表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
38.マグロット攻防戦 第2幕

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

219/263

その9

「閣下、間もなく射程圏内に入ります」

 ロダは、遠慮勝ちにそう言った。


 ロダ自身、戸惑っているのだろう。


 長年、副官を務めてきているが、こんなに決断に迷っている2人を見た事はなかった。


 しかも、現状は明らかに有利な状況である。


 そこまで、警戒する必要性を感じるべき場面なのだろうか?


 とは言え、戦いは何があるか、分からない。


 セッフィールド島沖海戦では、第4艦隊が敗北した。


 それにより、ベレス侯は、明らかに以前のベレス侯ではなくなっていた。


 そして、サキュス沖海戦。


 それを分析した結果、2人の迷将は、自分達と格が違うという認識になっていた。


 迷将達の汚染力は強烈である例と言える。


 それに加えて、敵将であるがルドリフ・ハイゼルが戦死した事も影響を与えていた。


 徹底的に抗っていたルドリフだったが、最後には虚しく散ったとスヴィア側には映っていた。


 つまり、もっと工夫して戦わないと、やられてしまうと言う認識になったのだろう。


 それが、こういった場面に現れてきてしまった。


「全艦、砲撃準備」

 ロドリンゴ侯は、命令を下した。


「閣下……」

 マサトの方は、その命令に驚いていた。


 まだ、検討が済んでいないからだ。


「現状、どう割り引いてみても、こちらが有利。

 今が絶好のチャンスである事は揺るぎない」

 ロドリンゴ侯は歴戦の勇士らしく、覚悟を決めた。


「確かに……」

 マサトは、ロドリンゴ侯の決断に頷いた。


 ここで、砲撃を仕掛けないのは、どう見てもおかしかった。


 そして、仕掛けない場合の方が、不味い事態に陥るのは明白ではある。


 友軍が今まさに戦っているのだから。


「全艦、砲撃準備!」

 ロダが2人の意向を確認した後、命令を復唱した。


 そして、復唱した命令は直ちに全艦に行き渡っていった。


「とは言え、雰囲気を持っている相手だ。

 慎重かつ大胆に行かねばなるまい」

 ロドリンゴ侯は圧倒的有利な場面に拘わらず、慎重さを崩す気はなさそうだった。


「!!!」

 マサトの方も覚悟を決めたように、頷くだけだった。


 第2艦隊は、サラサ艦隊と第3艦隊の交戦海域に順調(?)に接近していった。


 今の所何もない……。


 慎重になっているせいか、色々なものに目が行く。


 その度に、全く戦況に関係がない事を知るのだが……。


 傍から見ると過剰なのだが、やっている本人達は真剣である。


 何せ、生死が掛かっているのだから。


「有効射程内に到達」

 ロダが、緊張しすぎている空気の中、そう告げた。


「よし、全艦砲撃開始!」

 ロドリンゴ侯が、直ぐに攻撃命令を下した。


 ドッカーン!!


 砲撃音が鳴り、砲弾がサラサ艦隊目掛けて飛んで行った。


「ここまでは何とか……」

 マサトは、安心していいのか、微妙な感想を漏らした。


 普段こう言った事を言う人物ではないが、極度の緊張感に包まれた雰囲気のせいだろう。


「ああ……」

 ロドリンゴ侯も、その雰囲気に呑まれてそう同意した。


「バルディオン艦隊、転進!

 東に進路を変更しています!」

 報告したロダが驚いていた。


 サラサ艦隊は、第2艦隊の砲撃を待っていたかのように、一気に距離を取ってきた。


 いや、逃げ出した?


「閣下!」

 マサトは唖然としていたが、直ぐに状況を飲み込んで、ロドリンゴ侯に声を掛けた。


「分かっている!」

 ロドリンゴ侯はそうは言ったが、一瞬、放心状態になり掛けていた。


 しかし、マサトの呼び掛けに直ぐに応じた。


「全艦、突撃!

 まずは、第3艦隊との合流を果たせ!」

 ロドリンゴ侯は、絶好のチャンスを逃す事をしなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ