。これメニュー?」
「良いんだ、ススム。気にしないでくれ。」
「いや、僕的にも手を広げすぎるのは問題だとは思うけど可能な範囲でなら食事が美味しく提供されるならそれは良いことじゃない?」
「まあ、そりゃそうだが・・・。」
「ふむ。この内容ならアイデア一つかな。」
「本当に!?」
「うん。『日替わり』を導入したら?」
「『日替わり』?それってどういう物なの?」
「例えば今僕達が食べてるのって、在庫の管理的に余裕があるもので作ってるわけなじゃない。」
「そうなるな。」
「ならあえてそれを調整しやすくするのさ。例えば穴熊サンドの材料がいつも以上にあるようなら穴熊サンドをその日の『日替わり』メニューにして若干安く売るのさ。すると?」
「なるほど、安く買えるなら『日替わり』の出が良くなって、材料の調整ができる・・・!」
「そういうこと。毎日そうやって『日替わり』の内容をこっちの在庫で決めてやれば在庫の調整はしやすくなるし、かつ今までメニューが偏ってた人も、『日替わり』で新しいメニューに目が行くかもしれないじゃない?」
「ススム君やっぱ天才だよ!うちの店長やってほしいくらいだ!!」
アリスが感動して僕の手を取るが少しして恥ずかしくなったのか顔を真っ赤にして手を離す。
「あはは。まあこの位ならアイデアくらいは出すさ。今後も僕で相談に乗れることなら話くらいか聞いてあげるよ。」
「どうせならアリスを貰ってくれても助かるんだがな。」
爆弾発言がパックから出たがパックはアリスに蹴られて悶絶している。
「あ、あはは・・・。ご馳走様。本当に美味しくなってて僕自身驚いたよ。これからも頑張ってね。」
「うん、また一緒に食べようね。」
そう言ってアリスが笑顔で返してくれる。
俺みたいな冴えないおっさんなんてアリスみたいなうら若き乙女には勿体なさすぎる。
「それにしてもポチ。お前顔凄いことになってるぞ。全く。」
『美味しかったのー。』
俺達は早速準備をして出かけることにした。
『御主人、抱っこー』
「抱っこじゃなく、昨日の場所なら良いぞ?」
『むー。そこで我慢するー・・・。』
俺は素直に言うことを聞くポチの頭を撫でてやると『うへへー』と嬉しそうにしていた。
そのまま、俺はポチをフードの中に入れる。
今日は特別急いでいるわけではないので街なかをゆっくりと見ながら歩く。
時間に縛られっぱなしだったサラリーマンの頃とは大違いな生活だ。
彫金ギルドに到着したのでポチに注意を促す。
「静かにしてろよ。」
『わかったのー。』
俺は受付で以前世話になった彫金ギルド副マスターのジーニスの名前を出し可能なら呼んでもらうことにする。
「呼ぶのは構いませんが来るかどうかはわかりませんよ?副ギルドマスターはお忙しい方なので。」
「ええ、知っています。だめなら他をあたりますので。」
受付がそう言いながら下がって暫くするとジーニスが来てくれた。
「おはようございます、ジーニスさん。アポも取らずにすみません。」
「ご無沙汰してますね、ススムさん。まあ、貴方でしたらアポ無しでも構いませんが。それとそちらの子犬は?」
「訳有で預かっている子です。今日はちょっと相談があってきたんですがよろしいですか?」
「ほう、では応接室で伺いましょうか。」
「ありがとうございます。」
ジーニスが素直に俺に対応している様子を見た受付の人がとんでもなく驚いた顔をしていたのが印象的だった。
「ではこちらにどうぞ。」
「失礼します。」
「・・・。ススムさんにいくつかお聞きしたいことがあったので今日は少しお時間頂いても?」
「お忙しいジーニスさんのお時間を頂いてますので答えられる範囲でしたらどうぞ。」
「最近、とてつもない勢いで鉄級から銅級に昇格し、しかも商業ギルドマスターと錬金術ギルドマスターより直々の指名依頼を受けた冒険者がいると噂になっていましたが、それはススムさんですか?」
「ええ。僕ですね。」
「しばらく居なかったということはその依頼に行っていて戻られたということは完遂したということですか?」
「お察しの通りです。」
流石ジーニス、状況をよく理解しているなあ。
「やはりそうでしたか。ちなみにそちらの子犬も関連ですか?」
「ご明察です。流石ですね。」
「それにしても二つのギルマスターより指名ですか。本当に私としても運が良い。」
「と言うと?」
「コネクションが広い方と繋がりを持てるのは何事でも有利になりますからね。」
「それは言えてますね。実際僕としてもジーニスさんとこうしてお話できているのもコネのお陰ですしね。」
「では改めて今日のご用向きは?」
「実は衣装を変える指輪型魔道具が欲しくて。」
「ほほう・・・?」
ジーニスが商機を見つけたように目を光らせる。
今回の指輪型魔道具については実はオシャレの為ではなく、完全実用性を目的とした用途だった。
それは装備の即時切り替えである。
状況に応じ、複数の装備を切り替えることが叶えば一人でいくつもの場面に対応できることが出来る。
正しこれにはもう一つの重要なアイテムが必要になってくるがそれが実在しているかはわからない。
だが、仮に無かったとしてもこの指輪型魔道具は持っていても困らない存在であった。
「ちなみにお値段はどれくらいですか?」
「店頭で販売している価格で言えば記憶できる容量によりますが一般的なもので3万ミラル~と言ったところですかね。」
そう言いジーニスは手元の鈴を鳴らし控えていた人物に取りに行かせた。
1個30万円であの一瞬で着せ替え機能が使えるなら十分に安い気がする。
「記憶できる容量と燃料切れみたいなことってあるんですか?」
「今回おすすめする物は5セット分ですね。燃料切れのようなことはなく、半永久的に使えます。」
「ちなみに以前の話ですがこれは日常生活の魔道具になるますよね?」
「良く覚えていらっしゃいましたね。その通りです。ですので戦闘系装備とは相性がいいですよ。」
そんな説明を聞いていると先程ジーニスに頼まれていた人物が戻り、その手には箱に入った指輪が見える。
「こちらになります。」
「ありがとうございます。友人は首から下げていたんですが装備する部位は決まってはいないということですか?」
俺は応用としての使い方として指以外で装備したときのことを聞いてみた。
「ええ、身体に所有している状態でしたらどこでも大丈夫です。」
「それなら僕も首から下げることにします。」
「では調整は不要ですかな。お支払いは現金で?」
「いえ、商業者登録票で。」
「そうでしたか。では今回は勉強させて頂き2万5,000ミラルで構いません。」
「ええ!?そんなにオマケしてくれるんですか?」
急に5,000ミラルの割引は流石に驚く。
「ええ、その代わりと言ってはなんですが。今後彫金系商品でご入用の際は私か私の代理を通して下さい。そうすれば私に対しての益になりますので。」
「なるほど。販売実績ですね。わかりました。」
「流石ススムさん。ご理解いただけたようで何よりです。」
「ところで使い方は?」
「付けてみればわかると思いますよ。」
「ふむ?」
俺はそう言われ、自身の冒険者証に指輪を通しそれを首にかけるとなんと脳内で勝手にどうやって使うものかがイメージされる。
すごい!仕様書が勝手に脳内にインストールされるような気分だ!
「ふふ。如何ですか?」
「いやはや驚きました。後でいろいろ試してみます。」
「問題がれば返品や返金も受け付けておりますので。」
「非常に助かります。それともう一個存在してるかどうかわからないんですが相談しても?」
「存在してるかどうかがわからない御品ですか?一応お話をお聞きしても?」
そうして俺はもう一つの目的の品であり、装備切り替えの指輪とセットで最大限効果を発揮するであろうアイテムについて聞くことにした。




