【第2話】初の戦闘、初のドロップ品ゲット!
「うわあああああ!!」
突然今までいた空間より放り出されたことで無重力感が身体を包み込み、落ちる!と本能的に思ったが、気が付いた時には既に森の中で尻餅をついていた。
「くう!あの女神め!!こういうところでも嫌がらせか!!」
自分が情けなく叫んでいた事がとてつもなく恥ずかしくなり、それと同時に女神の嫌がらせのように感じ憤りを覚えた。
「それにしてもここはどこだ?あの女神、場所どころか送り込まれた世界の名すら教えなかったぞ・・・。」
途方に暮れ辺りを見回すとどこを見ても、木・木・木・・・。
どう見ても森の中であった。
「はあ、どうしよう。」
女神との先程のやり取りを思い返すに所謂収納魔法の類はこちらにあるとのことだったが、どうやって使うのかを教えてもらっいない。
つまり無一文な状態であり、なおかつ装備品もまるで持っていなかった。
「そうだ、こういう時は・・・。」
「ステータスオープン!」
・・・
「あれ?」
「ステータス表示!」
「状態の表示!!」
・・・
「なんてこった・・・。自分の今の状態すらわからない。」
全く持って手詰まりの状態だった。
流石にこの状況は良くない。
とりあえず生きていくには水が欲しい。
「まあ、ここで嘆いていても仕方ないか・・・。」
そう独り言を言いながら宛もなく彷徨うことにした。
特技ではないがこういう頭の切り替えの速さはサラリーマン時代に無理難題をふっかけられた時に身についたものだった。
とりあえず何が出てくるかわからないので、途中で太さや長さがちょうどいい木の枝を見つけた。
「何も無いよりは良いよなあ。なにせ魔物が出るって話だったし。」
その木の枝を手に取ると不思議なことが起きる。
【コモン:木の枝を取得しました。】
眼の前にいきなりメッセージが現れる。
「うわぁ!」
あまりに突然の事で手に取った枝を手放してしまった。
するとやはり眼の前にメッセージが現れる。
【コモン:木の枝を捨てました。】
どう見てもいつものゲームでよく見たシステムメッセージである。
「ま、まさかこれが、俺の唯一女神から与えられた【ハックアンドスラッシュ】の能力なのか・・・?」
あの短いやり取りで思い当たるのはどうにもこれしか無い。
確かに「ハックアンドスラッシュ」の説明では以下のように説明をした。
・略称はハクスラである。
・最初は弱い武器から始まる。
・道中敵のドロップや宝箱等から色々なランダムな性能やレアリティの武器や防具などを拾う。
・取得した装備をいくつも同時に装備し、更新しながら自分のジョブやクラスとスキルを混ぜ合わせる。
・最終的に自分だけのビルドを構築する。
簡単にこの様な説明をしたが、あの女神はこの様な初心者的な説明でさえあれやこれやと言い訳をし、理解しようとしなかった。
そして最終的には俺の考えている【ハックアンドスラッシュ】の定義をスキルとして創造し付与するとのことだった。
つまり今目の前に現れたシステムメッセージはどうやら俺が思っていたハクスラのゲームシステムを世界観はこの世界のものだが、強制的にスキルとして『上書き』された様な状態なのではないか?と考えた。
転生前の地球で考えれば、地球で暮らす『リアル人生ゲーム』に【ハクスラ】のシステムを強制的に上書きしたような状態とでも考えれば良いのだろう。
そう考えると途端に苦痛でしか無かった『リアル人生ゲーム』がとてつもなく攻略しがいのあるようなものに思えてくるから不思議だった。
とりあえずある程度の考えがまとまった所で、先程の木の枝を拾い物は試しとこう言ってみた。
「木の枝を装備する。」
するとこの考えは大当たり!
【コモン:木の枝をメインウェポンに装備しました。】
この様なシステムメッセージが現れる。
「おおおお!これは楽しいかもしれないぞ!!」
そこで少し実験をしてみた。
得るものを意識して装備品として手にする場合と、そうではなく特に意識しないで手にする場合の違いである。
すると実験は予想の通りであり、装備品として認識して手にする場合は装備品としてシステムメッセージが現れ、そうではなくただ持つ場合は何もシステムメッセージは発生しなかった。
「よかった。何でもかんでもシステムメッセージが発生するようじゃ、生活するにはシステムメッセージだらけになるからな・・・。」
いままで考えたこともない不安が発生していたが、その不安も払拭できた。
【ハックアンドスラッシュ】のチュートリアル的な考えはここまでにして、いい加減のどが渇いてきた。
「ああ、やっぱし水が欲しい・・・。」
(ざー・・・)
「ん?この音?まさか・・・!」
薄っすらと聞こえてきた音に注意し、その方向へ行ってみるとやっぱり川が流れていた。
「本当は煮沸したりしたほうが衛生面的には良いんだろうが、ここは仕方がない!」
腹を壊すかもしれないが今は喉がカラカラで仕方がなかったので飲みすぎない程度に口に含み渇きを癒す程度に水分補給をする。
「はあ・・・。これだけでも十分だ・・・。それにしても本当に20才まで若返ったんだな。見た目は20才当時の俺そのままだ。」
そう言いながら水面に映る自分の姿を見る。
「いや待てよ?」
そうだ、ハクスラゲームには道具の枠として薬瓶なども装備品として認識されていた。
「もしかして!?水を道具として取得する!」
そう言いながら手に掬ってみるとやはりだった。
【素材アイテム:綺麗な水(小)を取得した。】
「やった!狙い通りだ!!しかも綺麗な水だって!?」
システムメッセージのお墨付きがあるならと口に含む程度で我慢していたのをやめ、ごくごくと飲む。
「ぷはぁ、落ち着いた・・・。しかしこの【ハックアンドスラッシュ】、もしかしてとんでもないスキルなんじゃ・・・。」
そう考えていると
ガサガサッ!
近くの草むらより明らかに大きめの動物が現れたような音がする。
「まさか!魔物!?」
手に木の枝を構え様子を伺うとそこには短剣を装備したどこからどう見ても『ゴブリン』と思われるような初めて見る魔物が現れる。
しかも明らかにこちらに短剣を向け殺意を放っているように感じた。
「まさか、こんな木の枝しかない状態で刃物持ちのゴブリンだと・・・?」
場合によっては一気に離脱することも必要だとゲーム時代の経験からそう考えを巡らしていると、どうもそのゴブリンの様子が明らかにおかしい。
はぁはぁと息を切らしながら短剣を持つてもプルプルと震えようやく武器を持てているような状態で、動きも鈍重に視える。
(まさか、弱ってる?これなら行けるか・・・?)
そう考えていると明らかに弱っているゴブリンが短剣を振りかざし襲ってくるもやはり動きが明らかにおかしすぎる。
「これなら!おりゃあ!」
ゴブリンからの非常に弱々しい一撃をかわしながら全力で頭頂部めがけて木の枝を振り下ろす。
「ばきぃ!」という音と共に一撃で破損する木の枝であったが、その一撃を食らったゴブリンもまた絶命していた。
「やったぞ!!!」
そう、初めての戦闘の勝利を噛み締めているとシステムメッセージが現れる。
【経験値を10取得。ジョブレベルが1上がった。スキルポイントを1会得。】
【スキルを割り振ってください。(残りスキルポイント2)】
なんとレベルが上ったようだった。だが、ジョブレベルとは?スキルポイントとはなんだ?
当然ハクスラゲームを嗜んでいた自分からすれば意味はわかるがそもそも今の自分が何のジョブなのかを理解していない。
ジョブが理解できていなければ当然スキルポイントを割り振ることも出来ないのだ。
「うーむ、これは困った。」
そう言いながらちらっと倒したゴブリンを見てみると、先程弱った手で振るっていた短剣が落ちていることに気がつく。
「もしかしてこの短剣も・・・?」
そう考えドロップ品として意識しながら手に取るとシステムメッセージが流れる。
【レア:銅の短剣を取得しました。】
「よっしゃ!レア装備だ!」
なんとこの短剣はレア相当の武器だったようだ。
同じ武器だとしてもハクスラの世界ではレアリティが違うだけで全く性能が別物になる場合があるため、純粋に今の木の枝より良いレアリティの装備を見つけたことに歓喜する。
だがなぜあのゴブリンはあんなにも弱っていたのか。
手に握った短剣を見てみると
【レア:銅の短剣】
効果:STR-10、VIT-10
「なんてこった!これ外れ装備じゃねえか!!」
ハクスラの世界では効果がついている装備品が一般的であるがバフ(強化)だけのステータスが付いていることもあればデバフ(弱体化)のステータスが付いているものもある。
主にハクスラゲームは如何に効果が良いものだけを集めるかに重点が置かれている。
ちなみに基本ステータスは以下の通りである。
・HP/ヒットポイント=生命力、体力
・MP/マジックポイント=魔法や体技を使うために必要
・STR/ストレングス=力強さ、腕力。体技の威力や間接的にHPにも関与
・VIT/バイタリティ=耐久力、持久力。防御系スキルの強度や間接的にHPにも関与
・AGI/アジリティ=素早さ、敏捷性。回避力や機敏性の効果。
・MND/マインド=精神力、意志力。一部魔法威力や回復魔法の効果、間接的にMPにも関与
・INT/インテリジェンス=知力。多くの魔法の威力や間接的にMPに関与
・LUK/ラック=運。会心の一撃が発生しやすくなる他、ドロップ品が出やすくなったりクオリティにも関係がある。
「だがこの短剣、レアなんだよな?デバフだけってことはなくないか?」
そう思い再度短剣をよく見てみる。するとシステムメッセージが現れる。
【レア:銅の短剣を鑑定しますか?】
なんと未鑑定品だった。
これもハクスラゲームではよくあるシステムなのだが、得た装備品はその場で効果が全て判明するものと、『鑑定をすることで初めて真の価値がわかるもの』の2種類が存在し、未鑑定品のものは往々にして、そのままでは性能が発揮できずレアリティは高いがデバフだけの謎装備ということが多い。
そしてこの鑑定というシステムは、鑑定専用の巻物を使うか、街の鑑定屋で鑑定して貰う必要がある。
「これは早々に街に行かないとだめだな。」
そう考えているとゴブリンが現れた先が拓けており、なんと道になっていることに気がつく。
「運が巡ってきたー!」
一人テンションが上りながらその道を進むことにした。




