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その7

 エリオ達一行は、会議室に通された。


 そこで、一行は驚いた。


 法王がいたからだった。


「これは猊下、如何なさいましたか?」

 エリオは驚きながらも先ずはそう尋ねた。


「いや、先に貴公と話をしておこうと思って」

 法王はそう言うと、エリオ達に席に着くように手で促した。


 エリオ達は入口のそばで固まっていたが、エリオが歩き出すと、一行はその後に続いた。


 法王の前に縦長のテーブルがあり、後ろには椅子が並べられていた。


 配置としては、第1次スワン島沖海戦の後の講和会議と同じ配置であった。


 ただ、後ろの椅子には枢密院のメンバーは誰もおらず、傍らに秘書官長がいるだけだった。


 エリオは、縦長のテーブルの席、法王から見ると右手に着いた。


 その後、一行は、ローグ伯、マイルスター、シャルスの順で席に着いた。


「この会談は非公式なものと考えて貰いたい」

 法王は、一行が全員、席に着いた途端にそう言った。


「畏まりました」

 エリオは、間髪入れずに法王の要望を承認した。


 普段、ボケラッとしている分、こう言う時は素早い対応を示す。


「感謝する」

 法王はそう言うと、手で給仕係に合図した。


 給仕が係達は、エリオ一向に次々とお茶を出していった。


 先に、お茶が出るという事は、労いの意味もあるのだろう。


 少なくともエリオはそう感じた。


 そして、まずは一服してからと言う事になった。


 とは言え、法王を前にして寛ぐという訳にはいかずに、そういう空気を察した法王も直ぐに口を開いた。


「まずは、艦隊を派遣してくれた貴国に感謝申し上げる」

 法王は、先ずは感謝の言葉から入ってきた。


「いえ、スワン教徒としては当然の事です」

 エリオは、恭しくそう答えた。


 とってもわざとらしかった。


 そう感じているのは、マイルスターとシャルスだけではなかった。


 当然、法王はニヤリとした。


 だが、何も言わなかった。


 スワン教は八百万の多神教なので、かなり寛容な宗教である。


 例え、水葬を行うクライセン一族でさえも、その宗教の範疇としてしまう。


 まあ基本教義もないようなものなので、その辺はユルユルだった。


 ある意味、目の前にいる現法王が教義であるが、それを誇示する事はない。


 そして、現法王は歴代でもかなり寛容な人物である。


 まあ、それはそれとして、エリオは何か気まずい雰囲気を察した。


「とは言え、今回、親近をお騒がせしていまい、申し訳ございませんでした」

 エリオは雰囲気に乗るかのように、そう詫びた。


(こう言う所は、流石だな……)

 マイルスターは、和やかな表情で呆れていた。


 勿論、褒めているつもりである。


「いや、なに、今回の事は、貴公のせいではあるまい」

 法王は、やんわりとそう言った。


 再三出ている今回の事とは、第2次スワン島沖海戦のことである。


「……」

 法王の言葉を聞いたエリオはホッと胸をなで下ろそうとした。


「あ、いや、確かに貴公のせいやも知れぬな」

 法王はハッとして、何かに気付いたようにそう言った。


「!!!」

 エリオは、何か変な擬音を出すのを堪えた。


「貴公程の者に挑みたいという輩は、いくらでもいるという事だろう」

 法王は続けて言って、結論付けてしまったようだった。


「???」

 エリオは、戸惑っていた。


 無論、何を言われたか分からないからだった。


 が、当然、この場にいたエリオ以外には真実が分かっていた。


 エリオ艦隊がその場にいたので、叩き潰そうと絡んだ結果、第2次スワン島沖海戦が勃発したと言う事を。


 それを法王でさえ、見抜いていた事に、エリオ以外の一行は笑いを堪えていた。


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