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贖罪
あれから何年も過ぎた。
少年は青年へとなった。
故郷を離れて、今や都会で働いていた。
毎日満員電車に揉まれる日々だ。
ある日の夏、墓参りに故郷に戻ってきた。
懐かしい思い出が蘇る。
そして、忌まわしい思い出も。
あの神社は今もあるらしい。
「願いの叶う神社」だと少し有名になっていた。
夏のじめじめした暑さが余計に気を重くさせた。
ふと路地裏に猫がいた。
大きくて、虎模様の猫。
此方をじっと見ている。
そして「にゃあ」と一鳴きすると奥へ行ってしまった。
「トラ、スケ……?」
いや、トラスケなはずがない。しかし、あの姿はトラスケにそっくりだった。
「はは……」
トラスケ、墓も作ってやれなくてごめん。
あの日、助けてやれなくてごめん。
そう心の中で謝罪した。
僕の罪は許されることは無い。
誰も知らない僕だけの罪。
「墓参り、行くか」
もう大人になれない彼らにせめてもの償いをしに。