表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/225

その2

 さて、一方のサラサ達である。


 クラセックの商船に救出され、スワンウォーリア法国の法都ベロウへと移送されていた。


 ベロウには各国の大使館が存在し、サラサとバンデリックは、当然、バルディオン王国の大使館に入った。


 大使館に入る際に、揉めるかと思われたが、情報漏洩を完全に防いだ為に、それはならなかった。


 その為、シーサク王国は、2人が大使館に入ってから、サラサの行方を知る事となる。


 ベロウにおける各国の大使館は、大使館街を形成していた。


 バルディオン王国とシーサク王国は、隣接している訳ではないが、通常と違う動きがあれば、当然察知できる距離にはある。


 それが何であるかを確認している内に、シーサク王国にバレてしまったという事である。


 その経緯を知ったシーサク王国は、法国やバルディオン王国だけではなく、リーラン王国にも抗議してきた。


 そんな渦中の中にいるサラサは、大使館に入ってからほとんどバンデリックの傍にいた。


 バンデリックは、クラセックに救出された時もそうだったが、現在も、起き上がれないでいた。


 それほど、重傷を負っていたのだった。


 まあ、マストが直撃したのだから、生きているだけ奇跡だとバンデリック本人は思っていた。


「傷は塞がりましたが、骨折が治った訳ではありません。

 まだ安静が必要ですな」

 バンデリックの診察を終えた医者がそう言った。


「はい、ありがとうございました」

 バンデリックは、一応礼を言った。


 礼節を弁えたからだ。


 自分の体の事は、自分がよく分かっていると言った気持ちがあったので、そう言われる事は予想通りだった。


 医者の方は、礼を言われたので、椅子から立ち上がろうとした。


「ところで、先生、左足の方はどうなんでしょうかね?」

 バンデリックは、気になる事をズバリと聞いてみた。


 まあ、これが初めてではないのだが……。


 バンデリックは、ベットの中に一日中いる訳ではなかった。


 用足しなどは、サラサの手を借りながら移動していたので、当然、足を使っていた。


 その時、どうしても左足が何だか、上手く動かない気がしていた。


 骨折のせいなのかも知れないが、どうにもこうにも、それだけではない気がしていた。


 バンデリックの質問に、介護しているサラサは当然ながら表情を曇らせた。


 意外とサバサバしているバンデリックとは対照的である。


 この光景は、2人の性格をよく表したものでもあった。


 医者の方は、中腰のまま、少し固まっていたが、気を取り直して、立ち上がった。


 そして、呼吸と整えるように、溜息をついた。


「正直な所、私にも何とも言えません。

 骨折が治ってからでないと、やはり、なんとも言えませんな」

 医者は、言葉を選ぶように、慎重にそう言った。


 希望的観測を基に言ってはいけない状況である事は、明白だった。


「そうですか……」

 バンデリックは、どこか達観したような物言いだった。


「……」

 サラサの方は、聞き流すという事は出来ないと言った表情で固まっていた。


 ……。


 しばらく、重い沈黙が流れた。


「では、私はこれにて」

 医者は、沈黙を破るようにそう言った。


 そして、一礼してバンデリックの元を離れた。


「ああ、ありがとうございました」

 バンデリックは、医者に向かって再び礼を言った。


 と同時に、しょうもない質問をしてしまったというばつの悪さが残っていた。


 医者の方も、医者の方で、ばつの悪さを隠せないまま、部屋の扉へと歩き出していた。


 その後を2人の助手が追い、部屋の扉の前で追い越した。


 そして、助手の1人が扉を開けた。


 医者は、サラサに一礼をすると、そのまま部屋を出て行った。


 サラサの方も、一礼すると、そのまま見送った。


 2人の助手が、医者の後を追って部屋を出てると、扉が閉められた。


 バタン……。


 扉の閉められる音は小さかったが、やけに響いた感があった。


 それは、重い雰囲気になる前触れだった。


「まあ、それはともかくとして、早く体を治す事ね」

 サラサの口調は、意外にも冷静だった。


 冷たく突き放すような感じを受けたが、バンデリックの方は、ある意味、安心した。


 M寄り(?)のバンデリックは、自分はまだ必要にされている気になったからだ。


 因みに、(?)には特に大きな意味はないと思います。


「そうですね。

 そうしたいと思います」

 バンデリックは、サラサの言葉に素直に従った。


「……」

 サラサは、バンデリックの気持ちを察した為、何も言わず、微笑んだ。


 年頃らしい、可愛い笑顔だった。


 それを見て、バンデリックも気持ちが和らいだ。


「あ、でも、骨折って、どうすれば早く治るのでしょうかね?」

 バンデリックは、そう口に出してから、しょうもない事を言ってしまったと思った。


「まあ、気合いでしょうね」

 サラサは、極めて真面目な表情でそう言った。


 こう言う時のサラサは、茶目っ気を見せたのか、本当に真面目に言っているのか、バンデリックでも分からないでいた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ