その30
サラサの黒歴史を思い出させる切っ掛けの行事はまだ続いていた。
と言うより、こちらの方がトラウマというか、黒歴史度が高かった。
儀式の後は、披露宴である。
サラサの時は、ここで事件(?)が起こったのであった。
まあ、前にも書いたとおりなのだが、ハブられたのである。
今は、容姿の事は気にするどころか、自分の誇りになっている。
だが、あの時の思い出は、忘れたい事であるが、まあ、忘れられる訳なかった。
こうやって思い出して、身悶えしたくなるのだった。
サラサにしては、珍しいのだが、まあ、誰だってそう言う事は一つや二つや……、結構多く持っている人もいるだろう。
別にその事に対して、何か思う所があるという訳ではなく、なんだかもう、居たたまれないというか……ねぇ……。
まあ、感情としては恥ずかしいので忘れたいというのが近いか?
周りの空気を読まずに意気揚々としていた所から、墜落したのだからねぇ……。
7歳の時は酷く傷付いてはいたが、今となっては、幼い故の出来事だったと思いたい。
が、まあ、そう簡単に割り切れないから、こうやって、黒歴史としての記憶になっているのだった。
そんな事はともかくとして、今年の7の儀の披露宴には、王族が参加している。
なので、サラサもルディラン家として、挨拶しに行かなくてはならなかった。
順番としては、シルフィラン家の次である。
シルフィラン家は、公爵夫妻と、長男夫妻、長女夫妻が挨拶していた。
それを国王と王妃、真ん中に挟んだ王子ルデウスが対応していた。
ルデウスは、流石に王族なのだろう。
7歳と思えない、きちんとした対応をしていた。
それを見ると、サラサはまた自分の時の事を思い出し、心をかき乱されるのだった。
だが、ふと思った。
(子供らしさがないのね……)
サラサは、そう思うと急に自分を取り戻したようだった。
ルデウスを見ていると、本当に7歳の子供とは思えなかった。
王族としての威厳を既に備えているからだろうか?
いや、何だか、違う気がした。
サラサがジッと観察しているうちに、シルフィラン家との歓談は和やかなうちに終わった。
歓談が終わったシルフィラン家は、横に避けると、ルディラン家に道を譲る形になった。
そして、王族とルディラン家の目が合った。
「ルデウス王子殿下、この度はおめでとうございます。
両陛下もさぞかしお喜びでしょう」
オーマがそう言うと、恭しく頭を下げた。
それに従うように、サラサ、ヤーデン、バンデリックも頭を下げた。
「ありがとうございます、ルディラン侯。
どうぞこちらに」
ルデウスがオーマの祝福の言葉に対して、びっくりするほど自然に応えた。
「では、失礼させて頂きます」
オーマはそう言うと、サラサとヤーデン、バンデリックを引き連れて、王族の前に進み出た。
「皆様、どうぞ、面を上げてください」
ルデウスは、今度も淀みなくそう言った。
そう言われたので、オーマを始め4人は、面を上げた。
(それにしても、立派ね……)
サラサは、驚きを通り過ぎていて呆れていた。
勿論、サラサとて、顔には出さなかった。
「おや、本当にお小さいのですね」
ルデウスは、サラサを見てそう言った。
「!!!」
サラサは顔にこそ出さなかったが、ロリと言われていい気はしなかった。
えっ、ああ、そうまでは言われていないよね……。
とは言え、ルデウスの本質を見た気がした。
サラサを見た時の表情が一瞬変わったからだ。
ただ、今は、ニコニコしているだけだった。




