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その2

「して、お二人は、何故に我が艦に乗艦して来たのですか?」

 エリオは、先手を取るかのように質問した。


 この言葉を聞いて、2人は完全に出遅れたと感じていた。


(流石に、歴戦の勇者だな!)

 自分より遙かに年若いエリオに対して、グラリッチは最高の評価を付けざるを得なかった。


「先ずは、乗艦をお許し頂き、ありがとうございます」

 グラリッチは、直ぐに本題に入らなかった。


 彼なりの抵抗を試みたからだ。


 相手のペースに乗らないという事なのだろう。


「いや、そんな事は大した事ではないですよ」

 エリオは、いつものやれやれ感を隠せずにそう言った。


 エリオにしてみれば、腹の探り合いをしたい訳ではなかった。


 先手を取ったかのように見えた行為も、要件をさっさと済ませたいからだった。


「……」

 グラリッチは、エリオの言葉と言うより、態度に唖然としていた。


(やれやれ、駆け引きみたいなものはないものか……)

 マイルスターはやり取りを見ていて、こちらもやれやれだった。


 そして、同意を求めるように、シャルスの方に視線を向けた。


 ま、無駄だった。


 シャルスは、エリオの傍らでジッとしているだけだった。


 どうして、いつもこういった雰囲気になるのだろうか?


 初見、いや、エリオの性格を知っている人間の多くも付いていけない事が多々ある。


「貴公は、何を求めて乗艦なさったのか?

 まさか、海戦見学が目的ではありますまい」

 エリオは、話が始まらないので、自ら乗り出す事にした。


 珍しい事だが、どちらかと言うと、面倒事をこれ以上増やしたくないという意思表示なので、救いようがない。


「海戦になるのですか?」

 グラリッチは、残念無念といった感じで尋ねてきた。


 それにしても、変な所に食い付いてきたと、エリオ側は思った。


 とは言え、言ってしまった手前、それに関しては答えなくてはならない。


「なるでしょうな。

 バルディオン王国とシーサク王国、共に2個艦隊を派遣してきています。

 どこかでぶつからざるを得ないでしょな」

 エリオは、他人事のように予言した。


 その隣で、マイルスターは当然ですなという表情をしていた。


「左様でございますか……」

 グラリッチは、対照的に自分の事のように、深刻そうな表情だった。


 と同時に、覚悟していた感があった。


「……」

 思わぬ形で深刻な空気になってしまったため、今度はエリオが黙ってしまった。


 流石に、『漆黒の闇』である。


 全てのものをブラックホールのように飲み込み、自らも破壊する。


 残るのは『闇』だけである。


「成る程、閣下はそれで自ら出陣なさったのですな」

 グラリッチは、グラリッチで1人で納得していた。


 いや、隣のトピーズも納得した表情をしていたので、勝手に2人で解釈したのだった。


「深慮遠謀ということですな」

 グラリッチは、そう付け加えた。


 これには、当然、エリオ側はどういうことなんだという事になっていた。


 どう考えても、褒め殺しにしか聞こえなかったからだ。


 なので、警戒心が高まっていた。


「そこで、明晰な閣下に伺いたい。

 今回の件は、どのように処理なさるつもりですか?」

 グラリッチは、尊敬の眼差しを向けてきた。


 とは言っても、立場上、警戒心がない訳ではなかった。


「今回の件とは?」

 エリオは、話が思わぬ方向へ向かってしまっていたので、何を聞かれているのか、本気で分からなかった。


(明晰なのは認めますが、どうにも残念ですなあ……)

 マイルスターは、エリオを見て、大丈夫かよという気持ちになっていた。


 自ら話を振っておいて、その話に入った途端に、戸惑っていたので、当然である。


 だが、グラリッチの方は、そういう捉え方をしていなかった。


 エリオの反応に、ちょっと苦笑いを浮かべた。


 駆け引きの一環だと思っているのだろう。


 何か、話が進まず残念な展開である。


 まっ、いつもの事ですね。


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