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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
35.ラロスゼンロ攻防戦
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その19

 ラロスゼンロ攻防戦と書きながら、未だ戦いが始まっていないのは筆者のせいではない事をここに明記しておく。


 とは言え、違う攻防戦はずうっと続いているのであった。


 サラサの元に、オーマ経由でロンデリックからの書簡が届いていた。


 サラサはそれに目を通していた。


 そこに、バンデリックが部屋に入ってきた。


 ロンデリックから書簡が来たという事で、ある件を切り上げての事だった。


 ある件とはなんぞやと思われるかも知れないが、それは野暮な話である。


「ロンデリックの兄上からは何と?」

 バンデリックは、サラサに近付きながらそう尋ねた。


「バンデリック、あんたがちゃんと仕事をしているか、気にしているようよ」

 サラサは、読み終わった書簡をバンデリックに渡した。


 悪戯好きなのは、まあ、愛称表現である。


 バンデリックは真に受けた訳ではないが、微妙そうな表情を浮かべた。


 次兄の事だ。


 挨拶代わりで冗談を言ってくる事もある。


 まあ、それはともかくとして、バンデリックはロンデリックからの書簡を読んだ。


 幸いな事に、形式張った言葉しかなく、冗談の欠片もなかった。


 どちらかと言うと、自分への冗談は兎も角、砕けた書き方をしていたのでは無いかと心配だったバンデリックであった。


「取りあえずは、ロンデリックは責任者に任命されたようね。

 これで、こちらも動けるという事ね」

 サラサは、ニヤリとしながらそう言った。


(全く……)

 バンデリックは、サラサに呆れていたが、それをおくびにも出さなかった。


 2人の目に見えない攻防戦だった。


「派遣する人材の方は、既に確保出来ております。

 侯爵閣下の方は、どうでしょうか?」

 バンデリックは、攻防戦は横に置いて、そう尋ねた。


「そちらもの方も、大丈夫よ」

 サラサはそう言うと、今度はオーマから来たリストをバンデリックに渡した。


 バンデリックは、それを受け取ると、すぐに確認した。


そして、

「確かに……」

と納得してから、

「しかしながら、陛下の裁可は降りていませんよね……」

と懸念点を示した。


「そのようね……。

 陛下の方と言うより、財務委員会の方が問題よね」

 サラサは、バンデリックから書簡とリストを戻されながら、やれやれと言った感じでそう言った。


「予算の組み替えに難航しているのでしょう。

 財源は、海軍新造艦建設費を組み替えるのでしょうから」

 バンデリックは、現在の事情から一応委員会を擁護した。


「まあ、それでも予算が足りないのは明らかよね」

 サラサは、表情を曇らせた。


「ドックの改修費用ですか……」

 バンデリックは、サラサの言わなかった問題点を口にした。


「そうね。

 結局は債券を発行する事になるのでしょうが、どこが引き受けるかよね」

 サラサは、益々表情を曇らせた。


「条件次第ではどこでも引き受けるでしょうけど、まあ、それ程、我が国に余裕がある訳ではないですからね」

 バンデリックは、サラサに同調した。


「まあ、今は商人共に足下を見られているといった感じよね」

 サラサは、世知辛さを嘆いていた。


「……」

 バンデリックは、そんなサラサをジッと見詰めた。


 反応に困ったからだ。


「何よ、その目は!」

 サラサが耐え切れずにそう言った。


「あっ、いや、戦場で、よくやっている事なので……」

 バンデリックは、自分達がやっている事を思い出していた。


 そして、それなのに、他人を非難するのはどうかと思っていたのだった。


 要するに、自分の事を棚に上げすぎているという事である。


「それは致し方なく、やった事でしょ!」

 図星を突かれたサラサは、声を荒げてしまった。


「ははっ、それは商人達もそう答えるでしょう……」

 バンデリックは、呆れて笑ってしまった。


「!!!」

 サラサは、見事に言い返されたので、黙るしかなかった。


 後で、覚えてろよと言う感じだった……。


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