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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
28.アメット海海戦

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その19

 一方的に撃たれまくっているサラサである。


 憤慨しているどころか、時間が経つにつれて悪い顔になっていた。


 正にヒールである。


(お嬢様、顔が怖いですよ……)

 バンデリックは、もう嫌な予感しかしなかった。


 でも、まあ、基本見た目はロリっ子ではある。


 なので、状況を無視して見ていると微笑ましくも感じられる。


 いたずらに夢中になっているロリっ子である。


 だが、現実には、そんなほのぼのするような場面ではない。


 人を騙す事は、いけない事だと教えられるのは常である。


 だが、戦場では、敵を罠に嵌めて、戦果を上げた者が賞賛される。


 罠に嵌まった者は、嘲笑される。


 戦闘行為自体が如何に狂っているかが物語っている。


 と言う理屈はさておき、サラサは何も考えずに一方的に撃たれまくる筈はなかった。


 全ては、戦略目標を達成させる為の布石であった事は言うまでもなかった。


 サラサ艦隊は、ワルデスク艦隊の砲撃により、陣形を乱して、飛散解体しているように見えた。


 ここまでは、第1の事象としては正しい。


 だが、次の事象としては正しくはなかった。


 陣形からはぐれた艦は、ウロウロとしながらも次の配置へと向かっていた。


 ウロウロしていたのは、敵に的を絞らせない為である。


 サラサ艦隊の陣形は、ワルデスク艦隊と接触した時の縦長の陣形から、弓形陣へと徐々に変化していた。


 つまり、敵艦隊を半包囲に置ける陣形になっていたのだった。


 それをサラサはじっと待っていたのだった。


(本当に、成長したな……)

 バンデリックは、何故か上から目線で感動していた。


 と言うか、一緒に戦ってきたのだから、あんたもそうだろうと言いたい所である。


 まあ、それはともかくとして、やはり、エリオとの影響が大きいだろう。


 それまでのサラサは、完全に速攻型だった。


 速攻で勝ててしまったので、そのスタイルを変える必要がなかった。


 だが、スワン島沖海戦を見て以来、その考えを修正せざるを得ない状況に陥った。


 陥ったのだが、陥るだけではなく、見事に自分の力量を上げる事に成功したのだから、サラサもまた尋常ではない。


 エリオとサラサの関係は、正に好敵手ライバルと言えた。


 だが、2人にはその意識は全くなかった。


 それどころか、お互いの存在がない方がいいとさえ思っていた。


 何せ命のやり取りをしているのだ。


 そんな綺麗事で済む筈がないと、2人共身に染みて分かっているからだ。


 そして、今後、もっと酷い事になる予感も持っていた。


 まあ、2人の主人公の話なので、長々書いたが、目の前の事を忘れてはいけない。


 物語が進まなくなるからだ。


 サラサは、ふとバンデリックを見た。


「!!!」

 バンデリックは、何も言わずにただ頷いた。


「全艦、砲撃準備!

 面舵一杯!」

 サラサは、鬱憤を晴らすかのように、高らかに命令を下した。


「よろしいのですか?もう少し引き付けた方が、敵に打撃を与えられますが」

 バンデリックは、先程頷いたにも関わらず、確認を取ってきた。


「いいのよ、戦闘海域からの離脱が目的だからね」

 サラサは、そう説明したものの、分かっているでしょうという微妙な表情だった。


「了解しました」

 バンデリックの方は、笑顔でそう答えた。


 艦隊は、これまでの無様な運動から一転し、一糸乱れぬ艦隊運動で、右舷に回頭した。


 それは、後ろ向きだった艦隊が、敵艦隊に砲門群を見せ付ける行為だった。


 そして、艦隊運動がピタッと止まるかのように感じられた。


「砲撃開始!」

 サラサは、その瞬間に、攻撃命令を下した。


 ドッカーン!


 全艦の砲門が火を噴いたが、音はほぼ1つだけ。


 サラサ艦隊の練度が確実に上がっていた。


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