番外編 第5話 やらかしコンビの邂逅
レイニードとカシウスは同級生である。
だが、お互いの性格が合わないためか、学園でも近衛騎士になっても絡んだことはない。
――いや、1回だけ、そういえばあった。
それは学園生3年の学園祭の午後。
貴族の子息が迷子になったという騒ぎが起き、教師たちが慌てて捜索を始めた。
偶然、その場に居合わしたのがレイニードとカシウスだった。
二人とも、ただ単に廊下ですれ違っただけだった。
「君たち、ちょっと探してきてくれ!」
カシウスは眉をひそめた。
「え、僕? いや、僕は今、展示の準備が――」
「生徒会役員だろ? 頼んだぞ!」
レイニードは、制服の襟を崩し、ポケットに手を突っ込んだまま、面倒くさそうにため息をついた。
「俺、ガキ苦手なんで」
「……君は、先週の孤児院実習で、子供たちと鬼ごっこしてたよね?結構楽しそうだったぞ」
ふたりはしぶしぶ校舎の裏手へ向かった。
泣き声が聞こえたのは、花壇の奥。しゃがみ込んでいたのは、金髪の小さな男の子だった。
「さあ、坊ちゃん! 探しにきたよ。お兄さんがきたからもう大丈夫だよ」
カシウスがやさしく近づくと、子供はさらに泣き出した。
「…泣いてると、こっちが困るんだよなぁ~」
レイニードがしゃがみ込み、目線を合わせる。
「……どうした。名前は?」
「う……うぅ、エリオット……」
「じゃあ、エリオット、手を出せるか?」
レイニードが手を差し出すと、エリオットは躊躇なくしがみついた。
その様子を見て、カシウスがむくれた。
「なんで俺じゃダメなんだよ。俺、生徒会だぞ?みろよ、この七三分けを」
「うるさい。お前、声がでかい」
「お前だって、チャラいんだよ」
ふたりが言い合っていると、エリオットがぽつりと呟いた。
「おにいちゃんたち、なんで演技してるの?」
「……」
「……」
その後、ふたりは無言でエリオットを連れて校舎へ戻った。
教師のところにくると、エリオットはふたりを見上げて、にっこり笑った。
「ありがとう、おにいちゃんたち」
「二人の演技は内緒にしておいてあげるね」
子供は二人に耳打ちすると、大きく手を振って教師と歩いて行った。
「「……子供って、怖ぇ……」」
それ以降、二人が言葉をかわすことは討伐に参加するまで一度もなかった。
二人は縁があるんです(笑)
これで、番外編も終わりとなります。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
下書きが無くなったのでしばらく時間が空くかと思いますが、
また、次のお話もよければ、お付き合いいただけますと幸いです。




