その26
翌日、バンデリックは教会にいた。
目を覚ましたサラサと決めた我が子の真名を預ける為である。
バルディオン王国では、命名式みたいなものはない。
真名は、両親だけで決め、周りには漏らさないのが通例である。
そして、その真名は3歳になるまで教会の預かり物とするのであった。
教会には、父親もしくは親族の男性が赴く事になっていた。
この場合、貴族も平民も関係なく、早いもの順で受け付けられる。
バンデリックの場合、前に1人いただけだった。
その人が終わった後、部屋に呼ばれた。
「バンデリック様、まずは、無事のご出産おめでとうございます」
部屋の中に入ると、神官がそう声を掛けてきた。
「ありがとうございます」
バンデリックは、神官に近寄りながらそう答えた。
「では、新生児の真名をここに」
神官はそう言うと、机の上に紙を置くように手を差し伸べた。
バンデリックは、包みから真名が書かれた紙を取り出した。
そして、言われたとおり、真名が書かれた紙を神官の前に置いて見せた。
紙には、『イーマ』と書かれていた。
「はい、問題ございません」
神官は、真名を確認するとそう答えた。
「ありがとうございます」
バンデリックは礼を言うと、真名が書かれた紙を再び包んだ。
そして、その包みを神官に渡した。
「確かに承りました」
神官は、真名の書かれた紙を受け取り、一礼した。
そして、恭しく両手に乗せて、上に持ち上げると、右を向いた。
右には、神官補がおり、それを両手で受け取った。
神官補は、回れ右をすると、神官より更に恭しく天高く両手を挙げながら、奥の部屋へと入っていった。
真名はそこに保管されるようだった。
バンデリックは、それを目で追っていき、神官補が見えなくなるまで見ていた。
「変な話で、恐縮ですが、真名に問題がある場合はあるのでしょうか?」
バンデリックは、変な興味を持ってしまっていた。
「……」
神官は、バンデリックをマジマジと見て、一瞬言葉に詰まってしまった。
だが、柔やかな表情になり、
「今の所、そういった真名を目にして事は御座いませんね」
と答えた。
「そうですか……」
バンデリックは、我ながら変な事を聞いたなと感じていた。
「ですが、先々代の話になりますが、邪悪なる者の名を付けようとした者がいたと聞いております」
神官は、柔やかな表情から曇った表情に変わった。
「左様でしたか……」
バンデリックは、その事を聞いて驚いた。
「ですから、こうして確認させて頂いております。
生まれてきた子達には、余計な苦労を背負ってほしくないですからね」
神官は、神妙な表情でそう言った。
「確かにその通りですね」
バンデリックは、この時、親としての重みを改めて感じたのだった。
2人の迷将エリオとサラサの子が誕生した。
この次世代の子達は、この後、どのような物語を紡いでいくのでしょうか?
ええっと、不安しかないですかねぇ……。
第3巻はここで終了です。
ここまで読んでいただき、ありがとうございます。
第4巻は、現在、鋭意(?)執筆中です。
ストック出来次第、アップしますのでよろしかったら、また、寄っていって下さい。




