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その1

 太陽暦536年8月、エリオ艦隊は、スワン島に向かっていた。


 ルオーラ子爵リンク率いる西方艦隊は、いち早くスワン島に到着しており、展開を完了していた。


 バルディオン王国とシーサク王国が派遣した艦隊は、スワン沖で睨み合いをしていた。


 この状況は、リンク艦隊がスワン島をしっかりと警備しているからに他ならなかった。


 まあ、要するに、サラサ達の件は何も解決していない事になる。


 そんな中、エリオは、呑気に間抜け顔で、甲板で海を眺めていた。


「他人事と思っていないでしょうな……」

 マイルスターはエリオに忍び寄りながら、和やかにそう言った。


「!!!」

 総司令官ならそんな事はないと言いたい所だが、そこにはぎくりとしたエリオがいた。


 艦隊位置は、スワン島まではまだ距離がある。


 現場の緊張感が伝わってこないのは無理もない。


 と言いたい所だが、それは単に総司令官の人柄である。


 報告を受けているのだから、どうなっているかはよく分かっている筈だ。


 そんな中、2人に近付く人がいた。


 シャルスではない。


 彼は音もなく、既にエリオとマイルスターの傍にいた。


 と言う事は、これから何かが起きるのだろう。


「閣下、正式にご挨拶させて頂きたい」

 そう声を掛けてきたのは、ホンド・グリア商会のグラリッチだった。


 その隣に、同商会のトピーズがいた。


 エリオは、ゆっくりと振り向いた。


「尤も、閣下は私共の事は存知あげているようですが……」

 グラリッチは、余裕の笑顔でそう言った。


 隣のトピーズも同じく笑顔だった。


「ああ、そうですね、資料では知っています」

 エリオは、何だか試験を受けさせられている気分になっていた。


 そして、何故か、隣のマイルスターは、ホッとしていた。


 その理由は、渡した資料はちゃんと読んでいたというものである。


 しょうもない事を心配しなくてはならないマイルスターであった。


「とは言え、直接お目にかかるのはこれが初めて。

 改めて、ご挨拶させて頂きます」

とグラリッチは言ってから、一呼吸置いて、

「私は、グラリッチと申します。

 ホンド・グリア商会に所属する商人でございます」

と恭しく一礼した。


「同じくホンド・グリア商会に所属するトピーズと申します」

 トピーズもグラリッチに続いて、一礼しながら自己紹介をしてきた。


(情報担当の2人が、査察でやって来た所に、大事件が勃発して慌てて交渉に乗り出したと言った所か……)

 エリオは、2人の自己紹介をききながらそう思った。


 査察とは、勿論、商会内のリーラン王国とネルホンド連合の取引に関する事だ。


 きちんとこれからも利益が上げられるかを確認しにきたのだろう。


「クライセン公爵エリオです」

 エリオは礼儀に則って、自己紹介を行った。


 グラリッチとトピーズは、エリオをジッと観察していた。


 今、初めて観察し始めた訳ではなく、乗艦した時からだった。


 2人は、各国政府の高位者に会うのは初めてではなかった。


 寧ろ、慣れている方だという自負があった。


 だが、しかし、妙な感じに囚われていた。


 オーラがないどころか、残念にさえ感じられる。


 商売をしたら、きっと簡単すぎる程、身ぐるみを剥がせるだろう。


 だが、情報担当という事もあり、得体の知れない何かを感じ取っているようだった。


 第1印象が定まらないと言った感じで、明らかにエリオの人柄を掴みかねていた。


 味方にしたら厄介だが、敵にしたらどう対応していいのか分からないと言った所か?


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