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クライセン艦隊とルディラン艦隊 第3巻  作者: 妄子《もうす》
34.ウィヴェアバリー島帰属問題

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その7

 ……。


 妙な点で合意したが、懸案の共通認識は持てなかった為、沈黙が訪れた。


(陛下は譲る気がないようだ……)

 ラーデ侯は、国王の表情を見てそう確信した。


「……」

 国王の方は、ラーデ侯の返事待ちで黙っていた。


(さて、困ったな……)

 こうなると、話が進まない事をラーデ侯は、分かっていた。


 確かに、外交交渉を始めるのは悪手ではない。


 しかしながら、早急にやるべき事ではないと思っていた。


「やはり、それは第一優先事項ではないと思われます」

 ラーデ侯は、取りあえず自分の意見をきちんと述べた。


「う~ん……」

 国王は、ラーデ侯の言葉に唸っていた。


 何で分からないかなあと言う意思表示であった。


 だが、苛立ってはいなかった。


 普段は、斜に構えているのだが、この辺は王座に就くには相応しい器量を示していた。


「侯よ、我の意見としては、貴公とは全く正反対な結論を出している」

 国王は、淡々とそう話し始めた。


 どうやら、順を追っての説明が始まるらしい。


「……」

 ラーデ侯は、真逆な自分の意見を一旦押し殺す事にした。


「戦いというものは、国が滅びないように余力を残して行うものだ。

 そう教えてくれたのは、そなたであるぞ」

 国王は、笑みをたたえながらそう続けた。


「!!!」

 ラーデ侯は、びっくりして、些か居心地が悪くなった。


 その通りだったからだ。


 とは言え、現状は、国王の言っている事とは違っているように、ラーデ侯は感じていた。


「まあ、総兵力の話をしている訳ではないんだ」

 国王は、ラーデ侯が感じている点を察していた。


「と仰いますと?」

 ラーデ侯は、勿体ぶっているような国王に堪らず尋ねた。


「シーサク4世は即位してから何年だったかな?」

 国王は、思い出そうとして眉間にしわを寄せた。


「3年です」

 ラーデ侯は、質問をはぐらかされたと思いながらも間髪入れずに答えた。


「そうだったな」

と国王は、ラーデ侯の言葉に頷いてから、

「彼はまだ若いし、在位期間も短いので、大きな実績がない」

と続けた。


 真意はまだよく分からないので、ラーデ侯の表情は怪訝そのものだった。


「実績を残そうと、焦っているのは間違いがないだろう」

 国王は、更にそう続けた。


(確かにその通りですが、それが何に繋がるのでしょうか?)

 ラーデ侯は、取りあえず自分の疑問を心の中に留めた。


 国王の様子からまだ語り終えていない事が明らかだったからだ。


 この辺は、流石に元教育係であり、国王の事がよく分かっていた。


 が、何が言いたいのかまでは全く分かっていなかった。


「シーサク王国は武断的性格を持った国家である。

 その為に、軍事的な実績を残そうとするのは致し方がないのかも知れない。

 だが、スワン島沖でワルデスク侯が息子共々討ち取られ、断絶状態である。

 ラロスゼンロでは、ヒンデス侯が責任を取った。

 そして、今回の責任者は後を継いだ息子のヒンデス侯。

 失敗すると、2家目の断絶状態が生まれる」

 国王は、今度は勿体ぶらずに、長々と説明をした。


(これから行われるラロスゼンロの戦いは、5分5分。

 確かに、そんな危険な賭けをしている状況ではないな……)

 ラーデ侯は、ジッと聞きながら考え込まざるを得なかった。


「13貴族中2家が機能不全となると、流石のシーサク王国も傾きかねないよな」

 国王は、ジッと聞いているラーデ侯にそう語り掛けた。


「……」

 ラーデ侯は、何とも言えない表情で黙り込むしかなかった。


「もし、我が国がこんな状況に陥る戦いを仕掛けるとしたら、貴公は、フンメル侯に何と言う?」

 国王は、興味深げに問うてみた。


 フンメル侯とは、メジョス王国の軍最高指揮官である。


「解任し、戦いを止めます」

 ラーデ侯は、絞り出すようにそう言った。


 誰でも、言い負かされるのは、嫌なものである。


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