その16
リーメイのお相手探しに対して、別の角度から見られる様になった。
なので、仕事が捗った。
という訳ではないのは言うまでもなかった。
だが、ボスに対する義務感に加えて、それによって得られる利益が遙かに増大した事で、何としてもやり抜こうという気持ちが上昇した事は言うまでもなかった。
とは言え、こういう事って、そう簡単に行かないのが世の常である。
見方が変わったからと言って、いい方向に行くとは限らないのである。
まあ、この件に関しては、そういう見方では絶対に改善されない事は明らかなのだが……。
(しっかし、まあ、配慮が全くなりなかったな……)
エリオはリーメイの顔を思い浮かべながら、猛省するのだった。
しかし、反省しようが後悔しようが、時間だけが無為に過ぎていくだけだった。
夕刻、いつもより早いがノックの音がした。
(あれ?早いよな……)
エリオは、ノックの音に敏感に反応しながらそう感じていた。
「殿下、ただ今戻りました」
声の主は、マイルスターだった。
「ああ、早いな、兎に角、入ってくれ」
エリオは、思わぬ人物の訪問に驚いていた。
「失礼致します」
マイルスターは、そう言うと扉を開けて中に入ってきた。
それをエリオは座ったままで、シャルスは立って敬礼しながら、出迎えた。
マイルスターは扉を閉めて、エリオの方に向き直って敬礼した。
「マイルスター、ただ今、任務を終えて帰還しました」
マイルスターは、そう宣言した。
「ご苦労様、早かったね」
エリオは、答礼しながらそう言った。
「まあ、担当者達のお陰ですよ」
マイルスターはそう言いながら和やかな表情で、敬礼を解いた。
その後、シャルスが敬礼を解いた。
「何だか、雰囲気が暗いですねぇ……」
マイルスターは、2人の辛気臭い表情を見ていた。
エリオはともなく、シャルスまでそう言う表情をしていたので、気になっていた。
まあ、何はともあれ、先ずは報告しなくてはならない。
なので、マイルスターはゆっくりとエリオに近付いていった。
「ああ!!」
エリオは、急に立ち上がって、マイルスターを指差した。
マイルスターは、エリオの奇矯な行動に驚いて立ち止まって固まってしまった。
流石のマイルスターも驚かずにはいられない予想できない行動だったのだ。
「あ、ああ!!」
シャルスは、エリオの声に賛同する様に、ワンテンポ遅れて反応していた。
マイルスターは、エリオだけではなく、シャルスからも奇矯な攻撃を受けていた。
こうなると、どう反応した物かと思うより、この場を直ぐに立ち去った方がいいのではないかと本能的に感じていた。
とは言え、それはマイルスター。
伊達に、エリオの参謀長を務めている訳ではなかった。
こう言う時でも、兎に角、落ち付いて対応しなくてはならない。
その奇怪奇天烈な行動にも、きっと理由があるのだろう。
たぶん……。
そう思わないと、正直、まともに付き合ってはいられない!
「あのぉ、私は先ずは、出張先の報告をしたいのですが……」
マイルスターは、探る意味で、今やろうとした事を口にした。
無論、その場に立ち止まって、エリオとシャルスを両方観察できる絶好の位置を取っていた。
「そんな事はどうでもいい!」
エリオは、珍しく興奮していた。
「はい?」
マイルスターは、和やかに混乱していた。
大事な用事の筈である。
本当は、エリオ自身が行くべきだと言っていた筈である。
なのに、何でこうなるのだろう?
流石のマイルスターも全く付いていけなかった。
「総参謀長閣下、現在、我々は全業務を停止して、事の解決に当たっております」
シャルスは、そう説明した。
「はい?」
今度は、マイルスターが、シャルスの言葉に首を傾げた。
そう、全く説明になっていない。
それ程、シャルスも冷静さを欠いた状態だった。