その16
笛の音色で、儀式の始まりが合図された。
笛の音色が行き渡ると同時に、お祝い事で少し騒がしかった会場が、一気に静まり返った。
そして、頃合いを見計らうように、ひな壇に通じる両扉が開いた。
左からはリ・リラ、右からはエリオが入場した。
ゆっくりと中央へ向かって歩く、2人の後ろに介添人が続いた。
式の雰囲気はまたしても変わり、厳かな感じに包まれた。
それは、会場の誰もが固唾を呑んで見守っていた事によるものであろう。
そして、その理由は、リ・リラのドレス姿は神秘的で美しかった為である。
儀式では、リーラングリーンを基調としているので、純白のドレスは一層映えているように感じられた。
何よりも、女王となってからカリスマ性が増したせいか、存在感が凄かった。
その為、誰もがリ・リラの一挙手一投足から目が離せなかった。
エリオの方は……。
こういう席なので、ディスる事は止めましょう。
と言うより、エリオもエリオなりにそれなりに、映えていたと思う。
少なくとも、場違いではないだろう。
エリオは普段あんなんだが、儀式になると不思議と溶け込めるというか、入り込めるというか、そんな感じである。
まあ、そつなくこなしているという言い方はちょっと違うと思うが、まあ、式を盛り上げる程度には行動できていた。
(一生に一度の事なんだから、しっかりやってよね)
リ・リラは、飛びっきりの笑顔でエリオに発破を掛けていた。
(分かっていますよ)
エリオは、リ・リラが自分に何を要求しているかは、手に取るように分かった。
今回は、2人は正面から顔を付き合わせる位置関係にある。
まあ、中央までなのだが……。
その為、お互い、顔を見合わせながら進んでいく為に、何を考えているかは良く分かっていた。
とは言え、もっと甘い感情が漂ってもいいと思うのは、筆者だけだろうか?
リ・リラは、どうしてもエリオの顔を見ると、ライバル心が勝ってしまう。
エリオは、儀式をきちんとやらなくてはならないので、それに対抗する必要がある
うん、そう考えると、残念無念である。
会場にいる面々もそれが分かっている人間が多いのか、今度は緊張感が増してきていた。
結婚式の空気がこんなにコロコロ変わるものなのだろうか?
そして、2人が近付けば近付く程、バチバチしている火花が見えているようだった。
まあ、片方からしか火花は飛んでいないのだが……。
ともあれ、そんなこんななので、会場の招待客達は、2人がお似合いだと思っている。
圧倒的な存在感があるオーラを放つリ・リラ。
圧倒的な残念オーラを放つエリオ。
これらを足し合わせる事により、中和されるのは明白である。
それが、上手く行く秘訣なのやも知れない。
でも、まあ、そんな思惑はどうでも良く、2人は中央に並び立った。
2人の前には、宮内庁長官であるローア伯がいた。
儀式の進行役兼取り纏め役である。
この世界では、結婚は宗教儀式ではない。
なので、教会は一切出てこない。
身内に対する宣誓式である。
なので、取り纏め役は、両名の上役で、既婚者が担う事になる。
ただし、王族に関しては、身内は全国民であり、上役は王になるが、基本的には王はこのような立場には就かない。
でも、まあ、今回は、その女王自身が関わっていてますね……。
まあ、それはともかくとして、王族関係の場合は、宮内庁長官が取り纏め役、つまり、神父やら宮司などの役割を務める。
宮内庁とは、王族の世話係が主任務なのでそう言う事になるのだった。
取りあえず、説明はこれまでです。




