その10
戦場に変化が現れたのは、スヴィア第2艦隊が到着した時だった。
数的有利に立ったスヴィア艦隊は、嵩に掛かるように攻勢を仕掛けてきたように見えた。
ドッカーン!!バシャバシャ!バキバキ……。
攻勢を仕掛けられた南方艦隊は、守勢に回らざるを得なかった。
数は、27vs45。
とても、逆攻勢を掛けられるだけの数はない。
「艦列を乱すな。ここは耐え時だ!」
ケイベル侯は、味方を鼓舞するように命令を下した。
最初の攻勢で、何隻かが損傷を受けた。
それでも、艦列を乱さずに対応する事により、戦線をきっちり支えていた。
そして、耐え時だというのは、当然、サラサ艦隊の来援があるからだ。
ドッカーン!!ドッカーン!!
とは言え、南方艦隊と第4艦隊だけの時より、明らかに砲撃の応酬が激化していた。
「敵の攻勢が甘い気がしますね……」
オタルは、激しい攻勢が続いている中、そう言った。
「……」
ケイベル侯はオタルの言葉に呆れて、閉口していた。
十分すぎるぐらいの攻勢を受けているからだ。
とは言え、数に任せてもいい所を自重しているのも読み取れていた。
「向こうも制海権を失う訳にはいかないから、慎重なんだろうな」
ケイベル侯はオタルの言葉に対して反応が遅れながらも、そう言った。
「向こうもワタトラ伯の艦隊が気になっているのですな……」
オタルは、そう言った。
ここの戦場は、まだ到着もしていない艦隊に支配されているのは明白だった。
「痛い目に遭ったのだから気にするのは当然だろう。
学習出来ない人間より遙かにマシだろう」
ケイベル侯は、そう応じた。
と同時に、その事によって、ここの攻略が厄介になっている事を悟っていた。
それを打ち破るための策が、通じるのだろうか?とも考えていた。
当然ながら、サラサはその策をマイラック公爵との軍議で提案していた。
現在は、その策に従っての作戦中である。
とは言え、まあ、まだ始まったばかりなので、その成否はよく分からない。
バッシャーン!グラグラ……。
色々考えている時に、旗艦に至近弾。
船体が大きく揺さぶられた。
「……」
「……」
ケイベル侯とオタルは、無言のままだった。
こういった役割を買って出た以上、大変な目に遭うことは、予め分かっていた。
なので、何事もなかったように、振る舞っていた。
内心はどうか分からないが……。
とは言え、ケイベル侯も漢気がある。
2艦隊に最初に立ち向かう役割としては、提案者が名乗り出ていた。
しかし、それでは面子が立たないとして、ケイベル侯が変わったのだった。
サラサ艦隊が、今ここにいたらきっと違った戦いになっていたのは言うまい……。
それはそれとして、今の戦いの話に戻そう。
数的有利を得たスヴィア艦隊は、最初の攻勢に成功したものの、次第にその攻勢は受け流されていった。
南方艦隊の頑張りによるものであるのは間違いがない。
だが、慎重を期しているスヴィア艦隊の行動が影響している。
そうなると、次の変化は、真打ちの登場によるものとなるのだろうか?