表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
183/254

その10

「フィルタ、頭を上げなさい。

 それは、あなたの完全な誤解よ」

 サラサは、笑いながらそう言った。


 まあ、この状況、笑わない人はいないだろう。


(そうそう、やらかしたのは、サラサの方だよね)

 バンデリックは、そう思いながらややこしくなるので、黙っている事にした。


 そして、笑わなかった。


「はぁ……」

 フィルタは浮かない表情で頭を上げた。


 当然ながら、サラサにそう言われても納得出来ない様子だった。


 それ程、フィアナは凄いのだろうか?


 仕方がないので、サラサ自身が説明する事にした。


 なので、笑顔から威厳ある表情に変わった。


(まあ、自分が仕出かした事だから、自分で説明するのは当然!)

 バンデリックは、呆れながらそう思っていた。


「フィアナは、あたしの専属産婆兼副官に任命しました」

 サラサは、無駄に威厳にある言い方をした。


 勿論、彼女自身は、その行為が間抜けたものとは思っていなかった。


 きりり!


「???」

 フィルタの反応は薄かった。


 産婆のところまでは付いていったが、その後の言葉の意味が分からなかった。


 と言うか、何を聞いたかを覚えていなかった。


 予想通りの反応を見たバンデリックは、更に呆れていた。


 予想外の反応を見たサラサは、あれ?と言う表情になった。


 自分の事なのに、状況がまだ飲み込めていないフィアナは、成り行きをジッと見守っていた。


 4者4様である。


 ……。


 都合良く妙な隙間風が吹き、沈黙が訪れた。


(かなりの姉思いなのねぇ……。

 姉弟って、こういうものかしらねぇ……)

 サラサは、その鋭い戦略眼を発揮していた。


 正に、迷将であった。


(それならば!)

 サラサは納得した上で、解決案を出す事にした。


 そんなサラサを一番の理解者であるバンデリックは、止めようとはしなかった。


 悲劇はまだ続くのだ。


「フィルタ、あなたを副官補として任命します。

 姉のフィアナと共に、あたしのサポートをお願いするわ」

 サラサはこれで問題解決とばかりに、ドヤっていた。


「???」

「???」

 姉弟は、超展開に付いて行けないようだった。


 姉弟なので似た顔なのだが、表情も同じにポカーンとしていた。


「あ、でも、姉弟や身内同士を同艦に乗艦させる事は、あまり良くはないわよね」

 サラサは心配になって様で、バンデリックの方を見た。


(そこの心配?)

 バンデリックは呆れると共に、姉弟に心から同情した。


「まあ、その辺は、当人同士の問題ですね」

 バンデリックは同情したにも拘わらず、何もしなかった。


 それどころか、自分と同じ地獄に誘っていた。


 バンデリックもまた悪い奴である。


「やっぱり、止めておく?」

 サラサは、姉弟に向かってそう問い掛けた。


「……」

「あっ、いえ……」

 全く分からない姉は無言だったが、弟の方は何と言っていいか分からないのでそう言ってしまった。


「そう、なら、問題なさそうね」

 サラサは姉弟が呆けているうちに、決定してしまった。


 バンデリックは、当然どういう状況なのかはきちんと把握していた。


 でないと、サラサの夫など務まらない。


 そして、姉弟のとって、とっても残念な事ながら、助け船を出す事は一切しなかった。


 それは、バンデリックなりの計算によるものであったのは言うまでもなかった。


 バンデリック、そちも悪よのぉ……。


「とは言え、このままという訳には行きませんね。

 フィルタ、君は、お使いの途中では?」

 バンデリックは、フィルタにそう問い掛けた。


「はい、しかし、用向きが終わり、これから艦に戻る所でした」

 フィルタは、漸く話が通じるとばかりにハキハキと答えた。


「そう、では、君は、フィアナと共に、サラサに付いていって下さい。

 私は、3番艦の艦長に挨拶に行ってきますよ」

 バンデリックはそう言った。


「頼むわね」

 サラサが、バンデリックにそう言うと、バンデリックは列から離れていった。


 姉弟はそれをただただ見送る他なかったのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ