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その16

 筆者が疑問形になった場合、大体は否定形になる。


 世間一般の物語では、そういう法則が存在するのである。


 たぶん……。


「敵第4艦隊、西に転進。

 我が艦艦隊との距離が離れて行ってます」

 フィルタが、そう報告してきた。


「……」

 サラサは、その報告を無言で受け取っていた。


 が、フィルタにはそんな事は分からない。


 なので、血色が良くなっていた表情が青ざめ掛けていた。


 何か、粗相をしたのではないかと……。


 そして、ふとバンデリックの方を見た。


 すると、バンデリックは静かに頷いてきただけだった。


(大丈夫そう……?)

 フィルタは、半信半疑ながらそう思った。


 なので、しばらく様子を見る事にした。


(ま、その内慣れるさ……)

 フィルタの様子を見ていたバンデリックは、安心すると共に、同情していた。


 サラサの取り扱いに関しては、バンデリックの右に出る者はいない。


 それは、オーマであってもだった。


 なので、偶然だが、フィルタがバンデリックの顔色を伺いながらやるのは正しい判断である。


 そして、それは今後も続くだろう。


 話は逸れたが、サラサは不機嫌にはなっていた。


 勿論、それは敵に対してだ。


 報告を受ける前から、敵の動きは察していた。


 ならば、対応すればいいのだが、左舷に位置している南方艦隊がそれをさせないでいた。


 と書くと、邪魔という印象を受けるが、南方艦隊の位置取りとしてはこれで正しい。


 そでないと、サラサ艦隊は敵の2個艦隊を相手にしなくてはならないからだ。


 いくらサラサでも、遊兵を作ってまで、それをしたいとは思っていなかった。


 では、何故何も言わないかというと話は単純である。


 新たな命令を出す必要性も、命令を変更する必要性もないからだ。


 それは、不利になってはいないが、有利にもなっていない事を示していた。


(やはり、無理な攻勢は仕掛けてこないか……)

 サラサは、状況を観察しながらやれやれと言った感じで、現状をそう判断した。


「ちょっと、厄介な事になってきましたが、一応作戦通りですね」

 バンデリックは、そう口にした。


 サラサとバンデリックのみの関係だったら、このまま黙って推移を見守っていいだろう。


 だが、フィルタが加わった事で、それは変化しなくてはならない。


 特に、こういった余裕(?)がある時には、状況説明をしたが方がいいのである。


「そうね、敵の攻勢を逆手にとって、制海権を奪取するのは無理そうね。

 まあ、予想はしていたけど。

 このまま神経戦になりそうね」

 サラサはバンデリックの意図を察して、説明口調になっていた。


「!!!」

 フィルタは、驚きのあまり何も言えなかった。


 とは言え、作戦会議でいくつか想定していた事の一つに当て嵌まる事を理解したようだった。


 それを横目で見ながら、サラサもサラサで驚いていた。


 意外にもフィルタの察しが良さそうだからだ。


「とは言え、油断は禁物ですね」

 バンデリックは釘を刺すように、笑顔でそう言った。


「そうね。

 敵の動きを逐一監視。

 不審な動きがあったら、直ぐに報告するように」

 サラサは、フィルタに対して新たな命令を下した。


 これは、サラサ艦隊自体がいつもやっている事なので、今更命令される事もないことだった。


 だが、戦場に於いては常に油断しない事をフィルタに教えていたのだった。


 サラサも偉くなったものである。


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