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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
39.2つの王国の未来への道
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その5

 エリオは、御前会議が終わると、リ・リラの元に戻った。


「どうだったの?」

 部屋に入ってきたエリオに、リ・リラはすぐに報告を求めた。


 まあ、そんな堅苦しいものではない。


 どちらかと言うと、夫婦の会話の一環と言った感じである。


 要するに、今日は何があったの?と言う感じだ。


「う~ん、特に問題となる事はなかったよ」

 エリオは、気のない風と言うより、残念というか、いや、何とも言えない表情をしていた。


 エリオは意外に多く、会議の予想展開を外す。


 予想を外したので、何でこうなったんだろうという表情をしていた。


「まあ、そうでしょうね」

 リ・リラは、やっぱりねと言った表情をしていた。


 エリオとは、対照的であり、会議の展開は予想通りと言った感じだった。


 まあ、いつもだったら、エリオの予想が当たらずに、自分の予想があったのだからもっとドヤっていただろう。


 だが、今はそんな些細な事を気にしている場合ではなかった。


 リ・リラは、ゆったりと椅子に腰掛けながらお腹をさすっていた。


 お腹は大分大きくなり、流石のリ・リラも立ち上がるのにも苦労していた。


 そんな状況ではあるが、お腹を愛おしくさすっている様子から、既に母性に目覚めていた。


 なので、エリオに勝つとか、大した議題がある訳でない会議などは些細な事に感じられているのだろう。


「体の方は大丈夫?」

 エリオはリ・リラにそう聞いた。


 エリオはエリオで、リ・リラの様子を見ていると、リ・リラの気持ちが伝染したのか、会議の事はどうでも良くなってきた。


「ええ、問題ないわ。

 ここまで、ずっと順調だし、このまま行ければいいと思っているわ」

 リ・リラは、エリオに気遣って貰い、素直に嬉しかった。


「それは良かった」

 エリオは、自然と笑顔でそう受け答えた。


「ふふっ……」

 リ・リラも笑顔でそう返した。


 夫婦の絆を確かめ合っていると言った感じだろう。


 ……。


 2人は珍しく黙って見つめ合っていた。


「あっ、俺に出来る事があったら……」

 エリオは、珍しく気の利いた言葉を掛けようとした。


 が、途中で詰まってしまった。


「って、やれる事って、ほとんどないんだよな……」

 エリオは、気付いてしまった。


 まあ、エリオである。


 エリオである故に、これまでも同じ質問を繰り返していた。


 その度に、やれる事はほぼ無い事に気付かされていたのだった。


 エリオらしくないって?


 鈍感無頓着なエリオではあるが、リ・リラに関してはそうではない。


 と言うか、そうではなくなった?いや、まだまだ?


 まあ、それはともかくとして、一応、気遣いが出来るようにはなってきている。


 こう書いていると、エリオは人間失格のような感じなのだが、まあねぇ……。


「いえ、十分よくやってくれてるわよ。

 王権の代理をやってくれるだけでも、私にとってはかなり有り難いわよ。

 軍の総司令もやらなくてはならないから、大変でしょうに」

 リ・リラは感謝し、逆にエリオを気遣った。


「ああ、確かに事務仕事は大変になったけどね」

 エリオは、自分の現在の状況を思い出していた。


 数ヶ月前からリ・リラの代理の仕事が増え、この1カ月間は、完全にリ・リラの仕事の全てをこなしていた。


 怠惰なエリオではあるが、何故か仕事はこなしているのであった。


「それは、悪いとは思っているわよ」

 リ・リラは、笑顔でそう答えた。


 これは、完全に悪いと思っていない表情である。


 寧ろ、もっと働けと言っているようでもある。


 頑張っているがいつも報われないエリオを象徴している会話であった。


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