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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
28.アメット海海戦

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その12

 さて、油断しまくっているエリオである。


 現状をシャルスから報告を受けながら何もしていない。


 ぼけらっー。


 テキパキ、テキパキ……。


 ぼけらっとしている人間1人に対し、周りの人間は忙しそうに働いていた。


 艦隊は現海域に留まっているとは言え、結構やる事はある。


 況してや、ここは一応戦場……、いや、戦場になるかも知れない場所だ。


 早々のんびりしてはいられない。


 とは言え、本人の名誉のために言っておくが、エリオは何もやっていない訳ではない。


 既に命令を出し、今後の想定を終えていたので、何もやる事がなかったのだった。


 あ、でも、名誉なんてないか……。


「閣下、報告します。

 バルディオン第2艦隊が接近中!

 間もなく視認できると思われます」

 シャルスがそう報告してきた。


「うん……」

 エリオは、気のない返事をするだけだった。


「……」

 隣にいるマイルスターは、呆れていた。


 が、ある変化に気が付いていた。


 地図上の駒が、動いていたのだった。


 そして、サラサ艦隊の行く手を阻むように、別の駒が配置されていた。


 - 艦隊配置 -


    スワン島


    LC

           EC

     C2OR   SR




        C1


LC:クライセン西方艦隊、EC:エリオ艦隊

OR:オーマ艦隊、SR:サラサ艦隊

C1:ワルデスク艦隊、C2:フランデブルグ艦隊


「また、シーサク第1艦隊がバルディオン第2艦隊の南を航行中。

 ワタトラへの帰還を阻止する動きにでています」

 シャルスが次の報告をした。


「うん……」

 エリオは、気のない返事を繰り返すだけだった。


 自分とは無関係なの事なので、明らかに関心がないようだった。


(俺達はここにいる意味はあるのだろうか?)

 エリオはそう思っていたが、この事は、当然、マイルスターとシャルスに見透かされていた。


 流石に、『漆黒の闇』である。


 本当に、闇深いの出会った。


「……」

 マイルスターは、それでも何も言わなかった。


 エリオ艦隊だけではなく、リンク艦隊に対しても戦闘に巻き込まれる可能性がなかったからに他ならなかった。


 これが危機的状況ならば、エリオのケツを叩いていた。


 いや、その前に、エリオの指示が飛んでいるか……。


 ある意味、エリオのこの態度は、危険度を測るバロメーターである。


 その為、艦隊は緊張感が漂っているが、過度の緊張状態にはなっていなかった。


 便利なバロメーターである。


 それはともかくとして、マイルスターは、他の2つの駒にも目が行っていた。


 バルディオン第1艦隊とシーサク第2艦隊にである。


 艦隊番号は、バルディオン艦隊はともかく、シーサク艦隊の方は、エリオ達が勝手に付けた呼称である。


 第1艦隊はワルデスク艦隊、第2艦隊はフランデブルグ艦隊である。


 両艦隊は、サラサ艦隊の西に位置しており、もつれ合うような感じで配置されていた。


 戦闘が始まるのは時間の問題、と言うより、普通だったら、もう既に戦闘が始めている距離感だった。


「こちらの艦隊同士はどうなりますかね?」

 マイルスターは、オーマとフランデブルグの艦隊を指差しながら尋ねてきた。


「どうなるかねぇ……」

 エリオは、他人事のようにそう答えた。


 まあ、所詮他人事である。


 とは言え、それだけではなかった。


 予想する事で、行動を制限するのを抑止する意味もあった。


「そうですか……」

 マイルスターは、エリオの意図をよく理解したため、和やかにそう言うに留めた。


「ただ、この2つの艦隊は、こうやって東に進んでくるだろうね。

 どちらも今は自制が効いているけど、スワン島を離れたらどうなるのやら」

 エリオは懸念点があるのか、話を付け加えた。


 ただ、それは自分達に降りかかる懸念点ではないようだ。


 その証拠に、エリオは指示を全く出さなかったからだ。


「砲撃戦は離れてからと言う事ですね。

 そして、その砲撃戦がどのように展開するかですね」

 マイルスターは、エリオの意図を十分汲み取ってそう理解した。


「これまでの戦い振りを見る限り、この2人は、激烈な砲撃戦にはならないと思うけど……」

 エリオはそう言いながら、今度は違う方向に目を向けた。


 サラサとワルデスクの艦隊にだ。


「こちらはそうも行かないと?」

 マイルスターは、エリオの視線が移ったので、そう尋ねた。


「この艦隊の動きは、やる気満々、ありありと言った所だからね」

 エリオは、やれやれ感満載でそう言った。


「……」

 マイルスターは、気にしないでいい言葉に着目してしまったため、沈黙してしまった。


 エリオとは、真逆に位置する言葉にだ。


「拘束に失敗した時点で、しれっと何もなかった事にすればいいのに、何故恥の上塗りみたいな真似するんだろうね」

 エリオは、黙ってしまったマイルスターを他所に、話を続けた。


 それにしても、結構酷い事を言っている。


「まあ、面子というものだがあるからでしょう」

 マイルスターは、意外と皮肉っぽく、いつもの和やかな表情でそう言った。


 皮肉ったのは、目の前の人物であるのは言うまでもなかった。


「俺にはよく分からないんだよね、その感覚が……」

 エリオは、皮肉を言われたのには全く気が付かずにそう言った。


 そして、完全に合理主義的な意見であった。


(確かに、面子は馬鹿馬鹿しいでしょうが、全くないのも問題ですよね)

 マイルスターは、その問題児を目に前にしていた。


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