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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
31.2つの終わりと2つの始まり

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その15

 それに対して、リ・リラの控え室は平和だった。


 リ・リラの介添人候補は、実はほとんどいない。


 貴族の中から選ぶと、それだけで政争の具にされてしまう。


 したがって、仲が良い人間とは言え、貴族のご令嬢を選ぶ訳には行かなかった。


 と言うと、身内にとなる訳だが、今更ながら自分に身内と呼べる人間が少ない事にリ・リラは気が付いた。


 そう、今、純白のドレスを着付けてくれているリーメイしかいないのだった。


(向こうは色々といるのに、わたくしの方は、リーメイだけ……)

 リ・リラは、エリオに対してライバル心を抱くのだった。


(やれやれ、また下らない事を考えているのでは……)

 リーメイは、鏡に映るリ・リラの表情を見て、そう感じた。


 だが、何か言う訳でもなく、支度の方を進めた。


 着付けていて、厄介なのはリ・リラの豊かな金髪だった。


 絡まないように、ドレスに挟み込まないようにしなくてはならない。


 髪なので、丁寧に慎重に扱わなくてはならない。


 でも、まあ、完璧な侍女であるリーメイには、お手の物である。


 髪をふわっと持ち上げた後、ささっと、ドレスを着付けた。


 そして、色々と確かめながら微調整を続けるのだった。


 その見事さに、リ・リラは考えを改めた。


(人数がいても、仕方がないわよね。

 こちらには、最強の介添人リーメイがいるのだから!)

 リ・リラは、先程まで悲観的に考えていたが、一気に復活した。


 そして、勝ち誇っていた。


(やれやれ、何を対抗しているのやら……)

 リーメイは、具体的には何を考えているかは分からなかったが、何に対抗しているかは手に取るように分かった。


 とは言え、侍女らしく澄ました顔で、リ・リラの身支度を続けた。


 主の性格を他所に置きながら、自分の仕事に専念できる。


 本当に、最強の侍女である。


 リーメイは、一旦リ・リラから離れて、遠目からその姿を確認した。


 そして、問題がある箇所を直す。


 それを何回か、繰り返した後、手を止めた。


「如何でしょうか?リ・リラ様」

 リーメイは、畏まりながらそう尋ねた。


 尋ねられたリ・リラは、ゆっくりとスツールから立ち上がった。


 そして、ドレッサーの中の自分を確認した。


「問題なわよ」

 リ・リラは、笑顔でそう答えた。


 リーメイはその言葉を聞くと、一礼した。


 リ・リラの方は、リーメイの方に向き直った。


 ふわりとスカートの裾が優雅に舞った。


 それは、侍女のリーメイでさえ、ドキッとさせられる仕草であった。


「ありがとうね、リーメイ」

 リ・リラは、更に笑顔でお礼を言った。


「とんでも御座いません」

 リーメイは、主にお礼に恐縮した姿勢を見せた。


「リーメイがいなかったら、わたくしはここにはいなかったでしょう」

 リ・リラは、更にお礼の続きを述べた。


(んっ?)

 リーメイは、意外に思った。


 言われたお礼が、着付けのお礼ではなかったからだ。


 まあ、それも含まれてはいたが、それ以上のものだと気が付いた。


 そう、エリオとの結婚できる事に対してのお礼だった。


「とんでも御座いません。

 こうなる運命だったのだと、私は思っております」

 リーメイは、そう応えた。


 まあ、これまでの経緯を照らし合わせてみれば、色々と文句はあるだろうが、ここで言うのは、野暮というものだろう。


 その辺は、きちんと弁えているから、最強の侍女なのだろう。


「ありがとう」

 リ・リラの笑顔は留まる事を知らなかった。


(でも、まあ、これだけ美しい姿を見せされたら、細かい事はどうでもいい事になりますね)

 リーメイは、心からリ・リラの幸せを喜んでいた。


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