氷の重み
友人2人の死に悲しまない者もいた。
「祟りにでもあったんだろ(笑)」
そう電話口で笑う彼もまた虐めっ子の1人だった。
ボリボリと氷を齧りながら話している。
話し相手はリーダーの子だろう。
「なら次は俺かお前じゃん」
「何言ってんの、神社に彼奴を行かせようって言い始めたのは彼奴らだろ。僕は関係ないって」
「お前も乗り気だったじゃん」
友人2人が不審な死を遂げたにも関わらず危機感はないようだった。
「やっぱり彼奴が何かしたんだよ」
「彼奴にそんな度胸ある訳ないって」
そんな風に笑いながら氷を貪る。エアコンが故障したせいでこの猛暑の中扇風機だけじゃやっていけないのだ。
「……?」
ふとお腹に違和感を感じた。
なんだかずっしりと重たいのだ。
氷の食べ過ぎだろうか。
「取り敢えず通話切るわ、じゃあな」
そう言って通話を切る。
先程より身体が重たい気がした。
「ぉえ゛……」
急に吐き気がしてシンクに吐いた。
口からポロポロと氷の塊が出てきた。
「え……?」
氷は噛み砕いて飲み込んでいた。
そもそも、1度胃の中に入った氷が氷の形を保ったまま出てくる事などあるのだろうか。
身体がまた重く感じた。その上、エアコンが付いてないというのに身体がひんやりとしてきた。
まるで内側から冷やされているみたいだ。
また気分が悪くなって嘔吐く。
矢張りまたもや氷が出た。
次は大きめの、明らかに有り得ないもの。
食べた時の同じサイズ。噛み砕く前の大きさの氷が出てきた。
氷に映る自分と目が合った。
「なに、これ……?」
身体が冷えて、手が震えて、身体がずっしりとして胃の中に上限まで何か入っているんじゃないかと思った。
せり上る其れは冷たくて、口から湧き出るのは氷ばかり。
そのペースはどんどんと早くなり、吐くより先に口の中が氷でいっぱいになった
鼻でしか息ができなくて、いや、なんならその氷の小さな粒は気管の方に入り込んでいるのかもしれない。
息がしにくくなって、目の前が霞んだ。
何をすればいいかも分からず携帯を掴んだところで意識が途切れた____
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夕方、仕事から帰った母親がみたのは氷を撒き散らして倒れる我が息子。
死因は窒息死だった。
胃の中には氷が胃の中いっぱいに詰め込まれていた。
有り得ないほどに。
その様はまるで、氷を作って貯めておく冷蔵庫のようだった。
「3人目____」