【第13話】初めての報酬と商業者登録票
「そうだ!思い出した・・・。」
俺は話がまとまった所でフォレスと共に商業ギルドに行くという事になっていたが、あることを思い出す。
俺の手持ち金だ。
今日の報酬を当てにしていたので全てを商業ギルドに預けるとまずいことに気がついた。
「あ、あのー・・・大変申し上げにくいのですが・・・。」
「あん、なんだよ?」
そう言ってカイエンが俺を睨みつけてくる。やはり怖い!!
「実は大変申しにくいのですが、今手持ち金がこれしか無くてですね・・・。良ければ今日だけ薬草類を2,3枚でも良いので冒険者ギルドで引き取ってはくれませんか・・・?」
そう言いながら俺はもうほぼ空っぽになっている財布代わりの革袋の中身を見せる。
「ああん?ぶ!あっはっはっは!これは確かに生活できそうにないな。」
中身を見たカイエンは大爆笑していた。
「じゃあ、折角なので錬金ギルドとして欲しいものを言っておこう!スウィーレ草が2枚と、ラナン芽草が1枚を希望します!」
「わかりました。ではススムさん、こちらスウィーレ草2枚とラナン芽草1枚を今から下で手続きしてしまいましょう。」
セリーヌがそう言い、スウィーレ草とラナン芽草を渡してくれた。
「ではそれ以外は私が責任を持ってお預かりしますね。一緒にギルドに向かう予定でしたが、流石に品が品ですのでカイエンさん、護衛を依頼してもいいですか?」
フォレスが薬草類をまとめ、自分の収納鞄に入れながらカイエンに依頼をする。
「元よりそのつもりだった。さっさと行こう。」
カイエンも流石に一人では任せられないと思っていたのかフォレスと共に出ていく。
「マリリさん、一応お聞きしておきますがこちらの3枚の品質は最上級で良いんですよね?」
セリーヌが一応確認を取るが、マリリは笑顔満面で「勿論!ボーナスもちゃんと付けて上げてねー!」と手を降って帰っていった。
「では、行きましょうか。ススムさん。」
「わかりました。そういえばこれが初の依頼達成になるのか。」
そう考えるとなかなか感慨深いものがあった。
「ふふ、そうですね。」
受付に戻りセリーヌより、「処理が終わるまでお待ち下さいね。」と言われたので目立たないように影にひっそりと座りいつもの人物観察をして時間を潰す。
「ススムさん。終わりましたよ。」
セリーヌよりその様に声がかかったので受付に行くと他の受付嬢から「ビギナーズラックおめでとー!」と言われる。
たったの3枚でそう言われるのはなかなか思うところがある。
「ではこちらが今回の報酬です。ご確認下さい。」
スウィーレ草(状態:最上級)単価報酬額:1,500ミラル×2枚=3,000ミラル
ラナン芽草(状態:最上級)単価報酬額:2,500ミラル×1枚=2,500ミラル
複数枚持ち込み分上乗せ額=1,000ミラル
報酬合計=6,500ミラル
「えええ!?んんんん!!!」
あまりの金額に俺は思わず声を出したが慌てて口を手で塞ぐ。
「セ、セリーヌさん?薬草ってこんなに高いんですか?しかもこれってあくまで諸々差し引いた額ですよね!?」
おれはセリーヌに小声で話しかける。
「はい。なので数枚で有名人になるというのがわかりましたか?」
笑顔なセリーヌが怖かった。
だが、それも納得な金額だった。
まさか薬草をたった3枚入手しただけで6,500ミラル、日本円で約6万5,000円近くが手に入ってしまったのだ・・・。
金銭感覚おかしくなる!!
これは確かにあの枚数全てを持ち込んでいたらとんでもない事になっていた所だ。
「ではこちらの金額をご確認の上サインをお願いしますね。」
そう言われ銀貨6枚と四角銅貨5枚を手に入れる。
「た、確かに受け取りました。」
あまりの事態に動揺しつつもサインを行った。
その瞬間更に異常なことが起きる。
いきなり【システムメニュー】が起動したのだ。
【サブクエスト達成報酬経験値を75取得。クラスレベルが3上がった。スキルポイントを3会得。】
【スキルを割り振ってください。(残りスキルポイント3)】
なんとレベルが上った。
唖然としている俺にセリーヌが声を掛ける。
「ススムさん?大丈夫ですか?」
「あ、ああ・・・。いえ・・・、初めての依頼達成で感激してました。」
「そうですか?まあでも本当に初依頼の達成おめでとうございます。明日からも頑張ってくださいね。」
頑張ってと言う割にセリーヌの笑顔が怖かったし、何故か「自重してくださいね。」という副音声が聞こえたようだった・・・。
「無理しすぎない程度に頑張ります。」
俺はそう返すことしか出来なかった。
早速大切な報酬金を革袋に入れ、当初の約束通り商業ギルドへ向かうことにした。
商業ギルドに付くまでの道で何故レベルが上ったのかを考えた。
「うーん・・・。敵を倒したわけではないのになんでレベルが上ったんだ?」
そう考えていた時、【システムメニュー】に書かれていた【サブクエスト達成報酬】というのを思い出す。
間違いなく【ハックアンドスラッシュ】の力だろう。
ハクスラゲーでよくある所謂『お使いクエスト』と呼ばれるメインストーリー以外に手伝いをすることにより微弱ながら経験値が入るシステムがあった。
恐らく今回、冒険者としての依頼がその『お使いクエスト』に相当し、サブクエストとして認識されたに違いない。
ということは今後、依頼を達成する毎にそれに見合った経験値が手に入るということになる。
これは全く考えてなかった嬉しい誤算であった。
相当数の薬草類のストックがある上にまだまだ街の外には生えている様子だったので、ほぼ毎月の収入の精算の才に一気に経験値が入る可能性がある。
レベル上げが大好きだった自分としては今まで『お使いクエスト』は効率が悪く、避けてきたタイプだったがいざ現実になると副収入的な側面を帯びていて大変美味しいと思えた。
そうこう考えている内に商業ギルドへと到着する。
今まで見てきたギルドの中では一番豪華な見た目だった。
流石は商人たちの中心になるギルドである。
ギルドに入ると早々にフォレスが声を掛けてくれる。
「お待ちしてましたよ、ススムさん。こちらは私の弟子でシシルと申します。」
そう言ってフォレスが若いが真面目そうな一人の青年を紹介してくれる。
「ギルドマスターよりお話は全て伺っております。シシルと申します。よろしくお願いたします。ススム様。」
「ススムです。よろしくお願いします。それと様はやめていただきたいのですが・・・。」
「わかりました、ではススムさんとお呼びさせていただきます。」
「ありがとうございます。」
「ではススムさん、これ以上私が関わってしまうと目立ってしまうでしょうから後はシシルに任せます。失礼しますね。」
そう言いフォレスは気を使ってくれた様子だった。
「ではススムさん、早速ですが商業者会員登録を行ってしまいましょう。」
「よろしくお願いしますね。」
そう言いながらシシルは一枚の用紙を渡してくれる。
冒険者ギルド登録で呼んだような規約や同意書の商業ギルドバージョンだった。
だが明確に違うところが一点あった。
それは最後の同意、確認のサインをするところに血判を押す場所があった。
「シシルさん、この血判を押すところは商業ギルドの『縛り』と言うのに関係しているのですか?」
「ああ、ススムさんは『縛り』のことは聞いていたのですね。その通りです。この同意書こそがその『縛り』を課すための魔道具なんですよ。」
これ魔道具だったのか!?
「はー、こんな魔道具もあるんですねえ。」
「そうですね。魔道具と単に言っても数え切れない位の種類や物がありますからね。なにかこの用紙でわからないことがあれば言って下さい。」
そう言いシシルは席を立ちお茶を用意してくれるようだった。
俺は冒険者ギルドと同じ様にしっかりと規約や同意を読み始める。
基本的には商人としての心得や当たり前のことが書かれていたが、最後の一文が非常に物騒だった。
「これが『縛り』か・・・。」
その一文はこう書かれていた。
「これら全ての規約の内容を理解し同意したものは署名と同時に血判を押す。この同意書は魔道具であり、同意したにも関わらずこれを破ったものは代償として一生涯、直接商業ギルドを利用することや商業ギルドに関する店や人物を利用することを禁じる魔法を発動させる。」
直接命を取るような物では無かったが、これは『間接的に命を奪う縛り』だった。
この世界に来てまだ日は浅いが当然生きるために様々な人や店を利用してきた。
だが、それは全て必ずどこかしらで商業ギルドが関わっているのだ。
それら一切の接触を禁止するということはつまり人間社会では生きていけないということを差している。
この状態で生きていこうと考えるならば、それこそ森などで1人で住み、原始時代の様な生活を送る必要が出てくるだろう。
ただでさえこの世界は魔物や盗賊なども多くいることから、命の危険性が跳ね上がることになる。
恐らく長くは生きられないだろう。
どうせなら一瞬で殺してくれたほうがまだマシだとさえ思えてしまった。
俺は身震いしながら同意書にサインをし、血判を押した。
すると一瞬光ったがそれ以上大きな変化は現れなかった。
「こ、これでいいんですか?」
「ええ、大丈夫です。ではこちらがススムさんの商業者会員登録票になります。お受け取り下さい。」
なんと既に俺の登録票は出来上がっていたようだ。
ちなみに最低ランクは冒険者と同じ鉄級~のはずだったが、何故か受け取った登録票は四角銅級だった。
これは最低ランクから3個上の物になる。
「あれ?なんで四角銅級からなんですか?」
「ああ、それですね。極稀にある制度で金級以上の者の推薦がある場合は銅級または四角銅級から開始となるんですよ。」
なんと3階級特進したようだ。
「ちなみにここだけの話、推薦者がサブギルドマスター以上の場合銀級からの開始もあるのですがどうやら師匠がそれをしなかったようですね。」
「あはは、それは確かに避けたかったので非常に助かります。」
フォレスさんよ!大感謝!!
そうだ、折角だし俺が一番気になっていた貯金機能を使ってみよう。
「シシルさん、この登録票に貯金をするにはどうすれば良いんですか?」
「わかりました、説明いたしますね。まず貯金の方法ですが、これは各町や各村にもあります商業ギルドや支点で行います。窓口で貯金したいといえば手続きはできますので今やってみましょうか。」
「是非に。」
そう言われ俺はシシルさんに連れられ貯金窓口に案内される。
「ではこちらの用紙にいくら貯金したいのかを記入してもらい、そして窓口にその金額と一緒にその用紙を提出して下さい。ちなみに個人的におすすめなのは500ミラル程度は手元に残しておいて残り全ては貯金するのをおすすめします。」
「理由を聞いても?」
「後で実践しますが、この登録票を使えば商業ギルド加盟店や登録票を持っている個人と直接金銭の受け渡しをしないでも内々にやり取りが可能になるからです。」
それって要はデビットカードみたいなこと!?
すごすぎんか!商業者登録票!!
「では500ミラルだけ手元に残して今持ってる財産全部入れます。」
手元の紙に今日の報酬を含めた約6,500ミラルを書き込み、その金額を窓口に提出する。
すると窓口のお姉さんが案内してくれる。
「確認しました。ではお手数ですがこちらの石にススム様の登録票をくっつけて貰ってもよろしいでしょうか?」
くっつける?タッチする感覚か?
すると石がホワッと優しい光を放つ。
「手続き完了しました。以上で貯金完了です。毎度ありがとうございました。」
本当にタッチ決済付きのデビットカードの様な感覚で貯金ができてしまった。
「はあ、すごいですね・・・。ちなみに残高を確認するには?」
「簡単です。この登録票に血判を押した指を押し当てて下さい。」
言われた通り親指をぐっと押すとなんと残高が浮き出てきた。
指紋認証式とかこれ現代地球のものより優れてないか・・・?
「す、すごすぎる・・・。」
「最初は驚きますよね。私も驚きましたもの。」
「ちなみにやり取りはどうするんですか?」
「それも簡単で、同じく血判を押した指を押しながらいくらを送金するかイメージして下さい。すると登録票が淡く光りますのでその状態で自分の登録票と相手の登録票を軽くコツンと当ててみて下さい。」
「で、では・・・。100ミラルを送金。」
頭でイメージとは言われたが最初なのであえて口で出してみると、本当に淡く光りだした。
「では私の登録票に軽く当てて下さい。」
コツン
すると淡く光ってたその光はまるで相手に移動したかのようにシシルさんの登録票が光出す。
「これで送金完了です。あ、お返ししますね。」
コツン
「あ、戻ってきた。す、すごすぎる・・・。」
なんだこのオーパーツ。まじで凄すぎる。
「ちなみに遠方の方に振り込みも出来るのですがそれは窓口で売っている用紙を買う必要があります。その用紙を使うことで振り込みがどこでも出来るので2、3枚持ってても損はないと思いますよ。高くもないですし。」
「後で買っておきます!」
そんな便利なの買うしか無いだろう。
「ちなみに先程シシルさんは『商業ギルド加盟店や登録票を持っている個人』と言っていましたが、当然商店は全店舗商業ギルド加入必須でしたよね?ということはお店での金銭やり取りも?」
「ええ、出来ますよ。むしろ私は最近本当に現金を触ってないくらいですね。ちなみに冒険者ギルドで発生する報酬も受け取れますよ。」
な、なんだってーーー!!
じゃあ、本当にこの世界、緊急時以外なんかはキャッシュレスでいけるんだ・・・。
「説明は以上になりますが他に何かありますか?」
「いえ、今のところは大丈夫です!本当にありがとうございました!」
そう言いおれはシシルと分かれる。
確かに『縛り』は強烈だったが、それ以上にメリットがでかすぎる。
「いやあ、良いものを手に入れることができてよかったなあ。」
そんなことを言いながら宿屋に戻るとなんと食堂部分がいつも以上に賑わっていた。
アリスが遠目に俺を見つけてなにか言ってるようだが、今日はなるべく近づかないでおくことにした。
「夕飯どうするかなあ・・・。」
現在の『ステータス』
名前:ススム
職業:魔法使い
年齢:20才
出身地:不明
種族:ヒューマン
レベル:5
残りSP:3
各ステータス:HP:6、MP:9、STR:9(+3)、VIT:8(+2)、AGI:7、MND:9、INT:14、LUK:-10
初期スキル:言語理解、ハックアンドスラッシュ




