その1
ウィヴェアバリー島は、トット連盟とメジョス王国の国境の島である。
って、サラサの戦いの話ではないのかと思われたかも知れないが、まあ、物語に関係してくる話なので、お付き合い願いたい。
まあ、これだけ風呂敷を広げて話が破綻しないのかようというご懸念があるのも分かります。
ただ、一番最初に示したとおり、地図に載っていますので、これらの国々も物語に大きく関わってくる筈です。
まだ、プロット段階前ですが……。
そんな筆者の都合はともかくとして、グタグタになる前に話を進めていこうと思います。
トット連盟は、リーラン王国と同じく島国ではある。
だが、各都市の連盟により成立している組織でであり、リーランとは国家体制が異なる。
まあ、これを国家と呼べるものかという疑問があるのも頷ける体制である。
とは言え、外交上は、一枚岩であるので、国家であろう。
メジョス王国は、大陸の西の端に位置しており、スヴィア王国とシーサク王国と三角同盟を組んでいる。
成立から120年、他の2カ国より、古い国である。
また、同盟により、バルディオン王国とウサス帝国とは敵対関係にある事になる。
リーラン王国とは、あまり交流がないが例の海戦でシーサクとやり合ったので、今後、敵対関係が如実に表れてくると思われる。
そして、ウィヴェアバリー島である。
この島は、元々メジョス王国領であったが、エリオが生まれた年、ちょうど20年前にトット連盟に鞍替えしていた。
まあ、そう簡単な話ではないのだが、少なくともトット連盟とウィヴェアバリー島はそう宣言している。
そして、現在、実効支配しているのは、トット連盟である。
現国王メジョス17世は、これに対して、トット連盟に島の返還を求めている。
だが、連盟はそれに応じる気配は全くなかった。
ならば、戦争だという事になるのだが、どうにも、このメジョス王国は、やる気が感じられない王国である。
国の運営自体にやる気が感じられないという訳ではない。
戦争に対して、全くやる気を感じられないという意味である。
口では島の返還を求めているが、武力を使う気がないと見られているのだった。
それに対して、トット連盟の方は、電撃的にこの島の奪取に成功していた。
成功の立役者は、現盟主のユリア・リオフリンの夫であるユリアス・リオフリンであった。
既に亡くなっているが、そのユリアスの知略により、一気に島を奪取することに成功していた。
その混乱で命を落とす事になったのだが、その功績を妻が引き継いだ形になったのだった。
まあ、この辺はかなり黒い噂が飛び交ってはいるのだが……。
今は、太陽暦537年2月の現在の状況である。
「陛下、島の問題は如何致しましょうか?
いい加減、決着させないと思うのですが……」
ラーデ侯は、国王に注意を喚起する意味でそう尋ねた。
ラーデ侯は、メジョス王国の宰相である。
国王の教育係であったラーデ侯は、メジョス17世が即位すると共に、宰相の地位に就いていた。
この宰相という地位は、王国の全権を任されている。
とは言え、重要事項においては、国王の裁可が必要な為、こうして尋ねているのだった。
「何か、いい案でも浮かんだのか?」
メジョス王国は王座に座りながら、跪いているラーデ侯に逆に質問した。
「いえ、前に軍部から提案があったとおり、正面から攻める他ありません」
ラーデ侯は逆に質問されたので、そう答えるしかなかった。
「……」
国王は、ラーデ公の言葉を聞くと渋い表情になった。
この懸案は、前国王からのものであり、長きに渡っているものであった。
とは言え、前国王もそうだったが、危機感というものを持っていない様だった。
「陛下……」
ラーデ侯は、国家の沽券に関わる懸案なので、何とかしたいと考えていたので、何とか食い下がろうとした。
「正面から戦って、あの年齢不詳に勝てると思うのか?」
国王は、ラーデ侯の言葉を遮って、また質問した。
「戦力的には全く問題がないと思われます」
ラーデ侯は、力強くそう言った。
「まあ、それはそうなんだろうが、犠牲が多く出るのではないか?」
国王は、些か面倒臭そうにまた質問した。
国民の犠牲を気にする所は、慈しみ深い国王と思われる。
だが、それ以前に、犠牲の割には得られるものが少なすぎると考えていた。
その辺はかなり冷徹な思考を持っていたのだった。