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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
38.マグロット攻防戦 第2幕
222/263

その12

 フィルタに並べられたコマを眺めながら、サラサは特に咎める事をしなかった。


 当のフィルタがとても焦っていたからだ。


 何か言わなくても、自分が何をすべきだったのかが分かったようだという認識だろう。


 そして、そのフィルタは、何も言われなかったので、一層心に留め置く事になった。


 まあ、サラサにしてみれば、こういった性格なので、敢えて言わなかったのだろう。


 サラサも大人になったものである。


「予定通りという事でしょうか?」

 サラサが何も言わないので、バンデリックがいつも通り促した。


「まあ、そういう事ね」

 サラサはそう言ったが、あまり嬉しそうではなかった。


 まあ、数的不利な状況で嬉々としている人物はいないだろう……。


 と言いたい所だが、目の前の人物は……。


 それはそれとして、何か、気に入らない事でもあるのだろうか?


「……」

 バンデリックは、無言でサラサの次の言葉を促した。


「気になると言えば、スムーズに行きすぎている事かしらね」

 サラサはバンデリックに促されたので、本音を語った。


 やはり、サラサは度し難い。


 どう見ても、現状は、不利である。


 それなのに、スムーズという言葉が出てくる。


 まるで、今の状況を意に介していないようだった。


 と言うより、全く意に介していない。


 相手としては、やりにくいだろう。


 現に、逃げようとしたら、嫌がらせのように、進路を妨害する砲撃をしてくる。


 ならば、数に任せて攻勢を仕掛けようとすると、その出鼻を挫くように、砲撃を集中してくる。


 補給艦隊を背に背負っていて、自由度がかなり低い状態とは言え、スヴィア艦隊としてはかなりのストレスである。


 そして、サラサの澄ました顔を見たならば、更に憤慨するのは間違いないだろう。


 この辺の性格の悪さは、迷将同士似てくるのかもしれない。


 もう一人は今何をしているのか、知らないが……。


「しかし、敵も陣形を崩さず、こちらの攻撃を上手く去なしております」

 バンデリックは、サラサにそう言った。


「そうなよね。

 これだけ強固な陣形と粘り強さ。

 なかなかなものよね」

 サラサは、バンデリックの言葉に同調した。


 この指揮官は、数的不利な状況で、有り得ない言葉を話していた。


 その妙な空気に、フィルタは呑まれそうになっていた。


 そっちは、ダメだよ。フィルタ君。


 人間として、戻れなくなるよ。


「で、このまま続けますか?」

 バンデリックは、そう尋ねた。


 変な雰囲気を醸し出しているのを助長しているように見えても、流石に参謀長である。


 問題がないかの確認は怠る事はしなかった。


 それを見て、フィルタは少し安心した。


 そう、そっちの道だよ、フィルタ君。


「続けましょう。

 下手に、違う事をやって、付け込まれるのは避けたい」

 サラサは、そう答えた。


 フィルタは、ここで、サラサがきちんと数的不利な状況である事を認識している事を知った。


 まあ、サラサもそこまで変ではないと言う事である、たぶん……。


 ただ、サラサが断言した事で、艦隊の空気が一層引き締まった。


 去なされ続けているので、艦隊の空気としては迷いが生じてくる頃である。


 だが、去なされ続けても、今まで通り続けるという明白な意思があるならば、迷いがなくなる。


 サラサ自身は、端っからそうなのだが、まあ、迷将なので全体に伝わらない事もある。


 それを補う意味では、やはり、バンデリックなのだった。


 このまま膠着状態を続け、東から接近しつつある中央艦隊によって、戦局がかわるのだろう。


 そういった戦いをしている最中だった。


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