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その18

 ↑マグロット↑


   24

   南SR


 2:第2艦隊、4:第4艦隊

 南:南方艦隊、SR:サラサ艦隊


 戦いは続いていき、陣形は一周回って、上のようになっていた。


 どうやら、スヴィア艦隊は、サラサ艦隊の攻勢を上手く去なしたと言っていい状況である。


「やれやれ、やっぱりまともに撃ち合いにはならないか……」

 サラサは、現状を理解しながらそう言った。


「……」

 バンデリックは、明らかに残念そうな表情のサラサに対して、何も言わなかった。


 いつもなら、ツッコミを入れている所だが、それはフィルタの教育上良くないとの判断なのだろう。


 ここで軽口を叩く訳にはいかないと、呆れる表情を必死に取り繕っていた。


 そう、サラサは威厳ある艦隊司令官なのだ。


「まあ、それでも油断しない事ね。

 戦いでは何が起きるか分からないから」

 サラサはまともな事を言った。


「……」

 バンデリックが、絶句したのは言うまでもない。


 その言葉はどう見ても、1人でボケて1人で突っ込んでいるように思えたからだ。


 だからと言って、笑ってはいけない。


 せいぜい見せていいのは、絶句した表情までだ。


 そうすれば、傍目から見れば、サラサは先を見据えたしっかりとした司令官に見える筈である。


「とは言え、プランBだか、プランCだか、分からないけど、想定通りにここまでは来ているわね」

 サラサは、バンデリックのツッコミがないので、1人で喋る他なかった。


 なので、段々とボロが出てきたのだった。


(サラサ、流石にその言い方は……)

 バンデリックは、尚も取り繕うとしていたので、口には出さなかった。


 流石に我慢強い!


 が、フィルタもそこまで鈍くはなかった。


 このサラサの言葉により、怪訝そうな表情に変わったのだった。


(ここは、フォローを入れるべきか……?)

 バンデリックは、妙な事を悩まざるを得なくなっていた。


「……」

 そんなバンデリックの思いやりを気にしないサラサは、黙り込んでしまった。


 ツッコミがないので、会話が成立しないからではなかった。


 更に次のフェーズへ移っていいかの判断をしていた。


 目の前の敵と、地図上の敵の位置、地形を交互に見ながら確認していた。


 どうもにもこうにも、司令官と参謀長の齟齬が気になる状態である。


 でも、まあ、考えてみれば、サラサは戦いに集中していて、バンデリックはサラサがやらかさないように見守っているのが常である。


 それに当て嵌まらない訳ではないようだ。


「ケイベル侯に伝令。

 陣形を維持しつつ、攻勢を仕掛け、敵艦隊をマグロットに押し込む」

 サラサは、確認作業を終えると、そう命令を下した。


 サラサにしては、かなり慎重に命令を下したと言える。


 まあ、自艦隊だけならば、とっくに命令を実行していただろう。


 だが、今は僚艦隊を伴っている。


 攻勢を連動させないと、思わぬ反撃を喰らう事になる。


 これは、サラサにとって、初めての経験でもあった。


「了解しました」

 命令を受けたフィルタは、直ちに伝令係に指示を飛ばしていた。


 戦いの前、青ざめていたとは思えない仕事ぶりだった。


 姉もいるのだが、そちらの方は、ずうっと黙って、サラサをジッと観察し続けていた。


 こちらも自分の仕事をきっちりとこなしていた。


 ケイベル侯からの返答はすぐに来た。


「『攻勢の件、了解。

 タイミングは任せる』との事です」

 フィルタが、サラサにそう報告した。


「全艦隊、砲撃を強化。

 敵艦隊を一気に押し込むぞ!」

 サラサは、報告を聞くと間髪を入れずに、命令を下した。


 ドッカーン!!ドッカーン!!


 砲撃音がまとまり、ウサス・バルディオン連合艦隊の攻勢が始まった。


 今回の攻勢は、敵艦隊に対して回り込むのではなく、横一線でまともに攻勢を仕掛けるものであった。


 それに対して、スヴィア艦隊は、一気に後退を始めた。


 こちらもその事を予想していた動きだった。


 そして、それを追うように、ウサス・バルディオン連合艦隊は前進した。


 それに対して、スヴィア艦隊は抵抗する事なく、更に後退していった。


 まるで誘い込むようにである。


 ウサス・バルディオン連合艦隊は、スヴィア艦隊をマグロットに押し込むに追撃した。


 だが、やがてその追撃を辞める事になった。


 陸砲の射程圏内に入ったからだ。


 砲の数で劣勢になる事を避けるため、ウサス・バルディオン連合艦隊は、その手前で追撃を止めたのだった。


 こうして、マグロット沖海戦の第1ランドは終了を迎えた。


 この海戦は、サラサに似合わない戦いであった。


 うん、物語的にも盛り上がりに欠けているよね……。


 とは言え、制海権の奪取という意味では、作戦は大成功なのであった。


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