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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
38.マグロット攻防戦 第2幕

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その27

 スヴィア艦隊の各司令官とその幕僚達は会議を開いていた。


 サラサが後方に下がったことにより、手応えを感じつつあった。


「ベレス侯、やはり、聞こうが言ったとおり、ワタトラ伯はかなり厄介な人物だったのだな」

 ウェルナー侯が、議論が落ち付いた所で、そう言った。


「……」

 ベレス侯は、苦笑いするだけだった。


 セッフィールド島沖海戦の事を思い出していたのだろう。


 あまりいい思い出ではないのは確かだった。


「そうだな、あれが下がってくれたお陰で、こちらもやりようが出てきた」

 ロドリンゴ侯が、ベレス侯の代わり(?)に同調した。


 サラサがいないお陰で、戦いは活発化した。


 現在、お互いの損害は5隻と同数だが、数が少ない分、帝国艦隊の方が不利になりつつあった。


 なので、このまま押し切れる可能性が出てきたのだった。


「急報!」

 会議室の外から、突然叫び声が上がった。


「何事だ!」

 ロドリンゴ侯は、扉に向かって叫び返した。


 当然、会議室の空気は一気に緊迫した。


 扉がゆっくりと開かれると、1人の伝令が入ってきた。


「構わん、直ぐに報告せよ」

 ロドリンゴ侯は、伝令にそう言った。


「はっ」

 伝令は、一旦敬礼した。


 そして、その後、

「敵、中央艦隊が増強。

 中央艦隊全艦が揃った模様です」

と報告した。


 !!!


 思わぬ報告に、その場の全員が硬直した。


 これは一気に状況が一気に変わったことを意味していた。


「こちらの封じ込めが成功したので、一気に勝負を賭けてきたという事か……」

 ウェルナー侯が、まず口を開いた。


「その通りだな。

 これで、バルディオン艦隊が戻ってきたら、戦局が一気に決まりかねない……」

 ロドリンゴ侯は、戦況を正確に把握していた。


「……」

 ベレス侯は、2人の言うとおりだと思ったが、何か引っ掛かっていた。


 一種のデジャブ?


 いや、サラサに一度酷い目に遭わされているのだ。


 それは、こんなものではないような気がしてきたのだった。


 そう、こんなまともにぶつかってくること自体が意外すぎると感じ始めていた。


「急報!」

 開いたままの扉から、また別の伝令が入ってきた。


「何事だ……」」

 ロドリンゴ侯は、ウンザリした様にそう言った。


 今は、それどころではないと思っていたからだ。


「ヒューダボルズが襲撃を受けました。

 輸送艦が全滅しました」

 伝令は、ロドリンゴ侯の反応に戸惑いながらも、自分の職務を全うした。


 ???


 前の報告以上に、その場の全員が硬直していた。


 何の報告を受けているのか、理解出来なかったからだ。


 それは、前に急報を告げた伝令も、呆けていたのが、それを最も表しているのかもしれない。


「ロドリンゴ侯、マライナ侯に連絡を。

 直ちに全軍、マグロットからの撤退すべきだ」

 ベレス侯が、いち早く立ち直った。


 あまり嬉しくない経験が、役に立った場面でもあるが、それも嬉しい事ではなかった。


 実際、ベレス侯は苦渋に満ちた表情をしていた。


 とは言え、状況を完全に把握した以上、座している訳にはいかない。


 一刻も早く、そう、サラサがここにやってくる前に、艦隊はここを脱出しなくてはならないからだった。


 陸軍は兎も角、海軍の補給はこれで完全に途切れた。


 このままマグロットに居続けるのは、いずれ弾切れを起こす事は決定したのだった。


 今なら、まだ弾薬は十分であり、3個艦隊対3個艦隊である。


 損害が出るだろうが、全滅は避けられるだろう。


 ただ、サラサが到着した場合は、その損害では済まないだろう。


 そうなると、一刻も早く出撃するべきであった。


 そして、艦隊がいなくなるという事は、陸軍戦力にとっても不利処ではない。


 ほぼ勝ち目がなくなるのである。


 まあ、簡単に言ってしまえば、サラサのヒューダボルズ襲撃で、この戦いは決したという事である。


 これ以上抵抗しても、最良の結果で引き分け、それ以下の結果だとほぼ全滅しか道がなくなった。


 ならば、出来るだけ損害を抑えての全軍撤退が最良の手であった。


「!!!」

 ロドリンゴ侯はベレス侯にそう進言されて、全てを悟ったようだった。


 だが、直ぐには言葉に出せないでいた。


 全身をワナワナと震わせていた。


 それは、ウェルナー侯も同じだった。


 だが、スヴィアもそれなりの王国であり、それを支えている人材も優秀である。


 無念であるが、負けは負けときちんと認める度量があった。


「直ちに、全軍の撤退準備を

 マライナ侯に連絡を取れ」

 ロドリンゴ侯は、無念ながらもそう命令を下した。


 こうして、一気に、マグロット攻防戦は終結したのだった。


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