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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
38.マグロット攻防戦 第2幕
211/263

その1

 ウサス・バルディオン連合艦隊は、マグロット周辺の制海権の奪取には成功していた。


 だが、これは一時的なものに過ぎないのは言うまでもなかった。


 それは、マグロット沖海戦において、双方決め手を欠いたままに起因していた。


 その結果、スヴィア艦隊をマグロットに押し込める事は成功したものの、ウサス・バルディオン連合艦隊はそれ以上の事が出来ないでいた。


 つまり、スヴィア側の戦力が健在である以上、現在の制海権はどっちに転んでもおかしくはないのである。


 また、強引に仕掛ける手もなくはなかった。


 サラサ艦隊にはその能力はあるだろう。


 だが、その際の損害を考えると、そんな事はしたくはないというのが、サラサの本音だろう。


 これは、単なる手伝い戦。


 ここで、名を挙げても、自分が勲章を貰えるだけで、何の益もないことはよく分かっていた。


 なので、エリオ同様に、なるべく楽に事を運びたいと考えていた。


 そして、その信念の元に行っているのが、現在の海上封鎖である。


 これによって、これまで海上からの補給が途絶えたのだった。


 スヴィア軍としては、直ちに影響が出る訳ではないが、只でさえ細い補給線である。


 近いうちにその影響が出てくるのは否めなかった。


 ただ残念なことがある。


 補給線に関しては、ウサス・バルディオン連合艦隊も結構長いのである。


 どっちもどっちと言った感じか?


「結構楽な方法かも知れないけど、意外と我慢比べになりそうね」

 サラサは、艦の縁に体を預けていた。


 でも、誰に話し掛けたのだろうか?


 まあ、それはそれとして、その傍らにはフィアナがいた。


 サラサを四六時中監視しており、朝昼晩は必ず、フィアナの問診を受けていた。


 サラサは面倒な事だと思いながらも、自分だけの事ではないので、素直に従っていた。


 とは言え、お腹が大きくなってきた自覚はあるものの、その他は何ら変わっていないと感じていた。


 つわりは、どうやら軽い方で、時折込み上げてくるもののがあるが、直ぐに治まった。


 なので、サラサなりに覚悟していた事は無駄になっていた。


 その事をうっかり話した時、フィアナに烈火のように怒られたのは言うまでもなかった。


 傍で見ていたバンデリックが、サラサがこれ程怒られるのを見た事がないと言った具合で、微笑ましく見ていた。


 まあ、バンデリックもバンデリックである事は言うまでもないよね。


 そのバンデリックであるが、今は席を外していた。


 そして、フィルタもまた同じく席を外していたのだった。


 2人同時にサラサのそばを離れているのは、バンデリックがサラサのいない所で、フィルタにアドバイスをしているのだろう。


 サラサはそれを知っておきながら、特に気にする事はしなかった。


 この辺はサラサが大人になった証拠であろう。


 そんな中、噂のバンデリックとフィルタが、サラサ達の元に駆け付けてきた。


 それを見たサラサは、縁に預けていた体を引き戻した。


「何事?」

 サラサは、2人が到着すると同時に質問した。


 とは言え、その表情は何が起きたのか不安であるという表情ではなかった。


 明らかに状況の変化を予想している表情だった。


「スヴィア第3艦隊を発見。

 補給艦隊を伴い、北上中との事です。

 目標は、マグロットと思われます」

 フィルタは、状況の変化を告げたのだった。


「そう、流石に先に動いたのね」

 サラサは、やはり予定通りという表情でニヤリとしていた。


 サラサの術中に嵌まったのだろう。


 実に、いい性格をしている。


 果たして、スヴィア艦隊は生き残れるのだろうか?


「これで、数的不利になりましたね」

 バンデリックは、ニヤリとしているサラサに現実を突き付けるように言った。


 帝国中央艦隊は、未だに戦場に到着していなかった。


「第3艦隊の総数は?」

 サラサは、それでも冷静に質問をしてきた。


 何か、策があるのだろう。


「25です」

 フィルタは即答した。


「中央艦隊は?」

 サラサは、更に質問を続けた。


「アマールを出港していますが、到着は第3艦隊の方が早いです」

 フィルタはまたしても即答した。


 副官の任に慣れてきたのだろう。


 前より、緊張してはいないようだ。


 サラサの人柄が分かったからだろうか?


「そう……」

 サラサの方はそう言って、フィルタの答えを噛み締めている様子だった。


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